全日病ニュース

全日病ニュース

厚労省が医療介護連携推進に保健所の関与を提案

厚労省が医療介護連携推進に保健所の関与を提案

【介護保険部会】
入退院時の広域連携体制や連携推進の人材など議論

 社会保障審議会介護保険部会(遠藤久夫部会長)は3月25日、2018年度から始まる介護保険事業計画をめぐって議論した。厚労省は、「医療計画と介護保険事業計画において医療介護の連携を強化するために必要な視点」について問題提起し、議論を求めた。
 同部会は2025年に向けた地域包括ケア体制の構築と持続可能な介護保険制度を目指し、2017年に必要な制度改正を行うための議論を2月に開始し、年内のとりまとめを見込んでいる。
 医療介護の連携推進は地域包括ケア体制構築の中心的課題となっている。医療介護総合確保方針では、2018年度から始まる地域医療計画と介護保険事業(支援)計画は同方針をふまえ、整合性を確保することを求めている上に、新規計画に医療介護の連携推進の施策をどう盛り込むかが課題となっている。
 説明に当たった老健局の佐原康之老人保健課長は、医療介護連携推進の課題として、①在宅医療・介護連携推進事業の実施主体がノウハウの乏しい市町村に移行したので、円滑に進めるために国と都道府県(保健所)の役割を明確にする、②市町村単位を超える入退院時の医療介護連携を進める上での都道府県(保健所)と医療・介護各機関の役割を明確にする、③そうした連携を支援していくために医療計画と整合性を確保した介護保険事業(支援)計画を策定する、④在宅医療・介護連携推進事業に関わる人材育成と調査研究を確保する― の4点をあげ、これらを論点として議論を進めるよう提案した。
 このうち①と②では、地域保健活動を担っているものの、1994年の地域保健法施行後統廃合や人員減少が進んでいる保健所を、ノウハウの提供や関係機関・団体との連携仲介など市町村に対する支援機関にしていくことを提案している。
 また、②の入退院時における医療介護連携については、対象患者が広域にわたることから、複数市町村にまたがる広域的な連携体制を構築する必要性を指摘している。
入退院時に病院職員と介護が連携を
 入退院時の医療介護連携に関して、厚労省は、2014年介護報酬改定検証調査の結果から、①居宅介護支援事業所の利用者の約4割が医療機関から介護支援専門員に連絡がないまま退院していること、②入院時に介護支援専門員から医療機関に在宅生活状況等の情報提供が行われていないケースが一定程度みられることを指摘し、病院等の職員と介護支援専門員の連携を促進する取り組みが欠かせないと指摘した。
 地域支援事業の柱の一つとして、市区町村が2015年度から取り組んでいる在宅医療・介護連携推進事業に保健所を関与させるという厚労省の考え方に対し、医師会の委員が「保健所にそれだけの機能があるか」と疑問視した。
 市町村は、在宅医療・介護連携推進事業の実施を地区医師会等に委託できることをふまえ、「医療と介護の関係者からなる協議の場を設置して相互に両計画の整合性を図っていくべきではないか。それには郡市医師会が中心になるべきだ」と主張した。
 この意見に病院団体の委員が同調し、「医療と介護の連携には後方病床が欠かせない。そのためには地域に密着した病院を医療介護連携に参加させ、医師会主導で後方病床の確保を進めるべきである」とする見解を述べた。
 また、入退院の調整に関与すべきとされた介護支援専門員に触れ、「医療に対するケアマネの知識不足を補うために、市町村の広域な連携体制を組んで、医師会主導で研修を行ってはどうか」と提唱した。
 これらの意見に対して、他の委員からは、「国と都道府県(保健所)の役割を介護保険法に明記する」など、法的な裏づけをもって市町村に対する支援を行っていくべきとの意見が出た。
 入退院時の連携に関して、佐原課長は「入退院の調整はケアマネが担うのが原則」との認識を示す一方、医療介護連携担当の吉田学審議官は、今回改定で新設された退院支援加算1を取り上げて「連携評価の要件に地域との協議を盛り込んで増点した」と指摘した。
 連携のキーパーソンとしてMSWなどの病院に常駐するスタッフをあげる声があったほか、「ケアマネ以外の介護職員も場面に応じて関与できるようにすべき」との意見も出るなど、介護支援専門員だけでなく幅広い職種の活用を求める声が少なくなかった。

 

全日病ニュース2016年5月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 在宅医療・介護連携推進事業の実施状況を報告|第868回/2016年4 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160401/news04.html

    2016年4月1日 ... 厚労省老健局は3月8日、市町村で2015年度から実施している「在宅医療介護連携
    推進事業」の状況調査結果 ... 都道府県医療介護連携調整実証事業」は、モデル2次
    医療圏域を設定し、都道府県・保健所の支援のもと、圏域内の病院と、 ...

  • [2] 介 護 保 険 最 新 情 報 Vol.447 平成27年3月31日 厚生労働省老健局 ...

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2015/150402_11.pdf

    2015年3月31日 ... 在宅医療介護連携推進事業の手引き. Ver.1. 厚生労働省. 老健局老人保健課. 平成
    27年3月. 別紙. 全日本病院協会 医療行政情報 ... 村支援ツールの作成に関する調査
    研究事業」(平成26年度厚生労働省老人保健健康増進 ...... 不可欠であるが、これまで
    医療提供体制の確保等に係る施策は、保健所の参画等も含め、.

  • [3] 法的義務となる「在宅医療・介護連携の推進」へ、初の全国担当者会議 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20140515/news07.html

    2014年5月15日 ... 介護保険法改正の2015年度施行によって「在宅医療介護連携推進」が法定事項
    となり、その施策を15年度からの第6期介護保険事業(支援)計画に組み込む必要が
    あることから、都道府県、2次圏の連携調整支援事務局(保健所等)、市町村、地域包括
    支援 ... そのために、厚労省は、在宅医療連携拠点事業と在宅医療推進事業を通して都
    道府県に在宅医療介護連携の担当課(室)を設置させる一方、国と都 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。