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ホーム全日病ニュース(2019年)第946回/2019年8月15日号地域包括ケア病棟や回復期リハ病棟の次期改定への課題を議論...

地域包括ケア病棟や回復期リハ病棟の次期改定への課題を議論

地域包括ケア病棟や回復期リハ病棟の次期改定への課題を議論

【中医協・入院医療等調査・評価分科会】標準からかい離したDPC対象病院も分析

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は7月25日、地域包括ケア病棟入院料・管理料、回復期リハビリテーション病棟入院料について、2018年度診療報酬改定の影響を検証した調査を基に、次期診療報酬改定に向け、詳細なデータ分析を行った。また、DPC制度については、標準的なDPC対象病院と比べ、医療資源投入量や在院日数がかい離した病院の分析などを行っている。

地域包括ケア病棟の機能はポストアキュート以外を重視
 地域包括ケア病棟入院料は、①急性期治療を経過した患者の受入れ②在宅で療養を行っている患者の受入れ③在宅復帰支援の3つの機能があると整理されている。
 2018年度調査で、地域包括ケア病棟・病室の利用方法で「最も該当するもの」をきくと、「自院の急性期病棟からの転棟先として利用」が63.8%、「在宅医療の後方支援として、急変時等の入院先として利用」が12.5%、「他院の急性期病棟からの転院先として利用」が10.6%の順となり、病院完結型のポストアキュートでの活用が最も多い。
 しかし、地域包括ケアシステムを推進する中で、病院完結型のポストアキュート以外での活用を普及させることが重要であり、診療報酬改定でもそのような見直しを行っている。2016年度改定では、500床以上または集中治療室等を持つ医療機関において、地域包括ケア病棟入院料の届出病棟数は1病棟までとした。
 2018年度改定では、在宅医療や介護サービスなど多様な役割・機能を果たしている医療機関を評価するため、「実績部分」を設けて、入院料体系を大きく見直した。なお、「実績部分」を評価する入院料1、3(2,738点、2,238点)は、許可病床数200床未満のみが算定できる。「実績部分」の評価は、「自宅等から入院した患者割合」、「自宅等からの緊急患者の受入れ」、「在宅医療等の提供」、「看取りに対する指針」がある。
 「在宅医療等の提供」は4項目あり、うち2つを満たす必要がある。2018年度調査で満たしている要件をきくと、例えば、入院料1では、「介護保険における訪問介護など介護サービスを同一敷地内の施設等で実施」(88.1%)と「在宅患者訪問診療料の算定回数が3月で20回以上」(86.6%)が高い(複数回答)。それ以外の算定割合は低く、同一敷地内の訪問看護ステーションの訪問看護基本療養費等は16.4%(在宅患者訪問看護・指導料等は7.5%)、開放型病院共同指導料は10.4%である。
 患者の流れをみると、地域包括ケア病棟の入棟元は、自院の一般病床が43.5%で最も高く、次いで自宅(在宅医療なし)が22.9%、自宅(在宅医療あり)が6.4%となっている。退棟先では、自宅(在宅医療なし)が49.4%で最も高く、次いで自宅(在宅医療あり)が9.7%、介護老人保健施設が4.8%となっている。死亡退院は3.5%である。

検査やリハビリの実施状況めぐり議論
 患者の状況では、「治療のため」を理由に「予定入院」した患者のうち、入院中の手術・過去7日間の検査の実施状況で、約3割が「手術なし・検査なし」だった。また、「リハビリテーションのため」を理由に「予定入院」した患者のうち、疾患別リハビリの実施が最も多かったのは「運動器」の49%だったが、「いずれも実施していない」との回答も14%に上った。
 この結果に対して、支払い側委員からは「(検査やリハビリの費用が包括された)点数の水準から判断すると、問題ではないか」との意見が出た。
 これに対し、検査に関しては、「過去7日間の調査では、ちょうど検査を実施していない期間にあたっている可能性があり、一概に判断できない」、リハビリに関しては、「20分単位の疾患別リハビリではない、効果が出るよう工夫した独自のリハビリを地域包括ケア病棟は提供している。提供量に応じた評価を検討すれば、先祖返りになる」との反論があった。
 全日病副会長の神野正博委員は、「地域の介護体制により、医療依存度の高い利用者は介護サービスを利用できない場合がある。地域包括ケア病棟がレスパイト入院として活用されている機能がある」との現実を指摘した。
 神野委員は、患者のADLスコアが入棟時と退棟時を比べ、改善しているとのデータを踏まえ、「生活の場につなげるという地域包括ケア病棟の機能が一定程度うまくいっている」ことも強調した。地域包括ケア病棟のいずれの入院料でみても、「食事」「移乗」「トイレの使用・動作」「入浴」「階段」「更衣」「排便・排尿管理」などにおいて、入棟時よりも退棟時の「自立」の割合が上がっている。
 また、神野委員は、「看取りに関する指針」の要件が入院料1、3だけの要件となっていることに違和感を表明。「看取りに重点を置くのであれば、死亡退院は3.5%であり、病棟の性格が違う。ACPを通じて事前に話し合うプロセスを重視するのなら、全部の要件とするべきではないか」と述べた。

