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ホーム全日病ニュース(2019年)第946回/2019年8月15日号次期診療報酬改定に向けたこれまでの意見を整理...

次期診療報酬改定に向けたこれまでの意見を整理

次期診療報酬改定に向けたこれまでの意見を整理

【中医協総会】論点の設定で改定の方向性を示唆

 中医協総会(田辺国昭会長)は7月24日、2020年度診療報酬改定に向けた第1ラウンドの議論をまとめた。年代別・世代別の課題や昨今の医療問題に関連する幅広いテーマで、4月から議論を行ってきた。厚生労働省は、診療報酬の個別項目に直接結びつく論点は設定しなかったが、改定の方向性が示唆されている。9月以降に第2ラウンドが始まり、本格的な改定論議が行われる。
 以下でテーマごとに論点と主な意見を整理した(病院関連を抜粋)。

年代別・世代別の課題(乳幼児期
~学童期・思春期、周産期、青年期
~中年期、高齢期、人生の最終段階)

 年代別の課題の議論では、「発達障害児・者や慢性的な疾患を抱える子どもなど、学童期以降も継続的にケアが必要な患者への対応が必要ではないか」、「働く世代は、生活習慣病への対策も重要ではあるが、女性に多く見られる疾患など、生活習慣病以外への対応や、働きながら治療ができるようにすることも重要であり、さらなる取組が必要ではないか」、「高齢者への対応は、市町村の取組、保険者の取組、かかりつけ医の役割等を整理しながら議論を進めることが必要ではないか」といった意見があった。これらの意見については、以下の各テーマの議論に反映し、検討を進めた。

昨今の医療と関連性の
高いテーマについての課題

◆患者・国民に身近な医療のあり方
(論点)

・医療機関間の適切な役割分担を図るため、患者・国民が求める役割等を踏まえた、かかりつけ医機能のあり方。
・医療機関の機能の分担および業務の連携のさらなる推進のため、紹介状なしの大病院受診時の定額負担のあり方。
(主な意見)
○選定療養の徴収が可能の200床から399床の地域医療支援病院について、すでに90%強が選定療養の徴収を行っていることや、地域医療支援病院の役割を鑑みれば、地域における医療アクセスを阻害しないよう留意が必要であるが、定額負担を責務とすることを検討する必要があるのではないか。
○患者に特別な事情がない限り、まずはかかりつけ医に行くという意識を持ってもらうため、定額負担の対象病院をさらに拡大することを検討すべき。
◆かかりつけ医機能等のあり方
(論点)

・かかりつけ医機能の評価について、これまでの診療報酬改定における対応を踏まえ、専門医との連携や他職種との連携等を含め、どう考えるか。
(主な意見)
○患者の受療行動を診療報酬上の対応により変えていくことが重要で、患者をかかりつけ医へと誘導するための評価のあり方を検討すべき。
○かかりつけ医機能を評価する機能強化加算については、算定状況等のデータを示しながら、有効に機能しているかどうかなども含めて検討すべき。
◆働き方改革と医療のあり方
【医療機関内での取組】
(論点)

・医療機関の、院内での労務管理や労働環境の改善のマネジメントシステムのあり方についてどう考えるか。
・これまで診療報酬で対応している勤務環境改善に資する取組や、算定要件として求めている業務内容について、働き方改革の方向性や医療の質を確保する観点等を踏まえ、どう考えるか。
(主な意見)
○働き方改革により医療従事者の勤務体系が変わり、人件費等の増加が見込まれるため、入院基本料のあり方を検討する必要があるのではないか。
○入院基本料の議論を行う前に、非効率な医療がないか検証すべき。
○医師の働き方改革に伴って追加的に生じるコストを患者が負担することについては非常に違和感を覚える。
○書類作成、研修の受講、会議への参加等の診療以外の業務負担や事務作業について、ICT等も活用しながら、さらなる効率化と合理化について検討する必要があるのではないか。
○医師事務作業補助体制加算について、中小規模の病院が施設基準を満たしにくいという状況を検討すべき。
○地方においては、民間の中小病院が医療提供体制を支えており、実情に即した形の評価の視点で検討すべき。
○専従の医師、看護師等の配置要件は、医療提供の質の確保に配慮しつつ、より弾力的な運用が可能となるような見直しについて検討する必要がある。
【地域全体での取組(救急・小児科・産科領域における取組)】
(論点)

