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ホーム全日病ニュース(2020年)第965回/2020年6月15日号唾液による検体採取でPCR検査の実施を可能に

唾液による検体採取でPCR検査の実施を可能に

唾液による検体採取でPCR検査の実施を可能に

【厚労省】負担軽減で実施医療機関の増加に期待

 厚生労働省は6月2日、新型コロナウイルスへの感染の有無を調べるPCR検査について、従来の「鼻咽頭ぬぐい液」に加えて、「唾液」での検体採取を可能とすることを発表した。対象は発症から9日目まで。検体採取での感染リスクや人的負担が軽減されるため、今後、「唾液」のみでのPCR検査を行う医療機関が増える可能性が生じてきた。
 これに伴い厚労省は、「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査の取扱い」(一部改正)とPCR 検査マニュアルを改訂した。PCR検査キットの一部変更承認や保険適用の事務連絡も同日付けで発出している。
 厚生労働科学研究により、発症から9日以内の症例では、「鼻咽頭ぬぐい液」と「唾液」の検査結果に高い一致率が認められた。新型コロナウイルスと診断され、自衛隊中央病院に入院した患者の発症後14日以内に採取された88症例の凍結唾液検体を分析した結果だ。各国での取り組みも少ない中で、日本発のエビデンスを示すことができたという。
 「唾液」のみの検体採取であれば、現場の感染防御の負担が大幅に下がる。「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査の取扱い」では、「唾液」のみのPCR検査を行う場合の感染防止対策を示し、「鼻咽頭ぬぐい液」で検体採取する場合より、条件を緩和した。
 具体的には、「唾液」のみの検査実施の要件として、◇動線を分ける◇検査体制の確保◇感染防止の標準予防策に加えて、飛沫・接触予防策◇唾液検体採取の際はサージカルマスクと手袋を着用─を示した。その上で、「鼻咽頭ぬぐい液」などによる検体採取や抗原検査を実施する場合は、追加的な要件を満たすことを求めている。
 追加的な要件としては、◇検体採取の際の眼の防護具、ガウンなどの装着◇エアロゾルが発生する可能性のある手技を実施する場合のN95 マスク等や眼の防護具、ガウン、手袋の装着─などを列挙し、事務連絡を参照すべきとした(「新型コロナウイルス感染症が疑われる者等の診療に関する留意点について(その2)(6月2日)」)。
 現在、PCR検査は帰国者・接触者外来、地域外来・検査センター、感染症指定医療機関等、適切な感染防止対策を整えた医療機関で実施できる。検査数が不十分との指摘がある中で、今後、「唾液」のみのPCR検査の実施機関が増え、検査数が増えることが期待される。
 また、「新型コロナウイルス感染症に関するPCR等の検査体制の強化に向けた指針」においては、「患者・入所者や医療従事者等を守るため、院内・施設内の感染対策を強化」することを重要な課題にあげ、都道府県が6月中旬までに検査体制の強化に必要な施策を実施することを求めた。検査の分析では、民間検査機関や病院、大学の活用も促進するとしている。
 保険適用の取扱いでは、「検査料の点数の取扱いについて」の事務連絡が同日、発出された。唾液検体の取扱いを追記した国立感染症研究所の「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」を参照して、事務連絡の取扱いに従い、SARS-CoV-2核酸検出を実施した場合に検査料を算定できる。

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2版

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2020/200519_1.pdf

    2020年5月18日 ... 陰性の時は医師の判断でPCRを行うこと。 ※疑似症の ... 事態におけるサージカル
    マスク、長袖ガウン、ゴーグル及びフェースシールドの例外的取扱い. 6 退院・ ... ナー
    ザルハイフロー、CPAPなどの使用を避け、エアロゾル発生を抑制. する.

  • [2] 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応について

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2020/200408_7.pdf

    2020年4月7日 ... 難)がある患者は迅速に隔離し、状況に応じて PCR 検査の実施を考慮する。 「③市中や
    ... 2)エアロゾルが発生する可能性のある手技(気道吸引、気管内挿管、下 ... を行い、
    マスク、ゴーグルまたはフェイスシールド、長袖ガウン、手袋などの.

  • [3] 新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2020/200311_3.pdf

    ・同患者の鼻腔や咽頭から検体を採取する際には、サージカルマスク等、眼. の防護具(
    ゴーグル又はフェイスシールド)、ガウン及び手袋を装着するこ. と。 ・同患者に対し、
    エアロゾルが発生する可能性のある手技(例えば気道吸引、. 下気道検体採取等) ...

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