全日病ニュース

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病床機能報告 特定入院料と4機能の関係を一般化。病院機能の面からも分析

病床機能報告 特定入院料と4機能の関係を一般化。病院機能の面からも分析

【地域医療構想策定GL等検討会】
構想策定後の取り組みを都道府県に補足。次期医療計画の見直し課題も明示

 2月4日の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」に、事務局(厚労省医政局地域医療計画課)は「病床機能報告制度の改善」と「地域医療構想策定後の取り組み」に関する考え方を提示し、構成員の意見を聞いた。
 前者は、2014年10月の報告に機能選択と医療内容等との“不整合”がみられるとして事務局が示した報告方法の改善策をめぐる前回(11月26日)の議論で、構成員から示された様々な意見を踏まえた再提案である。
 再提案は、冒頭で、「構想区域ごとの必要病床数は、個々の医療機関内の病棟構成や病棟単位での患者割合等を正確に反映したものではないことから、必ずしも病床機能報告の病床数と数値として一致する性質のものではないことに留意する必要がある」とした。
 その上で、「病床機能報告はあるべき医療提供体制に向けた取り組みの進捗を評価するために不可欠であり、報告内容の更なる活用方法等について引き続き検討が必要」とし、改善策をあらためて提案している。
 その中で、病棟機能に着目した情報の分析・活用として、(1) 報告された機能と算定している特定入院料との間の「親和性が高い」ことから、この関係性を「一般的取り扱い」としていく、(2) 病棟票で報告される患者の入退院経路や「重症度、医療・看護必要度」の割合等の項目と4機能との関係について分析していく、(3)16 年度報告から付記される病棟コードから病棟単位の医療の把握が可能となることから、これを活用した具体的分析方法の検討を進めていく、ことを提案。
 続いて、病院機能に着目した情報の分析・活用として、(4) ICUやHCU等特定機能の有無を手術や救急受入数など病院の機能としてもっていると考えられる機能、(5) 高度急性期病棟の多寡など病院・病棟の規模や構成割合と病院機能との関係、をあげた。
 事務局は、(1) の「一般的取り扱い」は16年度の報告マニュアルに追記していく方針で、その考え方として「特定の機能を有する病棟における病床機能報告の取扱案」を示した。そこには「地域包括ケア病棟入院料は回復期または急性期」とあったが、構成員から「同入院料を算定する中には慢性期機能の病棟もある」との指摘が出たため、その取り扱いは再検討するとしている。
 後者の「地域医療構想策定後の取り組み」は、都道府県からの求めに応じて、地域医療構想策定GLに示した「構想策定後の取り組み」に関する補足説明をまとめたもので、「留意事項」として都道府県に伝達する体裁となっている。
 この「留意事項」について、事務局は「GLを見直すか、別の方法で都道府県に伝達するかはこれから考えたい」としている。
 「留意事項」に示された「現状と将来目指すべき姿の認識共有」や「地域医療構想を実現する上での課題の抽出」等について、「構想策定の過程においても、これらに準じた議論を進めることが重要となる」としているが、すでに都道府県の半数近くは15年度末までに策定が終わる見通しだ。
 この点に関して、事務局は、「策定後も見直しが必要になる」ため、「現時点で決して遅いとはいえない」との認識を表した。
 この日の検討会は事務局の考え方を大筋で認めたが、表現の修正を求める意見も出たため、事務局は再度修正案を提示、了承を得た上で都道府県に示していきたいとしている。

◆ 病床機能報告制度の改善に向けて(前回の意見を踏まえた対応案=要旨)

2.前回の検討会のご意見を踏まえた対応(案)
(1)前回の主なご意見(病床機能報告制度の改善に向けて案)・病床と病棟と病院の機能について整理してはどうか。
・手術や救急受入は病院としての機能を示すものではないか。
・ICUやハイケアユニットという病棟ごとの検討は意義があるのではないか。
・医療機能を評価する際に診療報酬に基づいたものもあってよいのではないか。
(2)ご意見を踏まえた対応(案)
②対応案
1)病棟の機能に着目した情報の活用に向けた検討
●特定入院料算定情報の活用に向けた検討
 2014年度の報告から病棟機能と特定入院料の間に一定の相関が認められたことから、これらの病棟が有する機能はそれぞれの病床機能と親和性が高いと考えられる。これを一般的な取り扱いとしてはどうか。
●病棟票の活用に向けた検討
 病棟票で報告される「入棟前や退棟先別の入院患者の状況、退院後に在宅医療を必要とする患者の状況、重症度、医療・看護必要度を満たす患者の割合、リハビリの状況」等と4機能の関係を分析をしてはどうか。
●病棟コードの活用に向けた検討
 16年度の報告からレセプトに病棟コードが付記され、病棟単位の医療の把握が可能となることから、これを活用した具体的分析方法の検討を進めてはどうか。
2)病院の機能に着目した情報の活用に向けた検討
 病棟単位の分析と併せ、病院の機能に着目し、次の項目について検討してはどうか。
●病院が有する機能に着目した分析(検討の視点の例)
・ICUやHCU等の特定の機能を有しているかどうか
・手術件数や救急車受入数等に一定以上の実績を有しているかどうか
●病院・病棟の規模や構成割合に着目した分析
 病院における当該病棟の規模や構成割合に着目した分析を行ってはどうか。

