全日病ニュース

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後期高齢者支援金 総報酬割全面導入に加え、前期高齢者の加入率を勘案

後期高齢者支援金
総報酬割全面導入に加え、前期高齢者の加入率を勘案

【医療保険部会】
厚労省が提案。負担がより増す健保連は猛反発

 2025年に向けた医療保険制度改革として次期通常国会に提出する健保法等改正について二巡目の議論に入った10月6日の医療保険部会に、事務局(厚労省保険局総務課)は、(1)後期高齢者医療制度に対する被用者保険からの支援金について、全面総報酬割を導入するという従来からの案に加え、新たに前期高齢者の加入者数を按分する方法を加味する、(2)現金給付の条件を厳しくするという具体的な提案を行なった。
 部会の委員は(2)に関しては大筋で賛成したが、(1)については、支援金の負担額が大幅に増える健保連の委員が強く反発した。

 後期高齢者医療費は2014年度予算ベース15.6兆円で、患者負担(1.2兆円)を除く14.4兆円が保険給付されている。
 その財源は、国、都道府県、市町村による公費が6.8兆円、高齢者の保険料が1.1兆円、保険料軽減措置や高額医療費の支援等に投入される公費が0.5兆円、そして、残りの6.0兆円が後期高齢者支援金によってまかなわれている。
 後期高齢者支援金の負担内訳は、協会けんぽ2.0兆円、健保組合1.8兆円、共済組合0.6兆円、市町村国保等1.7兆円であるが、このうちの被用者保険者の分は、現在、3分の1を加入者の総報酬額、3分の2を加入者数(0~74歳)に応じて、保険者間で按分している。
 しかし、比較的報酬額が多い健保組合や共済組合に対して中小企業主体の協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入者割による負担を求め続けるのは無理があり、支援金を拠出するために、協会けんぽの平均保険料率は10.0%とほぼ限界に達している。
 このため、社会保障制度改革国民会議報告書を受けたプログラム法は後期高齢者支援金における総報酬割の全面実施を打ち出し、2015年通常国会への法案提出を明記した。
 今回の事務局提案は、この既定方針を、協会けんぽにより有利なものへに改めるもの。具体的には、総報酬割に加えて「前期高齢者の加入率による調整を加味した計算方法」の採用である。
 前期高齢者(65~74歳)の加入率は市町村国保が31.3%、協会けんぽが4.7%、健保組合が2.5%と、健保組合は収入が少なく給付が多い世代の割合が顕著に少ない。
 この、前期高齢者の偏在による給付費の保険者間負担不均衡に対しては、現在、前期高齢者の加入率(74歳までの総加入者に占める前期高齢者の割合)に応じて各保険者の負担を調整する仕組みが導入されている。
 一方、この世代が負担する後期高齢者支援金の負担割合は、3分の2には加入率調整が加えられ、3分の1は総報酬割という方法によって、被用者保険者間で按分されている。
 この「加入率調整(2/3)+総報酬割(1/3)」という計算方法を、前出後期高齢者支援金の被用者保険者間の按分に「加入率調整×総報酬割」というかたちで導入するというのが今回の提案だ。
 したがって、新たな案は、総報酬という負担能力に前期高齢者の加入率を加味するため、報酬が高くて加入率が低い健保組合や共済組合に、さらに負担を求めることになる。
 全面総報酬割を導入した場合に、健保組合の支援金負担額(15年度推計)は1兆9,300億円から2兆600億円へと1,300億円増加するが、加入率調整を加味すると2兆800億円へと1,500億円増加する。新たな案によって健保連の負担額は当初案よりもさらに200億円増えるわけだ。
 一方、加入率調整の加味によって、協会けんぽは現在の2兆800億円から1兆8,400億円へと、負担が2,400億円も減ることになる。その分、国は協会けんぽに対する補助金を減らすことができ、浮いた分を、全国知事会が運営を引き受ける前提条件としている国保の財政再建に投入できることになる。
 こうした事務局案に、白川委員(健保連)は「(協会けんぽに対する補助金の減額を拠出金の負担軽減に回すべきという)我々の提案が受け入れられていない。怒りを感じる」と猛反発した。
 健保連等の不満に対して、事務局は、①全面総報酬割の段階的な実施、②負担増となる被用者保険者の負担軽減措置を検討することを併せて提案した。