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ホーム全日病ニュース(2020年)第977回/2020年12月15日号地域医療構想の病床必要量は現状どおり

地域医療構想の病床必要量は現状どおり

地域医療構想の病床必要量は現状どおり

【厚労省・地域医療構想WG】感染拡大時のための病床確保は負担が大きい

 厚生労働省の地域医療構想に関するワーキンググループ(尾形裕也座長)は11月25日、コロナなど新興感染症等への備えは医療計画などで対応しつつ、人口減少・高齢化を踏まえ、地域医療構想は着実に進めるとの方針を確認した。将来の人口動態を踏まえた病床必要量の推計も現状どおりとする。
 コロナのような「新興感染症等の感染拡大時における医療」は医療計画の5事業の記載事項に追加し、対応できるようにする方向で議論が進んでいる。平時の負担を最小限にしながら、有事に機動的かつ効率的な体制を整えられるよう準備する考えだ。
 一方で、地域医療構想の背景となっている人口減少・高齢化の中長期的な状況や見通しは変わっていない。厚労省は、地域医療構想の医療需要・病床必要量の推計を超えて、新興感染症等の感染拡大に備え、一定数の稼働病床を確保し続ける場合、その維持には追加的な負担が病院にかかり続けることになると指摘した。
 このため、地域医療構想の基本的な枠組み(病床必要量の推計・考え方など)は維持しつつ、引続き着実に地域医療構想の取組みを進めていくことを提案した。
 再びコロナの感染拡大が起きている状況で、いま地域医療構想をどの程度の速さで進めなければいけないかの認識では、委員間で温度差があったものの、基本的な考え方では了解が得られた。

基幹病院新設ではない再編統合を
 全日病会長の猪口雄二委員はまず、「コロナの重症者が増えて、重点医療機関のICUも埋まりつつある状況だ。感染拡大がこれ以上になれば、一般医療の制限が出てくる。重症者を受けきれなくなったときに、どこが医療提供体制をコントロールすることになるのか。そのような想定を行って、スピード感をもって対応しなければ大変なことになる」と現状に対する危機感を表明した。
 その上で、地域医療構想における公立病院の再編統合で、複数の病院が病床をほとんど減らさずに、基幹病院を新設する事例が出ていることを指摘。「地域の医療提供体制の中で、その病院がどのような機能を果たすべきであるのかをきちんと議論してから、再編統合の形を決めるべきだ」と述べた。
 全日病副会長の織田正道委員も、「大病院を再編統合し、箱ものを新築するのではなく、まずはダウンサイジングを検討すべき」と主張した。また、「ダウンサイジングした既存施設は、有事の際の新興感染症等の感染拡大時のバッファーに用いればよいのではないか」と提案した。前回のコロナ対応のヒアリングで、コロナ対応を公立病院が担い、一般医療が制限された分は近隣の民間病院が担った苫小牧市立病院を事例に引き合いに、「今後のモデルとして考えることができる」と述べた。

構想推進のため国が4つの支援
 地域医療構想を着実に進めていくため、厚労省は今後、「公立・公的医療機関等において、具体的対応方針の再検証等を踏まえ、着実に議論・取組みを実施するとともに、民間医療機関においても、改めて対応方針の策定を進め、地域医療構想の議論を活性化させる」との方針を示した。
 国の支援としては、①データ・知見等を提供②「重点支援区域」を選定し、積極的に支援③「病床機能再編支援制度」の法改正を行い、引き続き病床機能の再編を支援④税制優遇措置の創設─を実施する。
 具体的にみていくと、国が準備するデータ・知見等は地域医療構想調整会議に提供し、議論の活性化を促す。「重点支援区域」はこれまで2回の選定が行われており、現在検討中の区域があるという。「病床機能再編支援制度」は今年度に導入されたもの。いわゆる病床買取り制度だが、来年度から消費税という安定財源を確保し、持続的な制度とする。税制優遇措置については、医療機関の再編統合で、民間医療機関が資産等を取得した場合に、公立病院と同様に税制が優遇されるようにするもので、厚労省は概算要求時に財務省に税制改正要望として提出している。
 地域医療構想は2025年の人口減少・超高齢社会を想定し、制度設計された。2025年まで残すところ5年を切っており、期間を意識して取り組む必要性が指摘された。コロナという状況下でも、その状況を見極め具体的な工程を進めるべきであることを、厚労省は強調している。

 

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    2011年3月31日 ... 全日本病院協会の役割は、平時にあってもいかなる非常時にあっても、国民の
    求めに. 応える医療の ... そしてその活動を会報で各地の小グループに知らせてい
    たことも昭和37年の. 事業報告で ... なおICU、CCUまたは術後等においては、施.
    設措置をも ... るワーキングチームや日本医師会などへ提出した。

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