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共用試験を医師法に位置づけ、公的な仕組みに

共用試験を医師法に位置づけ、公的な仕組みに

【医道審・医師分科会】ステューデント・ドクターも公的な資格に

 医道審議会・医師分科会(中谷晴昭分科会長)は8月1日、シームレスな医師養成に向け、臨床教育の中で診療参加型臨床実習を重視する共用試験(CBT、OSCE)を医師法に位置づけることで概ね了承した。共用試験の合格者には、「ステューデント・ドクター」の資格を与え、臨床実習で一定の医行為を実施できることを明確にする。ただ、委員からは、「ステューデント・ドクター」がより侵襲性の高い医行為を実施することに、慎重な意見が目立った。
 日本における臨床教育に対しては、「見学中心で実習の実践性が乏しく、習得度が高くない」、「卒前・卒後の研修内容に分断があり、重複も生じている」、「諸外国と比較し、臨床実習と臨床研修を合わせた期間が長く、非効率な体制になっている可能性がある」との指摘がある。医師不足問題を背景に、基本的な診療能力の習得が早期に可能になるような取組みが求められており、医師養成の仕組みを改革する。
 臨床実習を重視した取組みでは、医学生の共用試験として、知識を問う「CBT」、技能・態度の習熟度を測る「OSCE」がある。OSCEには臨床実習開始前と開始後の2種類の試験があり、いずれも医学系80大学で実施されている。
 前回の医師分科会で、CBTを法的に位置づけることには了承が得られており、今回、CBTとセットであるOSCEも、公的なものとし、医師法に位置づけることが論点となった。医療系大学間共用試験実施評価機構(KATO)がOSCEの詳細を説明。臨床実習に臨む医学生の能力・適性をみる共通の評価システムを構築することの意義を強調した。KATOの説明を受け、委員の多くは概ね理解を示した。
 共用試験を公的なものにすることには、前回の分科会で「教養教育・人格形成に支障が生じる」、「知識や手技よりも人間性や態度が大事」といった意見もあった。このため、厚労省は、今後取り入れられるモデル・コア・カリキュラムで、「教養教育を含めた医師として求められる基本的な資質・能力は、大学6年間かけて身につける方向性が、すでに示されている」と説明した。
 医師法に共用試験の実施を位置づけ、共用試験に合格することの認証を公的に与えることで、「ステューデント・ドクター」の資格を得ることができるようにする。「ステューデント・ドクター」は医師免許を持っていないため、医師ではないが、一定の医行為を行うことができる。2017年の「医学部の臨床実習において実施可能な医行為の研究報告書」(門田レポート)は、現行法の範囲で「ステューデント・ドクター」が行える医行為を整理した。
 門田レポートでは、実施可能な医行為を明確にするとともに、臨床実習で医学生が実施する医行為の範囲の拡大を目指す方向性が示されている。ただ、委員の多くは、「ステューデント・ドクター」を法的に位置づけることには同意しつつも、より侵襲性の高い医行為を行えるようにすることに、慎重な姿勢を示した。
 また、厚労省は、「ステューデント・ドクター」が医行為を実施し、医療事故が起きた場合の対応として、診療契約は患者と医療機関の間に締結されるものであることから、勤務医の場合と同様に、民事上の責任の所在は第一義的には医療機関にあることを示した。患者・家族の同意については、「ステューデント・ドクター」を法的に位置づけた後、原則、院内掲示を必須とし、「内容や状況に応じて、包括同意等を得ることを検討する」とした。

 

全日病ニュース2019年8月15日号 HTML版

 

 

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    2019年7月15日 ... 医道審議会の医師分科会(中谷春昭分科会長)は6月19日、シームレスな医師養成に
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    、公布後3年以内に法的措置を講じるとの文言が入った。 ... 厚労省は今回、◇CBT、
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  • [2] 医師養成過程を通じた偏在対策や働き方改革を議論|第945回/2019 ...

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