・これまで救急医療や小児・周産期領域等で評価している、診療所で行う救急患者への診療や、病院での手厚い体制に対する評価について、働き方改革の方向性や、質の高い医療を確保する観点等を踏まえながら、どう考えるか。
(主な意見)
○十分な人員を配置できないものの救急医療を提供する体制を確保している医療機関への評価を検討すべき。
○働き方改革を実現していく過程で、地域の医療提供体制の効率化も進めなければ、地域医療が崩壊しかねない。
◆科学的な根拠に基づく医療技術の評価のあり方
【新たな技術を保険適用する際の評価】
(論点)

・既存の技術と同等程度の有効性および安全性があるとされた医療技術は、2018年度改定の考え方と同様に、今後も診療報酬上は同等の評価として保険適用を行うことをどう考えるか。
(主な意見)
○2018年度改定の方針にも沿ったものであり、方向性は妥当と考える。一方で、保険適用後に有効性等の新たなエビデンスが確認できれば、再評価をしていくことも重要ではないか。
【既に保険収載している技術の評価】
(論点)

・既に保険収載されている医療技術については、診療報酬改定時にその時点で得られているエビデンスを基に、診療報酬点数や要件(適用範囲、施設要件等)を再評価することとなる。
・医療の質の向上および診療報酬点数表の簡素化等の観点から、新規技術の開発や新たな知見の集積等に伴い、評価を見直すことについてどう考えるか。
(主な意見)
○費用対効果評価制度における公的分析班の枠組みの活用など、現状の限られた人材の中で、効率的に実効性を上げる体制整備が必要ではないか。
○新たな知見の収集に伴い、臨床上の位置付けが変化した技術の評価を見直すというのは当然である。
○臨床で実施されていない医療技術や検査を保険適用外とする方向で検討することは妥当ではないか。
【良質なエビデンスを創出するための環境整備】
(論点)

・先進的な医療技術であって、保険収載時にエビデンスが必ずしも十分でないとされるものは、保険収載後にデータやエビデンスを集積し、その有効性や安全性を確認するため、レジストリへの登録を算定要件とする等の対応を行うことをどのように考えるか。
(主な意見)
○保険収載後の実臨床で得られたデータを活用してエビデンスを構築するといった取組は非常に重要である。
○先進的な医療技術については、レジストリを要件とするなどの対応はふさわしいものではないか。
◆医療におけるICTの利活用
【遠隔医療】
(論点)

・オンライン診療は対面診療と補完的に組み合わせ、医療の質の向上に資するものの普及状況の検証結果等を踏まえ、診療報酬上の対応を検討してはどうか。検討では、オンライン診療の特性に鑑み、離島・へき地等の医療資源の少ない地域における利活用と、それ以外を分けて、整理を行ってはどうか。
(主な意見)
○患者が気兼ねなく対面診療を受けられる環境づくりが大事。医療にアクセスできない場合に、オンライン診療が活用されるのであって、利便性のみに着目した議論には慎重であるべき。
○オンライン診療は2018年度改定時に相当厳格な要件のもとで導入されたため、ほとんど算定されていない状況にある。安全性に支障がない範囲で、緩和できる要件は緩和する方向で検討する必要があるのではないか。
○働く世代の治療の脱落防止など、仕事と治療の両立のために、オンライン診療の要件を適切なものに見直す方向で検討する必要があるのではないか。
◆医薬品・医療機器の効率的かつ有効・安全な使用等
【医薬品】
(論点)

