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年代別の課題など次期診療報酬改定の検討項目示す

年代別の課題など次期診療報酬改定の検討項目示す

【中医協総会】猪口会長は施設基準の緩和の観点を強調

 厚生労働省は3月27日の中医協総会(田辺国昭会長)に、来年度診療報酬改定の検討項目を示した。夏までの第1ラウンドの議題として、幅広いテーマを網羅的に並べた。年代別の医療の課題を議論するとしたほか、昨今の医療問題の関連事項を取り上げた。具体的には、働き方改革や地域医療構想の推進、地域包括ケアシステムの構築、新規医療技術への対応、ICT技術の利活用などをあげた。
 次期診療報酬改定の議論では、夏までに幅広いテーマを多様な視点で議論する第1ラウンドと、診療報酬の評価に直結する個別項目を議論する秋からの第2ラウンドに分かれる。
 前回の2018年度改定の議論においては、2016年度中に議論を始めていた。それに対して、今回は、年度を越えてからのスタートで出足は遅い。前回改定が6年に1度の医療・介護同時改定であったことに加え、今回は今年10月に予定される消費税引上げに伴う対応や、医薬品・医療機器の費用対効果評価の仕組みで合意を得る必要があった。このことが、前回と比べて、議論が遅れている理由とされる。
 時間に余裕がない状況だが、厚労省はかなり幅広いテーマを用意した。まず、患者の疾病構造や受療行動等を意識しつつ、年代別に分けて、課題を整理するとした。◇周産期・乳幼児期(妊娠から出産、新生児、乳幼児)◇学童期・思春期(就学前、小学生、中学生、高校生、大学生等)◇青年期・壮年期・中年期(20代~ 30代、40代~ 60代)◇高齢期◇人生の最終段階─で分けている。
 具体的なテーマとしては、「周産期・乳幼児期」では、ハイリスク妊婦の診療体制やNICUを退院した児に対する診療体制、「学童期・思春期」では、小学生以降のかかりつけ医機能や思春期のメンタルヘルス対策、「青年期・壮年期・中年期」では、仕事と両立できる産業保健との連携や生活習慣病対策、「高齢期」では、認知症への対応やフレイル患者等への取組み、「人生の最終段階」では、多職種による医療・ケアの取組みや意思決定の支援(人生会議等)の普及・定着などを例示した。
 団塊の世代がすべて75歳以上となる2024年を見据えた対応が過去数回の改定の中心テーマだったが、今回はこれまでの改革の方向性を踏まえつつ、今年1月から2018年度改定で導入された「妊婦加算」が凍結されたことも背景に、年代別に課題を整理する方針を示したと考えられる。
 続いて、昨今の医療と関連性の高いテーマとしての項目も明示した。
 改定論議の際に、主要な項目になりそうなテーマとして、◇かかりつけ医機能◇紹介状なしの大病院受診時の定額負担◇医師等の働き方改革◇業務の効率化の観点を踏まえた医師・看護師等の外来等の配置基準◇タスクシフト、タスクシェア、チーム医療◇地域医療構想◇医療機能の分化・連携◇地域包括ケアシステム◇新規医療技術への対応◇ICTやデータヘルスの利活用◇介護サービスとの連携◇後発医薬品の使用促進◇高額医療機器の共同利用─などがあがる。
 幅広いテーマが示され、委員からは、「様々な課題を網羅的にあげてもらった。しかし、時間が限られている中で、すべてできるのか。表層的な議論で終わってしまうのではないか」との懸念が示された。このため、第1ラウンドの議論であっても「診療報酬の評価に、どう結びつくかのイメージをつくれるような論点を出してほしい」との要望が出た。
 全日病会長の猪口雄二委員も「幅広いテーマの中で、重点を絞って議論したい」と述べるとともに、今後の議論で人口減少社会を踏まえた対応を強調した。その上で、「働き方改革もある中で、医療の質を維持するには、業務の効率化の視点が不可欠である。ICTやロボティクスを導入することの評価も考えていく必要がある」と述べた。

費用対効果評価の結果を報告
 医薬品や医療機器の費用対効果評価の試行的導入で選定された品目の価格調整案を了承した。対象13品目のうち、薬価引下げは抗がん剤のオプジーボだけとなった。試行的導入においては、一部の品目で、企業分析と厚労省の分析班の分析結果が大きく異なったため、検証作業が行われた。その結果、多くの品目で、価格調整は行わないことになったが、オプジーボは増分費用効果比(ICER)により、価格引下げの対象と判断された。
 具体的な薬価引下げ方法は、同日に、正式に示された通知案に基づき、算定される。4月以降の薬価収載のタイミングで引下げが行われる見通しだ。
 費用対効果評価の仕組みでは、医薬品と医療機器に加え、高額な医療機器を用いる医療技術の価格調整も検討対象となっていた。今回示された検討結果によると、現状で、「一律の価格調整方法を定めることは困難」と判断された。ただし、費用対効果評価の仕組みをどのような形で導入するかについては、今後、海外の事例を参考にしながら、中医協で検討していく。

 

全日病ニュース2019年4月15日号 HTML版

 

 

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