全日病ニュース

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「地域医療の確保と成長戦略と、異なる視点が交錯した議論に陥っている」

【非営利ホールディングカンパニー】

「地域医療の確保と成長戦略と、異なる視点が交錯した議論に陥っている」

医療制度・税制委員会企画「医療法人の今後の運営について―非営利ホールディングカンパニーについて」

 座長を務める医療制度・税制委員会の中村康彦委員長は、テーマに「非営利ホールディングカンパニー」(以下「新型法人」)を取り上げた経緯を説明。「本当のところ、新型法人とは一体何なのかということを聞きたい」と述べ、講師に招いた厚生労働省の梶尾雅宏参事官(社会保障担当)を紹介した。
 梶尾参事官は、議論の出発点は「社会保障制度改革国民会議報告書」で、そこに「地域のネットワークづくりのためには競争より協調が必要」として、「医療法人等が容易に再編・統合ができるような見直し」が提起されたと説明。
 その中で、新型法人を提唱した権丈委員(慶大教授)は主に適切な医療・介護提供体制をつくっていく視点にもとづいていたが、もう1人の増田委員(元総務大臣)は、医療・福祉が一体となったまちづくりという地域再生の視点を打ち出していると指摘した。
 その後、成長戦略を議論する産業競争力会議でとり上げられ、制度の創設が日本再興戦略に書き込まれたために、「議論が若干分かりにくくなっている面がある」と解説した。
 こうした経緯もあり、厚労省は、地域を支える医療福祉経営という面から「まち・ひと・しごと創生」の中でも新型法人を取り上げていること、また、税制も含めて検討していることを認めた。
 新型法人に関する同参事官の説明は、概ね、厚労省の「医療法人の事業展開等に関する検討会」で示されている通りであったが、「合併に近いものもあれば、連携関係の緩やかなもの、あるいは行政主導による公立・公的病院など、様々なパターンが出てくるだろう」と、幅の広い設立が可能となる枠組みが構想されていることを明らかにした。
 シンポジストの星北斗氏(星総合病院理事長)は、①共同教育研修などの交流、②設備の共同利用など地域で連携を組む必要を認める一方、新型法人は「(子法人の)経営権が召し上げられてしまうと、我々は経営者ではなく単なる従業員になってしまう」と、率直な疑問を投げかけた。
 医療制度・税制委員会特別委員である長谷川友紀氏(東邦大学医学部教授)は、議論の背景に急性期医療における再編と垂直統合という課題があることを明らかにした上で、子法人の独自性を保証しつつ、親法人の意思決定等を制度的に共有する仕組みをいかに構築するかが新型法人の課題である、と指摘した。
 さらに、①地域医療の確保をいかに図るかということと経済成長戦略は別ものであること、②事業主体としての法人効率化と地域医療は別ものであることをあげ、それらが混同して提案されているために議論がちぐはぐになっているとして、制度導入の目的を明確にすることが重要という認識を示した。
 長谷川氏は、また、重要な論点として、①親法人と子法人の関係、②広域の事業展開を認めるかどうか、という点をあげた。