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ホーム全日病ニュース(2020年)第977回/2020年12月15日号医療資源重点外来を制度化する報告書を了承

医療資源重点外来を制度化する報告書を了承

医療資源重点外来を制度化する報告書を了承

【厚労省・医療計画見直し等検討会】あくまで病院の手上げにより地域で明確化

 厚生労働省の医療計画の見直し等に関する検討会(遠藤久夫座長)は12月3日、「外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能等に関する報告書」を了承した。外来機能報告制度を創設し、病院・有床診療所からデータを集め、「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)(以下、医療資源重点外来)を位置付ける。そのような外来を地域で基幹的に担う病院を明確化する。
 その病院は、紹介状なしの受診患者に定額負担を課すことが義務化される。このため、定額負担の義務化は、あくまで病院の「手上げ」であることを確認した。現段階では、病院が率先して医療資源重点外来を担うインセンティブが小さいため、今後、診療報酬を含め、外来機能を明確化するための制度設計が具体化されていく見込みだ。

誤解を与える名称つけてはいけない
 紹介状なし外来受診で定額負担を課す病院を拡大することが、全世代型社会保障検討会議の中間報告に盛り込まれ、その検討については、課題ごとに厚労省の審議会等が分担した。
 医療保険制度上の課題は社会保障審議会・医療保険部会、選定療養などの具体的な負担額や要件は中央社会保険医療協議会となった。同検討会は、外来医療の明確化やかかりつけ医機能の強化を検討課題とした。コロナの影響で議論が一時ストップしていたが、2月以降、6回の議論を行い、今回その結果を報告書にまとめた。
 報告書では、人口減少・高齢化により、都市部では外来需要が大きく増加する一方、多くの地域では外来需要は減少する。限られた医療資源をより効果的・効率的に活用するため、外来機能についても分化・連携を図る必要があると指摘している。その場合に、外来機能は多様だが、データを含めこれまで議論の蓄積がない。まずはデータの蓄積・分析を行い、外来機能全体のあるべき姿を明らかにすることの重要性を、報告書は強調している。
 そのため、医療資源重点外来を明確化することに着目した。病院・有床診療所は、医療資源重点外来に関する医療機能を都道府県に報告。その報告を踏まえ、地域における協議の場において、各医療機関の自主的な取組みの進捗状況を共有し、必要な調整を行う仕組みの創設だ。
 医療資源重点外来の基準は、◇医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来◇高額等の医療機器・設備を必要とする外来◇特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)─により設定する。具体的な内容は、「専門的に検討を進める場」で協議する。
 これに関して、日本医師会常任理事の城守国斗委員が、「コロナの感染拡大では、当初PCR検査が制限された中で、CT検査がコロナ患者の発見に寄与した。今回の外来機能の明確化がCT装置の台数に地域で制限をかけるようなことにつながってはならない」と主張した。厚労省は、「現時点でCT装置の保有制限につながる方向性は含まれていない」と回答した。
 なお、これまでの議論で参考とされた医療資源重点外来の試算の前提となる「高額等の医療機器・設備を必要とする外来」の項目では、Dコード(検査)・E コード(画像診断)・J コード(処置)のうち、地域包括診療料で包括範囲外とされているもの(脳誘発電位検査、CT撮影等の550点以上)を用いており、CT検査は重点的な医療資源に含まれている。
 また、医療資源重点外来は現時点で仮称だが、「紹介状の必要な外来や紹介を基本とする外来」を提案する意見があった。また、高度で優れた外来をイメージさせる呼称にすると、政策目標とは逆に、初診患者を誘導してしまうおそれがあるため、慎重な検討が必要との意見が相次いだ。
 外来機能報告制度では、地域医療構想の病床機能報告と同様に、国がNDB(ナショナル・データベース)などのデータを医療機関に提供し、医療機関は病床機能報告と一体的に、外来の実施状況を都道府県に報告する。将来的には、全国統一システムを完成させた医療機能情報提供制度のデータ活用も検討する。
 外来機能報告を行う医療機関は、病院・有床診療所とし、無床診療所は除いた。無床診療所は任意で外来機能を都道府県に報告することができる。

都道府県知事の権限も設ける
 医療資源重点外来を地域で基幹的に担う病院を明確化する仕組みを構築するに当たっては、国がそのような外来の需要を参考値として示し、その参考値に該当する病院を地域の協議の場で議論し、決めることになる。
 その際に、入院と外来を一体的に議論する観点から、地域医療構想調整会議を活用することが提案された。また、紹介患者への外来が基本であることが患者にわかるよう、広告可能とする方向だ。
 また、病院では診療科ごとに地域における外来の機能は異なることから、今後、専門的な検討の場で協議する。
 都道府県知事に持たせる権限も、病床機能報告制度と同様に検討する。具体的には、「対象医療機関が外来機能報告をせず、または虚偽の報告をした場合は報告徴収または報告是正の命令ができ、これに医療機関が従わない場合はその旨を公表することができる」ことを報告書に明記した。
 医療資源重点外来は、紹介患者を基本とすることから、地域医療支援病院の機能と重なる部分が大きく、違いがわかりにくいとの指摘がある。報告書では、今後、専門的な検討を進める場で、特定機能病院や地域医療支援病院以外であっても、紹介患者を基本とする医療機関を、地域の基幹的な医療機関として明確化すると整理している。

かかりつけ医機能は今後の課題
 報告書における、かかりつけ医機能の強化については、外来機能の明確化の文言よりも抽象的なものにとどまった。基本的な考え方は、2013年の日本医師会・四病院団体協議会の合同提言に示されているが、制度的な位置づけに結び付く整理とはなっていない。
 検討会においては、特に日本医師会の委員が、「年内に結論を得るには、かかりつけ医機能の本質的な議論を行う時間的余裕はない。まずは、定額負担が義務化される病院を拡大する上で、その対象となる病院の外来機能を明確化する議論に集中せざるを得ない」といった意見を主張したことが背景にある。
 その結果、かかりつけ医機能については、「かかりつけ医機能を発揮している事例等を調査・研究し、かかりつけ医機能に係る好事例の横展開を図る」ことや、国民・患者がかかりつけ医機能を担う医療機関を探せるように、医療機能情報提供制度の周知に取り組むことなどを報告書に盛り込んだ。

 

全日病ニュース2020年12月15日号 HTML版

 

 

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  • [6] 2020.12.1 No.976

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