全日病ニュース

感染拡大時の連携などが構想の新たな課題に

【地域医療構想WG】新型コロナ患者受入れ病院からヒアリング

　厚生労働省の地域医療構想に関するワーキンググループ（尾形裕也座長）が11月５日にオンラインで開催された。地域医療構想でも、新型コロナのような感染症拡大時への対応を想定する議論が求められている。一方、人口構造の変化を見据えると、2025年へ向けた工程も明確化する必要がある。
　同ワーキンググループは、他の審議会等の議論との整合性を図りつつ、進め方のスピード感では温度差があるものの、議論を着実に進めるとの認識を確認した。感染拡大時には、通常医療が制限されるため、それを引き受ける病院同士の連携も課題に上った。
　はじめに、新型コロナ患者を受け入れた病院からヒアリングを行った。対象病院は、苫小牧市立病院（北海道）、雲南市立病院（島根県）、東京医科歯科大学病院（東京都）、平成立石病院（東京都）、済生会福岡総合病院（福岡県）。どの病院でも、感染拡大時は主にマンパワーを確保するため、病棟や病棟の一部を休止する対応を取ったことが示された。結果、通常の医療は縮小してしまう。
　東京医科歯科大学病院は、753床のうち、新型コロナ対応で52床を確保、82床を休止した。重症患者を多く受け入れ、通常医療は一部制限している。全日病会長の猪口雄二委員は、「いつまでも続けられないと思うが、どのように本来業務に戻すのか」と質問。若林健二病院長補佐は、「日々悩む。持続可能な体制を作ることが問われている」と述べ、答えは出ていないとした。
　平成立石病院は、「新型インフルのために整備した感染症病床があり、運よくそれを活用することができた」（大澤秀一院長）。ただ、感染拡大時には、同フロアの別の病床も使い、専用病棟とし、延べ247人の新型コロナ患者を受け入れた。民間病院であるため、経営的に通常医療は続ける必要があった。それでも、感染症対策を徹底することで、１人の院内感染者も出さず、対応を続けることができているという。
　全日病副会長の織田正道委員は、ヒアリング結果を地域医療構想に関連させて発言。「特に、重症者の新型コロナ患者の受入れで、病床を休止せざるを得ない。通常医療が制限される分は、地域の別の医療機関が引き受ける役割分担が必要で、地域医療構想調整会議などを活用した連携が求められる」と指摘した。また、診療報酬でも評価がある多職種による感染防止対策チームなどで、連携を進めることを提案した。
　厚労省は、一般医療に影響を与える感染症を、「国民の生命・健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症（感染症法上の新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症など）の全国的なまん延等であって、医療提供体制に重大な影響が及ぶ事態」と定義したと説明。これを踏まえ、地域医療構想の進め方を同ワーキンググループで議論する必要があると説明した。
　同日の議論は、「医療計画の見直し等に関する検討会」に報告される。その後、地域医療構想自体の見直しを含め、2025年に向けた工程や、診療実績の乏しい公立・公的病院の再編統合を視野に入れた検証期限の再設定などを、同ワーキンググループで議論し、一定の考えをまとめる予定だ。