全日病ニュース

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Ⅲ群病院における「基礎係数と係数Ⅱの重み付けの見直し」は先送り

Ⅲ群病院における「基礎係数と係数Ⅱの重み付けの見直し」は先送り

【DPC評価分科会】
「各係数の重み付けの見直し」も。DPC(基礎係数・医療機関群)見直し案で合意

 診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会は、10月14日の会合で、2016年度改定におけるDPC制度の見直しに関して、医療機関群と基礎係数に関する議論を大筋でまとめた。
 さらに、同日と10月26日の会合で機能評価係数Ⅱに関する議論も大筋で終え、16年度改定における見直しの方向性で概ね合意に達した。細部の詰めと残る検討課題の議論を11月半ばまでに終えて診療報酬問題基本小委員会に報告、以後の議論を中医協総会に委ねる。
 16年度DPC制度見直し課題のうち、医療機関群に関しては、10月14日の会合で、Ⅱ群病院の要件(高度な医療技術)に内科系の診療実績を加えることで一致。
 機能評価係数Ⅱに関しても、同日の議論で、
①分院よりも機能の低い大学病院本院あるいは精神病床を備えていない本院とⅡ群病院は保険診療指数で減算する
②「重症患者への対応機能」を評価するために「包括範囲出来高実績点数と診断群分類点数表との比を表現する係数」の試行導入を検討する
③保険診療係数と救急医療係数を除く各係数における各医療機関の係数の分散度合が均等になるように係数を調整する
④カバー率係数については「専門病院・専門診療機能」に配慮し、その評価方法に関して今後検討を行なう
⑤後発医薬品使用割合の評価上限を16年度改定で暫定的に70%とするなどの点で合意に達した。
 ①の「精神病床を備えていない」ことによる減算に関して、10月26日には、精神病床の有無だけでなく、「保護入院」受け入れの実績も合わせて指標化する方針を確認している。
 検討されてきた「Ⅱ群病院に対する『地域における機能』の要件化」「Ⅲ群病院における基礎係数と係数Ⅱの重み付けの見直し」「各係数への報酬配分(重み付け)の見直し」については、10月14日の議論でいずれも「引き続き検討する」とされ、先送りされた。
 他方、「5疾病・5事業」等医療計画に明記される取り組みの評価は「都道府県から得たアンケートの結果を踏まえつつ検討を進めていく」ことを確認。
 さらに、Ⅲ群における「専門病院・専門診療機能」の評価に関してはカバー率係数で対応することで部会の意見が一致。事務局は10月26日の部会に「カバー率指数の最小値(下限値)として30%tile値を採用する」ことを提案、了承された。
 このほか、「請求の仕組みを簡素化する」という大義名分から、入院日Ⅲの規定を変えて診断群分類ごとの包括期間(入院期間Ⅲ)を現行より長くする、DPCの請求方法を一入院で統一し、月をまたいで請求方法(診断群分類)が変更された場合はレセプト返戻による再請求を行なうといった重要な変更を行なう方針が、10月14日の部会で了承された。
 また、10月26日の議論では、2次医療圏ごとの救急応需率を係数Ⅱで評価する方向が確認されたほか、様式1(簡易診療録情報)の基本的な考え方に「病院の機能を医療機関別係数で評価するための調査項目」という視点を追加することが了承されている。

2016年度改定におけるDPC制度見直しの方向(DPC評価分科会10月14日の議論結果から)

