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ホーム全日病ニュース(2020年)第977回/2020年12月15日号救命救急センターの充実段階評価に配慮することで一致

救命救急センターの充実段階評価に配慮することで一致

救命救急センターの充実段階評価に配慮することで一致

【厚労省・救急災害あり方検討会】コロナで実績が維持できない病院への対応

 厚生労働省の救急・災害医療提供体制等のあり方に関する検討会(遠藤久夫座長)は12月4日、救命救急センターが多くのコロナ患者を受入れていることを踏まえ、救命救急センターの補助金の水準や診療報酬の算定で使われている充実段階評価において、配慮を行う考えで一致した。
 救急搬送の件数がコロナの影響で減少している。東京都の場合、消防庁の出場件数は対前年比で4月が75.9%、5月が77.1%、6月が85.2%、搬送人員は4月が72.5%、5月が74.7%、6月が82.9%。全日病、日本病院会、日本医療法人協会の3団体の病院経営調査(1,235病院)でも、救急患者受入件数は4月が66.3%、5月が66.9%、6月が76.2%と、3割を超える落ち込みがあった。
 一方、救命救急センターはコロナ患者を多く受け入れている。救命救急センターの92%がコロナ受入医療機関となっており、86%が受入実績のある医療機関である。
 また、人口100万人以上と人口10万人未満のいずれにおいても、救急車の受入台数が多く、救急の活動度が高いほど、コロナ患者受入医療機関の割合が増加する傾向がみられた。200床未満、200床以上400床未満のいずれの病床規模においても、同様の傾向が確認されている。さらに、救急者の受入台数が多く、救急の活動度が高いほど、人工呼吸またはECMO(人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療)を使用したコロナ患者を受け入れている。
 通常の救急患者が減少し、コロナ患者を受け入れている状況は、救命救急センターの救急診療体制や患者受入実績などを評価する充実段階評価にマイナスの影響をもたらす。充実段階評価は、救命救急センター運営事業費の補助額や診療報酬の救命救急入院料加算の施設基準に使用されており、放置すれば、救命救急センターの運営に支障が生じるおそれがある。
 日本救急医学会は11月9日、コロナ対応のため、「診療体制の変更や機能・研修体制の制限、受入患者数の変動などが生じている。段階的な充実度の改善について、本年中の評価については格別な配慮」を実施することを要望している。委員からも、「救命救急センターのモチベーションを下げてはいけない」(長島公之委員・日本医師会常任理事)といった意見が相次いだ。
 厚労省は、「例年と同様の評価は困難」とした上で、充実段階評価への影響の実態把握を行い、影響を受ける項目があった場合、その項目を除外して評価することなどを提案した。委員からは複数の賛同する意見が出たが、2020年度の点数は2019年度と同じ点数で評価すべきとの提案もあった。
 診療報酬における充実段階評価では、1月の実績を来年度の評価に反映させる。厚労省は次回の検討会で具体案を示し、配慮措置を決める意向だ。
 また、二次救急医療施設でコロナ患者を受け入れた医療機関が31%にとどまっていることに対し、日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、「特に都市部では、二次救急が一般の医療を担い、救急救命センターがコロナ対応を行う役割分担を図ったことにより、医療崩壊が起きなかった」と強調した。

感染症対応の医療支援チームが必要
 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の地域支援班DMATの活動状況が報告された。DMAT事務局員19名が厚労省参与となり、4月15日~ 10月30日の間、約1,500人がクラスター発生病院の情報収集や地域派遣班の派遣調整などを行っている。
 「感染制御の体制が十分でない病院や施設が最もリスクの高い集団であるが、災害医療の考え方を用いた適時・適切な支援を行うことで、コロナの過剰死亡を抑えられる可能性があることを示唆した」と報告した。
 具体的な評価点では、◇支援が遅れ、死亡者が多い病院や施設では、体制が確立する前に多くの死亡が出ており、適切な医療・介護が受けられなかったことによる全身状態悪化の可能性が考えられた◇早期支援を行うと施設に戻るまでの日数が短縮されるなど、早期に病院・施設を立て直すことが可能である─などを指摘した。
 全日病常任理事の猪口正孝委員は、東京都で感染拡大が発生し、地域支援班DMATの支援を得つつ、感染症対策の専門家を集めた東京iCDCの設置やコロナ感染症専用病院の設立などを踏まえ、「DMATは今回機動的な対応を行い、その機能を果たしていると思うが、元々、災害対応を目的に設置された医療支援チームである。今後は感染症対策専門の医療支援チームを設けることを含め、総合的な感染症対策のため、両者をうまく使っていくことが必要になる」と述べた。

有事に際に病院船をどう活用するか
 病院船の検討状況も示された。病院船とは、「災害時多目的船のうち、災害時等において船内で医療行為を行うことを主要な機能とする船舶」。東日本大震災を機に検討が始まったが、建造に莫大な費用がかかることや、平時の活用性の低さが課題となった。コロナの感染拡大により、再び注目され、厚労省は補正予算に検討の予算を計上している。
 ただ、これまでの検討において、用途や課題について様々な指摘がある。猪口委員も、「反対するわけではないが、コロナのような感染症対応としては、莫大な費用をかけて海上に病院船を浮かべるよりも、陸上にある、普段は稼働していない遊休施設を用意しておくほうが、効率的なのではないか」と問いかけた。他の委員からも、病院船は地震や津波で病院など社会インフラが破壊された場合に、有用なものとの指摘があった。
 また、加納委員が全日病常任理事として、2019年度のAMAT 活動報告を行った(下表参照)。

 

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