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ホーム全日病ニュース(2020年)第965回/2020年6月15日号新型コロナ対応の医療保険上の特例的な措置を整理

新型コロナ対応の医療保険上の特例的な措置を整理

新型コロナ対応の医療保険上の特例的な措置を整理

【中医協総会】第二波、第三波の感染拡大に備え、特例を続ける

 厚生労働省は5月23日の中医協総会(小塩隆士会長)に、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う医療保険上の特例的な措置を報告した。厚労省は、4月~5月にかけて、予算措置とあわせ、新型コロナに対応した様々な特例的な措置を講じてきた。特例的な取扱いの多くは、持ち回りの開催による決定で事務連絡などを出してきたため、全体をまとめて整理した。
 同日の中医協はオンラインで開催し、YouTubeで放映した(写真)。
 追加分の最近の主な内容をあげると、◇専用病床を確保し、患者の受入れを行う医療機関における診療で特定集中治療室管理料などを3倍に引上げ◇疑似症患者が特例的な措置の対象であることを明確化◇抗原検査の保険適用◇無症状の患者に対する核酸検出を、医師の判断で行えることを明確化─などの対応がある。
 全日病会長の猪口雄二委員は、この中で、新型コロナ感染患者に対応していない一般病院において、疑似症患者が出た場合に、増額された診療報酬を算定できることの確認を求めた。これに対し、森光敬子医療課長は、「新型コロナ感染症患者に対応する役割の病院でなくても、肺炎で救急搬送された患者で、新型コロナを疑わざるを得ない場合、PCR検査の結果を待っている間、個室での管理や器材の確保など様々なコストがかかる。陰性が明らかになるまでの期間は、新型コロナ感染症患者と同様の診療報酬の評価となる」と説明した。
 また、緊急事態宣言が解除され、段階的に社会経済活動を回復させていく方針が示されたことを踏まえ、支払側委員からは、「新規の感染者も減ってきており、感染拡大は一定程度の落ち着きを示していると聞いている。いつかは特例をやめなければならず、その条件を中医協で議論すべき」との意見が出た。これに対し、森光課長は、「今は第二波が来るのに備え、対応している時期。やめる時期については、政府としての新型コロナ対応の全体の中で決まってくるものと考える」と述べた。
 日本医師会の松本吉郎委員は、「特例的な措置には種類が異なるものがある。例えば、ECMOの場合、それに対応するのに必要な医療資源量が評価されていなかったことが、今回の対応で明らかになった。特例として終了してよいものと終了すべきでないものを、中長期的な観点で検討すべきではないか」と提案した。
 猪口委員は、「地域で発生する新規感染者は減ったかもしれないが、病院や介護施設などではクラスターが発生するなど、まだまだ手が抜けない状況が続いている。PCR検査も十分に受けられる体制になっておらず、病院や介護施設で院内感染が発生するリスクを下げることの障壁となっている。対応を引続き図っていく必要がある」と強調した。

2020年度診療報酬改定の検証の場
 中医協総会は同日、2020年度診療報酬改定の附帯意見に盛り込まれた項目の検証を行う場について、附帯意見の項目ごとに、診療報酬改定結果検証部会や「入院医療等に関する調査・評価分科会」など調査を実施する会議体に振り分けた。
 附帯意見には、「働き方改革」、「入院医療」、「かかりつけ機能、精神医療、生活習慣病等」などの項目がある。例えば、「入院医療」では、一般病棟入院基本料や特定集中治療室管理料、地域包括ケア病棟入院料等、回復期リハビリテーション病棟入院料の2020年度改定の結果を検証する。
 委員からは、「新型コロナの影響で現場が混乱しているので、今年度は調査を行わず、来年度のみの調査とすべき」、「2020年度改定と新型コロナの影響を区別するのは難しい」、「新型コロナに対応した診療報酬上の特例的な取扱いの調査も実施してほしい」との意見や要望が出た。
 森光課長は、できるだけ新型コロナの影響を除外して、2020年度改定の検証を実施するため、調査手法を設計するとの考えを示した上で、診療報酬上の特例的な取扱いの調査については、厚労省が実施する新型コロナへの対応に関する全体の検証の中で実施されるとの見通しを示した。

テリルジーの企業分析提出遅れる
 医薬品や医療機器の公定価格に対する費用対効果評価制度の本格導入後、最初の対象品目となったテリルジーの企業分析の提出が遅れたことが、5月27日の中医協総会に報告された。
 中医協として、遅れたことに「一定の妥当性があった」と判断し、過失は認めなかった。分析枠組みが臨床試験や薬事審査と大きく異なっていたため、販売元のグラクソ・スミスクラインが9カ月の期間で分析を終えることができなかったという。
 テリルジーはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療薬で、収載時価格は30吸入1キットで8,597.70円、市場規模はピーク時236億円となっている。
 費用対効果評価制度では、対象品目となった医薬品や医療機器について、企業と厚労省、国立保健医療科学院が分析前協議を行った上で、企業分析を開始。その後、公的分析を実施する。その結果を専門組織が総合評価し、中医協が価格決定を行う手順になっている。こうした手順に1年半程度かかる。
 本格導入後、最初の品目であったことから、委員の了解を得たが、制度の円滑な運用に向け、改善策を求める意見が出た。厚労省は、企業と国立保健医療科学院の間で、進め方や情報共有に不十分な点があったと指摘した。
 費用対効果評価制度の対象品目は現在10品目。公的分析中の品目はテリルジーとキムリア(ノバルティス)。企業分析中の品目はユルトミリス(アレクシオンファーマ)、トリンテリックス(武田薬品工業)、コララン(小野薬品工業)。テリルジーの分析結果に準じ、分析は行わない品目はビレーズトリエアロスフィア(アストラゼネカ)。分析前協議中の品目はノクサフィル(MSD)、カボメティクス(武田薬品工業)、エンハーツ(第一三共)、ゾルゲンスマ(ノバルティス)である。

 

全日病ニュース2020年6月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年5月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200515.pdf

    2020年5月15日 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は4月. 24日、新型コロナウイルス感染症の拡 ... ン会議の
    形式で行い、初めてYouTube. によるライブ配信により公開した。 ... 医療従事者や人工
    呼吸器などの器材、. 個人防護具などを含めた実際に運用可.

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