◆ 地域医療構想の実現に向けた取り組みについての留意事項案(要旨)

2.地域医療構想策定後の取り組みについて
(1)現状と課題 地域医療構想策定GLに構想策定後の取組の手順の概要を示しているが、都道府県からは、より具体的な方法や詳しい考え方を示してほしいとの意見が提示されている。
(2)調整会議での議論の進め方の例示 地域医療構想策定GLに示した策定後の取り組みについて、補足として、以下のような例を情報提供するので参考にされたい。構想策定の過程においても、これらに準じた議論を進めることが重要となる。
●「地域の医療提供体制の現状と将来目指すべき姿の認識共有」
 例えば、以下に挙げる医療提供体制の現状、病床区分ごとの将来の医療需要と必要病床数(病床の必要量)について、関係者で共通の認識を持つ。
①医療ニーズを推測する基礎データとなる将来の推計人口
②医療圏の現在の病床数・診療所の数及びその位置
③医療従事者数の配置状況
④地域に不足する医療機能の把握
⑤病院間の診療実績の比較(DPCや病床機能報告から病院毎の機能の評価や比較が可能)
⑥疾患ごとのアクセス時間
⑦在宅医療と介護サービスとの提供体制
●「構想を実現する上の課題の抽出」
 GLでは「現状を踏まえ、地域医療構想を実現していく上での課題について議論」することが求められている。例えば、次の課題例について議論することが必要と考えられる。
①診療科や主要な疾患に対する医療提供体制の確保
②地域で複数の医療機関が同様の機能を担い、近接している場合
③医療圏での救急搬送時間や疾患ごとの病院までのアクセス時間が長い場合
④医療従事者の確保
⑤地方自治体の取組体制や人材育成の必要性
 上記をはじめ、地域の実情は様々であり、特定の病棟・病床の機能を無理に特定の類型に当てはめるだけでは、地域の実情に合わなくなる。数字だけの議論にとどまらず、地域の課題を十分に議論し、地域にとって最も適した計画を策定することが望ましい。
●「具体的な病床の機能の分化及び連携の在り方について議論」
 「認識の共有」と「課題の抽出」の議論を踏まえ、さらに、次のような手順で、丁寧に将来の在り方について議論することが必要である。
①各医療機関の病床機能の地域での位置付けの把握
②各医療機関の役割分担の明確化
③在宅医療や介護サービスの利用度や整備状況の共有
●「地域医療介護総合確保基金を活用した具体的な事業の議論」(略)
3.次期医療計画の改定に係わる対応において整理が必要と考えられる事項
第7次医療計画は、地域医療構想と整合性を図ったものとすることが求められる。第7次医療計画に当たっては、例えば、次の事項について整理することが必要と考えている。
●2次医療圏(5疾病5事業毎の医療圏の設定、介護における圏域と二次医療圏の考え方)
●地域包括ケアシステム構築に向けた介護との連携
●5疾病5事業(対象となる疾病や事業、各疾病・事業ごとの指標)
●基準病床数について(算定式を含む基準病床数の考え方等)

 

全日病ニュース2016年2月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 厚労省「報告で機能選択を変えた医療機関に都道府県への報告を求める ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20151201/news06.html

    2015年12月1日 ... そこには、15年度の報告には「同じ機能を選択している病棟もそこで行われている医療
    の内容等は必ずしも同等でなかっ ... まずは、病床機能報告がもつ「地域医療機能を
    把握し、地域医療構想策定や見直しのための基礎資料」という役割 ...

  • [2] 病棟機能報告の内容決まる。今後の焦点はGLの内容|第829回/2014 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20140801/news01.html

    2014年8月1日 ... 7月24日の「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」は、この10
    月1日に施行される病棟単位で機能等の情報を ... 報告制度の議論を終え、局面は、9
    月に設置される検討会で始まる地域医療構想のガイドラインをめぐる議論へと移る。 ... (
    2)に関しては、①都道府県は報告内容を分かりやすく加工して公表できる、②公表の
    具体的方法は地域医療構想のガイドラインを策定する中で検討するという ...

  • [3] 回復期や高度急性期の定義に注釈。例示も多目に|第854回/2015年 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150901/news04.html

    2015年9月1日 ... 例示も多目に|第854回/2015年9月1日号 HTML版。21世紀の医療を考える「全日
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