1. 医療機関群(Ⅱ群の選定要件)について
●地域における機能の評価と絶対値要件について
 基本小委において、Ⅱ群病院について、「地域における機能を要件」とした「絶対値による基準値」の設定を検討すべしとされたが、現時点で、機能分化を評価するためのデータおよび基準値がないために絶対値が設定できない。したがって、引き続き検討課題とする。
●高度な医療技術の評価について
 「外保連試案」を評価対象としているⅡ群の実績要件「高度な医療技術」に内科系の診療機能に関する要件がないため、内保連の「特定内科診療」(14年度版で25疾患)にもとづく診療実績(3項目)を加えてはどうか。
2. 基礎係数について
 基本小委において、Ⅲ群病院について、基礎係数と機能評価係数Ⅱの重み付けを客観的に納得できる方法で見直すことを検討する方針が打ち出された。
 そこで、16年度にⅢ群の基礎係数を現行の1.0276より下げるというシミュレーションを行なったところ、激変緩和措置によるマイナス緩和の対象病院が増えるという結果となった。加えて、医療機関群をまたいで設定されている係数(効率性係数、後発医薬品係数、及び救急医療係数)をⅢ群のみへ分配することが難しいため、Ⅲ群の基礎係数の財源を機能評価係数Ⅱへ置き換えることが行なうことは困難である。
 したがって、基礎係数の財源配分の見直しは16年度改定では実施せず、医療機関群の更なる精緻化などでの対応を引き続き検討することにしてはどうか。
3. 機能評価係数Ⅱの見直しについて
(1)Ⅰ群およびⅡ群にかかわる見直し
 基本小委において、他の大学病院本院と比較して機能の低い医療機関への評価は係数Ⅱで対応するとされた。そこで、①Ⅱ群の実績要件4項目のうち、一定項目以上が大学病院本院よりも機能が高い分院(DPC対象病院)を持つ本院、②Ⅱ群の選定要件決定の際に外れ値に該当した大学病院本院、③精神病床を備えていない本院とⅡ群病院は、それぞれ保険診療指数で減算してはどうか。
(2)病院の実績報告について
 「病院指標の作成と公開に向けたインセンティブのあり方」等について引き続き検討し、17年度より係数Ⅱの保険診療指数の中で「実績報告」を評価することを検討してはどうか。
(3)「点数表で表現しきれない重症度の差」について
 調整係数が担ってきた「診断群分類点数表で表現しきれない重症度の差」を新たな係数で担うべきとの指摘があったが、「重症患者への対応機能」の観点から、包括範囲出来高実績点数と診断群分類点数表との比を表現する係数の試行導入を検討してはどうか。
(4)地域における医療機関の取り組みの評価について
 地域における役割分担と連携など、地域ごとの医療への取り組みの評価に関しては引き続き検討する。
(5)地域医療指数について
 地域医療指数のうち、医療計画にもとづく取り組みの評価のあり方については、47都道府県から得たアンケート調査の結果を踏まえつつ、検討を行なってはどうか。
(6)後発医薬品係数について
 「骨太方針2015」に従い、後発医薬品使用割合の評価上限を16年度改定では70%とし、その後、目標値が見直された場合に、適宜評価上限の検討を行なうことにしてはどうか。
(7)各係数への報酬配分(重み付け)について
 「各係数の評価に関する重みが異なるために、各係数で医療機関の努力が適切に反映されていない」との指摘があったが、それぞれ独立した概念からなる7 項目間で評価の軽重を設定することが難しいことから、報酬額(財源)は等分とする現行の考えを継続してはどうか。ただし、医療機関の努力が反映されるために、保険診療係数と救急医療係数を除く各係数における各医療機関の係数の「分散」が均等になるように係数を調整してはどうか。なお、カバー率係数に関しては「専門病院・専門診療機能」に配慮し、評価方法に関して今後検討を行なうことにしてはどうか。
4. 持参薬のルールについて
 入院の契機となる傷病の治療に係る薬剤の持参は引き続き原則禁止とするが、特別な理由として、「臨時採用薬が使用可能となるまでの入院初期(2日程度)の持参薬使用」や「退院後不要となる薬剤の使用」等は了解可能とするが、「病院側の方針」や「医師の方針」などを特別な理由とすることは認めないことにしてはどうか。加えて、持参薬を使用した場合には使用量も含めたデータ入力を求めることにしてはどうか。
5. 請求の仕組みについて
(1)入院期間Ⅲの日数と点数に関して以下の通り改めてはどうか。
①包括算定期間(入院期間Ⅲ)が終わる入院日Ⅲ(平均在院日数+2SD)を、現行より大きく、現行に最も近い30の整数倍とする。
②入院期間Ⅲの点数は、基本的には現行どおり「入院期間Ⅱの点数から15%(点数設定方式Cは10%)引いたもの」とするが、入院日Ⅲが延長することに伴い、「現行の入院期間Ⅲの点数設定」と「平均在院日数を超えた期間の1日あたり医療資源投入量の平均値」を比較し、「現行の入院期間Ⅲの点数設定」の方が高い場合には「平均在院日数を超えた期間の1日あたり医療資源投入量の平均値」を採用する(図を参照)。
(2)DPCにおける請求方法は一入院で統一してはどうか(特定入院期間を超えて出来高請求となった場合を除く)。月をまたいで請求方法が変更になった場合は、医療機関の取り下げ依頼に基づくレセプト返戻による再請求を行なうことにしてはどうか。
6. 退院患者調査における「退院時転帰」「再入院種別」の定義の見直し
●転帰に関する新定義(案)
 「現行の治癒と軽快を合わせて『治癒・軽快』と定義する」考えが多いが、一方で、「現行の治癒に「経過観察のみの外来通院」を含める」とする案を是とする意見もあった。
●「再入院調査」について
 前回退院日より6週間以内の再入院である場合に、「再入院種別(計画的再入院、予期された再入院、予期せぬ再入院)および「理由の種別」を入力する。計画的再入院とは「前回退院時に当該入院日が決定していた場合」を、計画外の再入院とは「前回退院時に当該入院日が決定していなかった場合」をいう。「再転棟調査」も同様の方向性で見直す。