全日病ニュース

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高額薬剤の薬効 保険適用の際に制限も検討

高額薬剤の薬効 保険適用の際に制限も検討

【中医協】
薬価収載の取扱い今後議論へ

 中医協は4月13日の総会(田辺国昭会長)で、7成分12品目の新薬の薬価収載を承認したが、高額薬剤に対する薬価算定の方法や保険適用の範囲を改めて議論すべきとの意見が委員から相次いだ。このため、薬事承認で認めた薬効について保険適用の際に一部制限することを含め、厚労省が課題を整理することになった。
 議論になった新薬は、高脂血症用剤のレパーサ皮下注(アマテラス・アムジェン・バイオファーマ)。成分はエボロクマブ(遺伝子組換え)。算定薬価は2万2,948円で、ピーク時販売金額は492億円、予測投与患者数は6.9万人。効能・効果は「家族性コレステロール血症」だが、一定の条件をつけた上で、「高コレステロール血症」まで適応が広がった。
 これに対し診療側の委員が、一定の条件のチェックが難しく、投与患者数が予測よりも増加することを懸念。患者数が増えれば売上額が増加し、医療保険財政に与える影響が大きい。売上額が予想を超えて増加した場合に、迅速に薬価を引き下げる仕組みが必要との意見が出た。
 他の診療側委員からも、財務省の財政制度等審議会が高額薬剤の議論を行い、「抗がん剤のオプジーボの費用が年間1兆7,500万円に及ぶ」とされたことを引き合いに、中医協としての議論が必要との意見が出た。現状でオプジーボの費用はそこまでではないが、今後、効能・効果が追加されていけば、投与患者が増える。薬事承認された効能・効果を医療保険ですべて認めるのではなく、一部制限する必要があると問題提起した。
 また、4月から始まった患者申出療養では、適用外の薬剤を保険外併用療養費で受けられる。混合診療が実質的に拡大する可能性があり、高額薬剤について、◇抗がん剤のように延命効果を高めるもの◇生活習慣病薬のように継続的な服薬が必要なもの◇C型肝炎治療薬のように治癒が見込めるもの──に分けて議論すべきとの声もあった。
●DPC制度見直しに説明求める
 厚労省は同日の中医協総会に、2016年度診療報酬改定のDPC制度の対応結果を報告した。大学病院本院である基礎係数のⅠ群(係数:1.1354)は東北医科薬科大学に医学部が新設されたことで、81病院になった。Ⅰ群に準じるⅡ群(同1.0646)は新たな実績要件により99病院から140病院に増えた。それ以外のⅢ群(同1.0296)は1,446病院で、合計1,667病院となっている。
 全日病副会長の猪口雄二委員はDPC制度の改定について、「より複雑になり、DPC制度がブラックボックス化している」と述べた上で、3点を質問。①改定率がDPC制度見直しの各項目にどう反映しているか②暫定調整係数の置き換えがさらに進んだが、基礎係数や機能評価係数Ⅱにどう反映しているか③重症度係数の考え方─の説明を求めた。
 厚労省は、①に関し「包括範囲では例えば、基礎的な処置や検査、医薬品などについて、改定の影響を反映させた」、②③に関し「(暫定調整係数を機能評価係数Ⅱなどに置き換える中で)暫定調整係数が表現するものは何かを考えた場合に、診断群分類だけでは表現しきれない患者の重症度を評価した」と回答。その上で、DPC評価分科会で詳細に説明するとした。
●消費税率8%への引き上げに伴う改定項目に対する平成28年度診療報酬改定(例)

●薬価調査等の実施は6月頃に決定
 中医協総会は同日、消費税を10%に引き上げる場合の医療機関の控除対象外消費税への対応を議論。「医療機関等における消費税負担に関する分科会」の報告を受けた上で、今後の進め方を概ね了承した。薬価調査等は、実施するかどうかを6月頃までに総会が決定。医療経済実態調査は実施しない。「医療機関等の設備投資に関する調査」は、分科会で引き続き議論する。
 分科会では、薬価調査と特定保険医療材料価格調査の実施に賛否両論があった。このため総会では、業界などからのヒアリングを実施した上で、6月頃に結論を出す方針だ。政府が消費税引き上げの再延期を検討していることをふまえ、状況を見極める。
●過去の上乗せ分の扱いを明確に
 なお、控除対象外消費税では、過去に診療報酬に上乗せした点数がその後の改定で扱いが不明瞭になっていることが問題になっている。下表は、3月30日の消費税分科会で提出された資料。
 2014年4月に消費税が8%に上がった際に、診療報酬改定で基本診療料を中心に点数を上乗せした。しかし2016年度改定を経て、その扱いが早くも見えづらくなっている。
 「2」の歯科訪問診療料は2014年度改定で3点上乗せして143点になり、2016年度改定では120点となった。すると、120点のうち、3点分は上乗せ分でそれを除いた117点が本来の点数なのか、本来123点に上げるべき点数が120点にとどまっているのか、疑問が生じる。「1」「3」は、さらに複雑だ。
 全日病は、上乗せした項目が2016年度改定でどう変化したかをすべて明らかにするよう厚労省に求めており、近く中医協に提出される予定だ。
●選定療養を整理・明確化し通知改正
 中医協総会は同日、選定療養に関する告示・通知改正案を了承した。選定療養の類型を整理するとともに、内容の明確化を行った。「ノロウイルスの検査等」を選定療養に加えるとの1月29日の提案は見送った。
 例えば、「特別の療養環境」(差額ベッド)では、泊まらなくても透析患者などに個室を長時間提供する場合に、特別の料金を徴収できることを明確化した。回数制限を超える腫瘍マーカーは特異度が高いものを追加した。