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ホーム全日病ニュース(2020年)第975回/2020年11月15日号初診含めたオンライン診療の恒久的な取扱いの議論開始

初診含めたオンライン診療の恒久的な取扱いの議論開始

初診含めたオンライン診療の恒久的な取扱いの議論開始

【厚労省・オンライン診療検討会】現状の特例は継続

 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(山本隆一座長)が11月2日、オンラインで開催された。新型コロナの感染拡大に伴う電話・オンライン診療の特例的な取扱いを、当面続けることを了承した。あわせて、「初診を含めオンライン診療は原則解禁する」との政府の方針を踏まえ、恒久的な取扱いを年内に決める議論を開始した。
 電話・オンライン診療の特例は、時限的な取扱いが続いており、3カ月ごとに実施状況を確認し、継続の是非を判断している。前回は8月6日の検討会で、特例を継続することを決めた。
 特例の実施状況をみると、10月末時点で、全医療機関数11万916施設のうち、電話・オンライン診療を実施できると登録した医療機関数は1万6,587施設で約15%を占める。6月末からほぼ横ばいの状況にある。
 実施件数は5月が最も多く、6月に下がり、7・8月は少し増加し、9月に再び6月の水準になった。医療機関当たりの実施件数は月7~8件前後で推移しているが、8月は11.7件と多かった。内訳は、電話診療が多い。オンライン診療は電話診療のおよそ3分の1である(下図参照)。
 4月~6月の検証結果では、◇電話・オンライン診療の患者は小児が多い◇軽症と思われる患者が多い◇一部で禁止されている麻薬・向精神薬の処方があった─との特徴が把握された。
 今回の検証で、7月~9月についても、「電話や情報通信機器を用いた診療は4月~6月と同程度の実施数」、「対象となっている患者や疾患等、診療の内容についても4月~6月と同様」、「一部で物理的に大きく離れた地域に対して診療が行われていたことや、要件を守らない処方等が行われていたことも同様」であることがわかった。
 これらを踏まえ、特例を当面継続することに異論はなかった。ただ、リアルタイムの映像を用いるオンライン診療より電話診療が多いことに対し、電話診療では情報量が限られるため、「やめる時期を今後考えた方がよい」(山口育子委員・NPO 法人理事長)との意見があった。

安全性と信頼性をどう確保するか
 恒久的な取扱いについては、すでに菅義偉首相が、「オンライン診療やデジタル教育の規制改革を行う」との方針を明確にしている。その後の田村憲久厚労相・平井卓也デジタル改革担当相・河野太郎行政改革担当相の三大臣会合では、「初診も含めオンライン診療は原則解禁する」ことが合意された。
 その際に、「安全性と信頼性がベースになる」ことや「電話ではなく映像があることを原則にする」ことでも合意が得られている。また、10月30日の閣議後会見で田村厚労相は、「いわゆるかかりつけ医を対象にして、オンライン診療は初診も解禁というか恒久化する」と述べている。
 厚労省はこれらを踏まえ、「安全性」と「信頼性」の課題を整理した。特に初診の際が問題になる。
 「安全性」については、「診断が難しい症状がある」、「すぐに対面診療が必要な症状がある」、「受診歴がなく、電話診療の場合にそのようなリスクが増大する」といった問題がある。「信頼性」については、「電話のみだと本人確認が難しい」などの問題がある。
 慶應義塾大学教授の権丈善一委員は、「かかりつけ医が関わればこれらの多くの問題を解決できる」と主張。ただし、かかりつけ医に一致した定義がなく、安全性と信頼性をどのように確保していくかは今後の課題になる。
 また、オンライン診療を推進しても、それにより、「オンライン診療を行わない施設が淘汰される事態は避けるべき」との意見が複数の委員から出た。地域密着型の医療機関が、患者・家族や医療関係者と「顔の見える関係」を作り、地域包括ケアを推進する方向性に逆行しない対応が求められた。
 オンライン機器にアクセスすることが困難な高齢者が少なくないなど、世代で異なるウェブリテラシーの問題も指摘された。テレビの政府広報を含めオンライン診療について、丁寧な周知を求める意見が出た。ベンダーを介して医療機関が紹介されるなど、オンライン診療のやり方がベンダー主導になってしまうことへの懸念も出た。
 多摩ファミリークリニック院長の大橋博樹委員は、特例により初めてオンライン診療を行った結果を報告した。◇患者の生活の場をみることができた◇工夫によって診療をレベルアップできる─ことなどが発見できたという。
 生活の場については、プライバシーの問題が残るが、患者が自宅等にいることにより、追加的な情報が得られるとした。診療のレベルアップについては、患者にペンライトを持ってもらうなどの工夫で、ある意味、オンライン診療という専門分野が生じるとした。
 「全くの初診患者は怖い」と強調。「かかりつけ患者であれば、『いつもとの比較ができる』」とし、いわゆる新患は困難であると述べた。
 また、「対面診療では受診しないが、オンライン診療では受診する層がある」と指摘し、オンライン診療が受診のきっかけを作ることを指摘した。
 また、新規に委員が7人加わった。新規委員は以下のとおり。権丈委員、津川友介委員(カリフォルニア大学助教授)、大橋委員、佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)、大石佳能子委員(株式会社メディヴァ代表取締役)、佐藤主光委員(一橋大学教授)、鈴木美穂委員(NPO法人共同代表理事)。大石氏と佐藤氏は規制改革推進会議の委員でもある。

 

全日病ニュース2020年11月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年11月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/voice/topnews/backnumber/pdf/2015/151115.pdf

    2015年11月15日 ... 異なるのではないか」と異論を唱えた。 鈴木委員の提出 ... 急性期の病態として
    重症・中等症・軽症があり、各病院の機能に応じた急性期医療を提供する。 ・
    多くの診療 ... から16.1%へとほぼ横ばいを確保した。 実調の結果は ...

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