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ホーム全日病ニュース(2020年)第975回/2020年11月15日号医療計画に感染症拡大時への対応を記載へ

医療計画に感染症拡大時への対応を記載へ

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【社保審・医療部会】地域医療構想の議論の先送りでは賛否

 社会保障審議会・医療部会(永井良三分科会長)が11月5日にオンラインで開催された。都道府県が策定する医療計画の記載事項に、「新興感染症法等の感染拡大時における医療」を追加する方向性を了承した。また、新型コロナが収束していない段階で、地域医療構想をどう進めるかをめぐっても意見を交わしたが、意見が分かれた。
 10月21日の厚生科学審議会・感染症部会で、新興感染症等の拡大感染時における医療提供体制が議論された。新型コロナのような新興感染症は、感染拡大時に、広く一般の医療提供体制に大きな影響を与えることがわかった。このため、感染症法で定める予防計画と医療計画の整合性を図りつつ、医療計画に新興感染症等への対応を加えることを厚生労働省が提案。感染症部会では了承され、医療部会に投げられる形となった。
 想定される記載事項のイメージでは、「平時からの取組み」として、◇感染症指定医療機関(感染症病床)等の整備◇感染防護具等の備蓄◇感染管理の専門人材の育成◇院内感染対策の徹底◇PCR検査等病原体検査の体制整備─が例示された。
 「感染拡大時の取組み」としては、◇一般病床等での感染症患者の受入れ体制の確保◇臨時の増床、臨時の医療施設や宿泊療養施設の開設◇感染拡大時の人材確保の取組みがあがった。
 なお、整合性を図ることになる予防計画の基本方針の見直しは、新型コロナの「事態が収束した段階」で対策の評価とあわせ、検討を行う予定だ。
 委員からは、特に異論はなく、了承された。ただ、全日病副会長の神野正博委員は、「地域医療構想とも関連するが、感染症拡大時に備え、余力のあるベッド・人材・資材を、国としてどう確保し、医療機関に提供するかの検討を行うべきだ」と求めた。
 地域医療構想をめぐっては、公立・公的病院の再編統合の議論を先送りすべきとの意見が目立った。鳥取県知事の平井伸治委員は、全国知事会の考えとして、「今は新型コロナと戦うことが最優先だ。いったん先送りし、時期をみて、実りのある議論を行う方がよい」と述べた。全国市長会や全国町村会の委員も同様の意見を述べた。
 一方、健康保険組合連合会常務理事の河本滋史委員は「人口構造が変化することが変わらない中で、地域が抱える問題はより深刻になる。限られた医療資源を有効に活用するため、地域医療構想の議論は粛々と進めるべき」と主張した。日本経済団体連合会の委員も同様の意見を述べた。
 神野委員は、「このような『有事』において、立ち止まって考えるとの判断は英断と理解する。しかし、地域の人口減少は進む。『有事』と『平時』の対応の整理が求められるが、感染拡大時に必要となる余力のあるベッド・人材・資材を『平時』の地域医療構想の枠組みで確保するなら、診療報酬でもその費用を手当てしなければならない。私は、『有事』のために余力を残す対応は、別の対応として、整理すべきものであると考える」と述べた。

外来機能の報告に診療所を含めるか
 外来医療の明確化については、「医療資源を重点的に活用する外来」の基準を設定し、外来機能報告制度により把握し、地域の協議により、医療機関として位置づける仕組みが議論されている。これに対して、報告対象で病院・有床診療所に、無床診療所を加えるかで、賛否があった。神野委員は、「国民目線で外来機能を明確化する上で、一部の病院だけの機能を位置づけるのは、いかがなものか。すべての医療機関が報告するのが筋ではないか」と述べた。

 

全日病ニュース2020年11月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年6月1日号) - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200601.pdf

    2020年6月1日 ... 保障費の増加を抑制しようした流れで. 余力が無くなっていた。平時の対応に.
    ぎりぎりで、非常時に対応する能力が. 低下していた。 ... 余力も必要であり、
    BCP策定、オン ... 福祉部局の防護具の備蓄が十分でない. 都道府県が ...

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