FIMは全入院料で改善とのデータ
 回復期リハビリテーション病棟入院料については、算定病院のうち最も点数が高く、リハビリテーションによる改善度を示す実績指数(FIM)が「37」以上を求める入院料1(2,085点)が半数以上を占める。入院料1を算定する医療機関の実績指数は、2017年10月の「41」が2018年10月に「48.2」となっており、その他の入院料をみても、改善していることがわかった。
 入棟時から退棟時までの実績指数の変化は、多発骨折の発症後の患者で「11−20点」と大きく、脳血管疾患等の患者で「1−10点」と小さい。回復期リハ病棟から退棟した6割の患者で、「退院後もリハビリテーションの必要がある」とされた。
 また、2018年度改定では、入院料1に「当該病棟に専任の病棟管理栄養士が1名以上配置されていることが望ましい」とし、管理栄養士がリハビリテーション実施計画等の作成に参画することや栄養状態の定期的な評価や計画の見直しを行うことなどを要件とした。また、入院栄養食事指導料は包括範囲から除外した。
 改定後の状況をみると、管理栄養士を配置している医療機関の割合は8割だった。管理栄養士が病棟に配置されている場合のリハビリテーション計画書の栄養項目を全員に記載している割合は、全入院料で87.4%となっている。
 退棟後に利用を予定するサービスでは、「外来診療」がほぼ半数を占め、最も多い。次いで「通所リハビリテーション」(12.7%)、「通所介護」(9.7%)となっている。神野委員は、「外来診療を除けば介護サービスが多い」と指摘。「回復期リハ病棟と介護サービスをつなぐ機能の強化が今後の課題となる」と主張した。他の委員からも、「ケアマネージャーが適切な段階で関与できる体制が必要」との意見が出た。

DPC等作業グループで分析

 DPC制度については、DPC評価分科会が入院医療等の調査・評価分科会に統合されたため、入院医療等の調査・評価分科会でDPC制度も議論される。現在、DPC /PDPS等作業グループが分析を続けている。
 2018年度改定では実際の見直しは行わなかったが、診療密度や在院日数が、標準的なDPC対象病院とかい離しているDPC対象病院の退出要件を検討する方向で議論するとの共通認識を得ている。その問題意識で作業グループは分析を行っている。ただし、役割はあくまで分析であり、結果の判断は中医協総会が行うことになっている。
 同日の報告では、第1回と第2回の会議報告が行われた。第1回では、DPC対象病院に様々な種類の病院が加わることで、データ上、標準から外れている病院が出ていることの分析を求める意見が出た。例えば、「特定の診療科に特化した病院についての分析」を進めるべきとした。
 また、「医療資源投入量が低い病院が含まれると、他の病院と比べれば、投入した医療資源に対して報酬水準が相対的に高くなるので、不公平」との意見が出たという。
 これらの意見を踏まえ、第2回で厚労省が求められた資料を提出し、その上で議論を行った。
 資料では、特定の診療に特化した病院として、小児に着目し、多くのDPC対象病院の小児の症例は5%未満であるのに対し、小児の症例が90~ 95%のDPC対象病院があることが示された。
 また、DPC制度は、一定の入院期間を経ると点数が下がる階段式の報酬設定となっている。例えば、「胸椎、腰椎以下骨折損傷(手術なし)」の場合、8日目までの入院期間Ⅰは3,014点だが、9日目から17日目までの入院期間Ⅱでは2,271点まで下がる。
 一方、地域包括ケア病棟入院料2は2,558点(60日)で、入院期間Ⅱよりも高い点数である。地域包括ケア病棟をポストアキュートとして活用するDPC対象病院で、経営的な観点での転棟が行われている可能性を示唆した(下図参照)。
 第2回の議論では「医療資源投入量が低く、在院日数が長い病院は報酬水準が不公平になるので、分析対象を広げて、それらの病院の特徴を分析すべき」などの意見が出た。

 

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