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四病協が医療機関内での救急救命士の活用などを提案

四病協が医療機関内での救急救命士の活用などを提案

【厚労省・医師の働き方改革ヒアリング】5項目のタスク・シフティングの案示す

 厚生労働省は7月26日、医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒアリングを行った。ヒアリング団体は、四病院団体協議会をはじめ、日本歯科医師会、日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本助産師会、日本看護協会の6団体。四病協は、①医師等との協働による薬剤師業務の拡大②医師の包括的指示による看護師業務の拡大③臨床工学技士の業務範囲の見直しと拡大④医療現場における救急救命士の業務確立⑤麻酔業務におけるタスク・シフティングの5つを提案した。
 ヒアリングは今回が最終回の3回目。厚労省はヒアリングを受け、医師の労働時間短縮につなげるため、秋にタスク・シフティングの具体的な見直しを検討する会議体を立ち上げる予定だ。
 四病協の発表は全日病の猪口雄二会長が行った。四病協の「病院医師の働き方検討委員会」からの提案として、5項目を説明した。総論としては、「医師の労働時間短縮を推進するには、チーム医療の推進が重要であり、タスク・シフティング、タスク・シェアリングを多方面にわたり、実現化する必要がある」と積極姿勢を示した。
 「医師等との協働による薬剤師業務の拡大」については、「現行制度の下、薬剤師が実施できるにもかかわらず、十分に活用されていない業務を改めて明確化し、薬剤師の活用を促すべき」とした。具体的には、◇医師との協働によるプロトコールに基づいた投薬の実施◇薬剤選択、多剤併用薬に対する処方提案◇副作用の状況把握、服薬指導◇抗菌薬の治療コントロール処方の提案─をあげた。
 薬剤師の活用を実質的な医師の労働時間短縮につなげるために、「医師の包括的指示と同意がある場合には、医師の最終確認・再確認を必要とせず、薬剤師が主体的に業務を行うことを明確化する」ことを求めた。厚労省から、薬剤師の活用が不十分な理由の質問があり、猪口会長は「そもそも病院で働く薬剤師の人数が少ない」ことをあげ、病棟薬剤師が増える環境整備が必要とした。
 なお、薬剤師業務の拡大の提案は、病棟薬剤師に適用するもので、調剤薬局で働く薬剤師は別の取扱いであることを前提としている。
 「医師の包括的指示による看護師業務の拡大」についても同様に、タスク・シフティングを推進する上で、包括的指示の範囲が不明確として、医師が看護師に、一括して指示を与えられる要件の明確化を求めた。「一般的な臨床現場で、医師が患者の病態の変化を予測している範囲内で、一括した指示を与えることができれば、有効なタスク・シフティングになる」と期待を示した。
 看護師が行うことのできる医行為は「特定行為」として、「在宅・慢性期領域」「外科術後病棟管理領域」「術中麻酔管理領域」でパッケージ化されている。今回の提案では、それより侵襲性の低い医行為について、「病棟や在宅、介護施設などに分けて、モデル化して示せば、現場での使い勝手がよくなる」と、猪口会長は強調した。
 「臨床工学技士の業務範囲の見直しと拡大」についても、現行制度で実施可能な業務が充分に実施されていないことを踏まえ、可能な業務を改めて整理することが必要とした。その上で、整理された業務の活用を促すとともに、現行制度の不備が明らかになれば、「業務範囲の見直しおよび拡大」を図るべきと主張した。
 臨床工学士が現行制度で実施できる業務としては、◇心・血管カテーテル業務における生命維持装置およびカテーテル関連機器の操作等◇人工呼吸器の使用時の吸引による喀痰等の除去─などがある。医師の具体的指示が必要な「動脈留置カテーテルからの採血」などもある。
 「医療現場における救急救命士の業務確立」については、法改正が必要なタスク・シフティングを提案した。現行制度で救急救命士は、救急救命士法により、処置可能な場所が「傷病者の発生場所から救急用自動車内、医療機関に到着するまで」に限定されている。このため、医療機関内で救急救命士が活用できるよう法改正を求めた。
 「麻酔業務におけるタスク・シフティング」については、「現行制度の下で、軽度な全身麻酔は、標榜医や経験を積んだ医師により『自科麻酔』が可能であることを確認し、推奨したい」とした。医療現場で、麻酔科医不足が深刻である中で、麻酔科以外が麻酔を実施できる環境を整えるべきとしている。

日本看護協会はNPの創設を主張
 そのほかの団体によるヒアリングは、以下のとおり。
 日本歯科医師会はまず、人数は少ないものの、病院勤務の歯科医師には医科と同様に、超過勤務の問題が存在すると指摘した。また、チーム医療や医科歯科連携の推進、病院勤務の歯科医師を増やすことで、医師の労働時間短縮に貢献できると主張した。
 日本産科婦人科学会は、移管可能と考える業務として、助産師外来(低リスク妊娠を対象とした妊婦健診の一部)と院内助産システム(低リスク分娩を対象とした分娩管理業務の一部)をあげた。助産師外来では、低リスク妊娠を対象とした妊婦健診の6割程度(産婦人科医の年間労働時間を180時間削減)の効果があると見込んだ。
 いずれの場合も、「高度な助産業務が可能な助産師」が求められるとしている。なお、現行制度で助産師の実践能力を評価するアドバンス助産師の認証がすでにあり、活用可能とした。
 日本小児科学会は、看護師や医師事務作業補助者に移管可能な業務に、ワクチン接種や、行政への申請書等の下書きなどをあげた。ただ、小児科医は患者・家族の生活の把握を含め「総合医」であるとして、タスク・シフティングには全般的に慎重な姿勢を示した。
 日本助産師会は、低リスク妊産婦の健診・保健指導を助産師が積極的に担うことで、医師の負担を軽減できると主張した。具体的には、14回の妊婦健診のうち9回分、保健指導の全部を助産師が実施することや、産後の2週間・1カ月の健診を助産師が担うことにより、医師の労働時間を短縮できるとした。
 日本看護協会は、「特定行為研修制度の推進だけでは、国民の医療ニーズに対応できないため、ナース・プラクティショナー制度の構築も必要」と主張した。ナース・プラクティショナーは、一定の領域で医師の判断によらず、看護師が医療提供の判断を行うことのできる職種。一定の領域としては、在宅の慢性疾患管理等の医療提供や、病院で医師が不在時に患者の状態変化に対応する事例などを示した。

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190801/news10.html

    2019年8月1日 ... 厚生労働省は7月17日、2回目の医師の働き方改革を進めるためのタスクシフティング
    に関するヒアリングを行った。 ... 日本救急救命士協会◇日本作業療法士協会◇日本
    臨床衛生検査技師会◇日本薬剤師会─の6団体から意見をきいた。

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年7月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190701.pdf

    2019年7月1日 ... 含めて、医師・歯科医師・薬剤師・看. 護師・栄養士・介護支援専門員などに. よる支援
    ...... る調剤を受け、薬剤師の面前で内服す. る。その後、産婦人科医による直接の ....
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