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厚労省「報告で機能選択を変えた医療機関に都道府県への報告を求める」

厚労省「報告で機能選択を変えた医療機関に都道府県への報告を求める」

【地域医療構想策定GL等に関する検討会】
実病床機能報告と地域医療構想に疑問と批判が相次ぐ。事務局は再度提案へ

 「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」が11月26日に3ヵ月ぶりに開かれ、事務局(厚労省医政局地域医療計画課)から、各都道府県における地域医療構想策定の進捗状況等について報告を受けた。
 そのうちの「進捗状況」(回答は10月20日現在)によると、構想の策定予定時期は、①2015年度中が20府県(43%)、②16年度半ばまでが21都道府県(45%)、③16年度中が4県(8%)、④未定が2県(4%)と、都道府県の約9割が政府の経済財政諮問会議等が求める「16年度央に策定を終える」予定であることが判明した。
 構想策定を担う会議(医療審議会、WG、構想区域レベルの会議は除く)は全都道府県で設置を終え、かつ1回以上開催している。最多は東京都ですでに6回開催している。
 構想区域ごとの会議については、すべての構想区域で開催した県が32(68%)に達しており、一部区域で開催した県は6(13%)、未実施の県は9(19%)と、8割の県で開催が試みられている。
 構想区域ごと会議の未実施は、青森県(圏域ごとのヒアリングを先行)、福島県(11月下旬以降開催予定)、埼玉県(策定後に開催予定)、新潟県、富山県(11月から開催予定)、石川県、山梨県、長野県、香川県(11月から開催予定)、福岡県(11月下旬から開催予定)。
 構想区域の設定に関しては、37都道府県が「2次医療圏と同じ」(予定を含む)と回答。その他の県は、群馬、千葉、新潟、長野、静岡、香川の各県が「検討中」、福島県は「一部統合」、神奈川県は「合併を検討中」、愛知県は「一部合併」、三重県は「変更予定」と回答している。
 事務局は、また、15年度病床機能報告の「報告様式1(病床が担う医療機能と構造設備・人員配置等)」の報告状況(11月8日24時現在)を明らかにした。
 提出を終えた全国の医療機関は1 万1,196(提出率76.2%)。このうち1,838(16.4%)の医療機関に単純ミスがみられたため、再提出を求められている。
 事務局は「病床機能報告の改善に向けて」と題した資料を提示し、同検討会として検討すべき課題を明らかにした。
 そこには、15年度の報告には「同じ機能を選択している病棟もそこで行われている医療の内容等は必ずしも同等でなかったり、同程度の内容と思われる医療機関でも、異なる機能を選択している報告例もあった」と指摘。
 まずは、病床機能報告がもつ「地域の医療機能を把握し、地域医療構想の策定や見直しのための基礎資料」という役割に資することを目的に分析を行ない、「より適切な病床機能報告が可能となるような見直し」に向けた検討を行なってはどうかと、続いて、病床機能報告がもつ「地域医療構想策定後、地域における医療機能の分化・連携のための取組状況を把握する」というもう1つの役割に向けて「活用可能となるよう、報告項目の追加・見直しを視野に入れた」検討を行なってはどうか、と提起した。
 このための分析作業として、15年度と16年度の報告は、構造設備・人員配置等は病棟単位だが、医療内容に関する項目は病院単位のため、「まずは医療機関全体として実施している医療の内容に着目した分析を行なう」ことを提案。
 そして、その「分析の例」として、「急性期を選択している病棟における『幅広い手術の実施』の状況」「回復期を選択している病棟における『疾患に応じたリハビテーション・早期からのリハビリテーション』の状況」などをあげた。
 その上で、16年度の報告以降は病棟コードを活用した分析が可能となることから、「その点も含めた分析方法について今後検討が必要」とした。併せて。病棟コードの使い方とシステム改修の概要を次回の検討会に報告することを明らかにした。
 さらに、「年1回の病床機能報告の際に各医療機関における自主的な取組状況等の報告を求め、それらの報告も踏まえ、各都道府県は地域医療構想の達成に向けた取組を進める必要がある」と述べ、「その取組状況を把握する具体的事項等について検討する必要がある」と、さらなる検討課題を明示した。
 前段の検討課題について、事務局は、「各医療機関における自主的な取組状況等の報告(イメージ)」として以下をあげ、「定期的な報告を求めることにしてはどうか」と提案した。
①対象となる医療機関
 前年度報告以降、病床機能を変更もしくは次回報告までに変更を予定している医療機関
②報告を求める項目の例
 基金の活用状況、病床機能の転換の取組内容(どのような施策で何床転換したか)等
 また、都道府県に対しても、①調整会議における検討状況(開催回数等)、②当該期間で病床機能を変更した医療機関数および病床数、③病床機能の変更につながる地域における取組の好事例、④地域医療介護総合確保基金の活用状況等を国に報告するよう求める、とした。
 この日の議論は、まず、事務局が提示した資料内容の確認から始まったが、やがて、病床機能報告制度と地域医療構想をめぐる認識の再確認を求める質疑応答・意見表明へと転じた。
 その論点は、①内閣官房の調査会が公表した「必要病床数」の解釈(単なる推計値に過ぎず、具体的には各構想区域の協議から積み上げられるべきものではないか等)、②医療機能区分の解釈(急性期の定義とは、回復期の定義とは等)、③病棟と医療機能の関係性(地域包括ケア病棟が慢性期を選択してはいけないか等)、④病棟と病院の関係性(病棟機能以外に病院には外来、在宅、予防といった複合機能があり、地域医療にとっては病院機能こそ重要ではないか等)、⑤構想の目的(不足している機能を充足させることが目的であり、過剰な機能の削減が目的ではない等)、⑥各構想区域の協議に対する都道府県の位置づけ(必要病床数の実現を金科玉条とする県庁の指導に対する懸念等)など、多岐にわたり、構成員の間に病床機能報告と地域医療構想の目的や進め方に多大な疑問と不満があることをうかがわせた。
 構成員の質問に答える中で、事務局は「病床機能報告で前年度に選択した機能を変更することは問題ない」との認識を示した。ただし、現実に、事務局は「都道府県における地域医療構想策定後の取組」の中で、当該医療機関には都道府県への報告を求めるなど、医療機関選択に行政として介入すると受け取れかねない姿勢をみせている。
 この日の議論を受け、事務局は提案事項を修正・整理したものを次回会合に提出、再度議論を求める方針だ。

 

全日病ニュース2015年12月1日号 HTML版

 

 

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