・重複投薬、ポリファーマシー、残薬への対応、バイオ後続品を含む後発医薬品の使用促進、長期処方時の適正使用、薬剤耐性(AMR)への対応等、医薬品の効率的かつ安全で有効な使用等について、これまでの診療報酬上の対応や最近の状況を踏まえ、どう考えるか。
(主な意見)
○高齢化に伴い処方薬の種類数が増加するのは自然であり、また、かかりつけ医が他院の処方薬を引き継いだ場合でも種類数が増加する。処方箋1枚当たりの医薬品の種類数に着目した減算は、見直す必要があるのではないか。
○入院時におけるポリファーマシーへの取組として、医療機関では多職種が時間をかけて対応している。中でも病院薬剤師の役割は重要である。
○フォーミュラリーの取組は、診療報酬上で評価する性質のものではない。
【医療機器】
(論点)

・CTやMRI、ポジトロン断層撮影
(PET)の共同利用の実態を踏まえ、医療機器の効率的な利用を推進する観点で、どのような対応が考えられるか。
(主な意見)
〇かかりつけ医機能を有する医療機関にCTなどの機器が配置されることで早期発見に寄与し、大病院での侵襲性の高い検査を減らしている。
〇日本は検査コストが低く、費用対効果は良いのではないか。
〇共同利用を如何に進めるのかという課題は重粒子線装置などの特に高額な医療機器に絞って検討すべき。
◆地域づくり・まちづくりにおける医療のあり方
【地域の状況を踏まえた入院医療】
(論点)

・地域における医療提供体制の確保を進めるため、異なる機能を担う医療機関がそれぞれの役割を維持しつつ、医療機関間の機能分化・連携を進めやすくする評価のあり方について、各入院料の届出等の状況や、2018年度診療報酬改定の対応を踏まえ、どう考えるか。
(主な意見)
○地域によって人口変動や医療提供体制が様々であることから、診療報酬は地域医療構想に寄り添う範囲での対応に留める必要があるのではないか。
○診療報酬は地域医療構想に寄り添い、後押ししていく観点から議論していく必要があるのではないか。
【医療資源の少ない地域等における医療提供体制】
(論点)

○医療資源の少ない地域等における必要な医療の確保を図る観点から、どのような対応が考えられるか。
(主な意見)
○医療資源が少ない地域等については、要件を緩和している診療報酬の算定状況が低調であり、さらなる分析が必要。医療提供体制の維持のため、ICTの利活用等について検討すべき。
◆介護・障害者福祉サービス等と医療の連携のあり方
(論点)

・地域包括ケアシステムの構築をさらに推進する観点から、医療と介護を連携させていく評価のあり方をどう考えるか。
(主な意見)
○2018年度改定における医療・介護連携の推進の取組をさらに強化すべき。療養病床などで退院できる状況にある患者が退院できていない要因の分析と対策について検討する必要がある。
○訪問看護ステーションからの理学療法士等による訪問看護については、2018年度改定で、看護師が定期的に訪問を行い計画の実施状況を見て評価するとの対応をした。適正なサービス提供がされているかを引続き実態の把握に努めながら、検討すべき。
◆診療報酬に係る事務の効率化・合理化および診療報酬の情報の利活用等を見据えた対応
(論点)

・診療報酬に係る事務の効率化・合理化および診療報酬の情報の利活用を見据えた対応を、どのように考えるか。
(主な意見)
○効率化・合理化をさらに進める必要があるのではないか。
○届出不要な書類も、適時調査の際に提出を求められる。実質的に簡素化されるよう見直す必要がある。
○レセプトに郵便番号を入れること自体は反対しないが、保険医療機関および保険者の負担を考慮し、マイナンバーカードを有効活用する必要がある。

 

全日病ニュース2019年8月15日号 HTML版

 

 

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  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年5月1日号)

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  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年4月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190415.pdf

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