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ホーム全日病ニュース(2020年)第975回/2020年11月15日号厚労省が「医療資源重点外来」を位置づける仕組みを提示

厚労省が「医療資源重点外来」を位置づける仕組みを提示

厚労省が「医療資源重点外来」を位置づける仕組みを提示

【厚労省・医療計画見直し等検討会】外来機能報告制度で把握し公表

 厚生労働省の医療計画の見直し等に関する検討会(遠藤久夫座長)が10月30日にオンラインで開催され、外来医療の明確化をめぐり議論を行った。国が示す基準を参考に、地域で位置づける一般外来とは別の「医療資源を重点的に活用する外来」(以下、医療資源重点外来)を設ける案に対し、委員から様々な意見が出た。
 同テーマを議論するのは3月18日の同検討会以来、半年以上ぶり。厚労省は、その時の資料を再整理し、今回提示した。医療機能の明確化については、入院医療が先行し、地域医療構想を推進するための病床機能報告制度や地域医療構想調整会議が設けられた。しかし、外来医療においても、人口減少や高齢化が進む中で、機能分化を図り、医療資源の効率的な配分を行うことが喫緊の課題となっている。
 また、今回の議論は、全世代型社会保障検討会議の昨年12月19日の中間報告により、紹介状なし外来受診時に義務づける定額負担の対象を、200床以上の一般病院にまで拡大することが明記されたことが背景にある。これを考慮すると、「医療資源重点外来」を備える病院に対して、定額負担が義務化される道筋が想定される。
 厚労省は、「医療資源重点外来」として、①医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来②高額等の医療機器・設備を必要とする外来③紹介患者に対する外来─をあげた。具体的な内容は今後さらに、専門的な検討を進める場において議論するとしている。
 ただ、試算においては、次のように具体的な内容を示している。
 試算では、「医療資源を重点的に活用する外来」とは、診療報酬の手術や麻酔、処置(DPC入院で出来高算定のもの)などを算定している場合。「高額等の医療機器・設備を必要とする外来」とは、外来化学療法加算や外来放射線治療加算、検査・画像診断・処置のうち地域包括診療料の包括範囲外とされているものなどを算定している場合。「紹介患者に対する外来」とは、診療情報提供料1を算定した30日以内に別の医療機関を受診した場合、当該「別の医療機関」の外来としている。
 右表に項目が整理されているが、3月18日の資料の「特定の領域に特化した知見を有する医師・医療人材を必要とする外来」からウイルス疾患指導料と難病外来指導管理料を削除し、「紹介患者に対する外来」としている。
 病院の外来について、これら3項目が該当する割合が「25%以上」である病院の割合をみると、特定機能病院は87%、地域医療支援病院は94%と大部分を占める。病床数では、500床以上の病院は78%だが、400 ~ 499床の病院は63%、300 ~ 399床の病院は55%、200 ~ 299床の病院は35%、100 ~ 199床の病院は20%と、下がっていく。

外来機能報告制度を創設
 地域の中で、「医療資源重点外来」を明確化するため、これらの外来機能を報告する外来機能報告制度を創設する。都道府県の外来医療計画でも活用し、各医療機関の自主的な取組みの進捗状況を共有し、地域での調整に用いる。
 「医療資源重点外来」を、地域で基幹的に明確化するため、外来機能報告制度により報告し、公表する。紹介患者に対する外来を基本とする医療機関であることが患者にわかるよう、広告可能とする。ただし、国の基準だけで報告対象の医療機関に決められることがないよう、地域の協議の場で確認する仕組みとする。
 また、地域医療構想が進まない場合の都道府県知事による権限を、外来機能の明確化に関しても、設けることも論点として提示した。

報告に診療所を含めるかで賛否
 これらの厚労省案に対し、委員からは様々な意見が出た。
 日本医師会の城守国斗委員は、「全世代型社会保障検討会議が結論を出す年内を考えると、かかりつけ機能を含む外来機能の本質的な議論を行う時間はない。大病院の外来の負担を軽減させるという目的を考えれば、報告制度の対象は病院・有床診療所だけにすべき」と主張した。
 一方、日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、「『医療資源重点外来』に該当する病院は25%であるのに対し無床診療所は5%だが、病院8,300施設に対し無床診療所は9万6千施設であり、数ではかなり違う。無床診療所を対象にすることも検討すべき」と提案した。
 全日病副会長の織田正道委員は、「必要な外来機能は地域により異なるので、データで厳格に『医療資源重点外来』の基準を設定するよりも、手上げ方式で柔軟に対応した方がよい」と述べた。また、「診療科により病院の外来機能は異なる」と、病院として位置づけることの難しさを指摘した。
 さらに、「『医療資源重点外来』の機能は、地域医療支援病院の機能と似ている。地域医療支援病院の再検討が必要ではないか」と問題提起した。

 

全日病ニュース2020年11月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
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  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年4月1日号)

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  • [4] 2012年4月1日号

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  • [5] NEWS 8/1

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2011/110801.pdf

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    難しいといわれる。 ○BCPについて ... 長を務めた遠藤久夫氏(学習院大学教. 授
    )を部会長 ...

  • [6] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年2月1日号)

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