全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2020年)第977回/2020年12月15日号2020年薬価調査の市場実勢価格との乖離率は8.0%

2020年薬価調査の市場実勢価格との乖離率は8.0%

2020年薬価調査の市場実勢価格との乖離率は8.0%

【中医協・薬価専門部会】回収率86.8%、妥結率は95.0%で従前と同水準

 厚生労働省は12月2日の中医協・薬価専門部会(中村洋部会長)に2020年薬価調査の速報値の結果を報告した。薬価と市場実勢価格との平均乖離率は8.0%で、消費税増税時の改定で用いた2018年調査(中間年)の7.2%より大きく、2020年度改定で用いた2019年調査と同じだった。
 2016年12月20日の四大臣合意で、「市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、全品を対象に毎年薬価調査を行い、その結果に基づき薬価改定を行う。現在2年に1回行われている薬価調査に加え、その間の年も、大手事業者等を対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」ことが決まった。
 前回の中間年は2019年度だが、消費税10%への引上げに伴う控除対象外消費税問題などへの対応で改定が2019年10月にあったため、中間年改定は今回が初めてとなる。しかし、新型コロナの感染拡大が生じ、薬価改定の是非は新型コロナの影響も勘案し、「十分に検討し、決定する」(骨太方針2020)となった。ただし、薬価調査は予定どおり実施することになった。
 10月26日、菅総理は所信表明で、「各制度の非効率や不公平を正していく」との文脈で、「毎年薬価改定の実現に取り組む」と発言。11月25日の財務省の財政制度等審議会の建議では、「全品改定を実施すべき」と踏み込んだ。医薬品の市場実勢価格の加重平均値に2%の上乗せを行っている調整幅の見直しにも言及した。薬価改定の是非は予算編成過程で決定されるが、関係業界とのヒアリングとあわせ、薬価専門部会で、実施する場合の方法を引き続き議論していく模様だ。
 今回の調査では、通常は全数を対象としている卸売販売業者について、3分の2の抽出調査とした。購入サイドでは、病院は40分の1、診療所は400分の1、薬局は120分の1とし、9月分の取引状況を調べ、集計した。
 新型コロナにより現場からは、通常取引が行われていないとの悲鳴が上がる。調査方法でも配慮が行われたが、今回の調査結果に対しては、薬価改定を行うとしても、薬価調査が取引価格をきちんと把握しているかをまずは確認する必要があった。
 結果をみると、平均乖離率は8.0%だった。回収率は86.8%(4,259客体)で、2015年、2017年、2018年の調査より高かった。妥結率(薬価ベース)は95.0%で、これまでの薬価調査と比べ特に低いということはなく、2018年の91.7%より高い(左表参照)。
 支払側の協会けんぽ理事の吉森俊和委員は、「例年と状況は異なるが、外形的には例年並みで特に注目すべき数字は見たらない。薬価改定は可能だ」と述べた。健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員も「例年と遜色ない数字」と指摘。薬価改定の範囲を議論できる資料の提示を厚労省に要請した。
 これに対し診療側の委員は、「新型コロナの影響は外形的な数字のみに現れるわけではない。薬価改定による国民負担の軽減も大事だが、医療崩壊を起こさせないことを優先させるべき。医療機関の経営への影響も大きい」(松本吉郎委員・日医常任理事)と訴えた。
 また、医薬品卸売業の村井泰介専門委員は、医薬品卸の経営悪化の要因として、◇受診抑制と手術件数の減少などによる市場縮小◇累次の薬価改定による薬価引下げ◇感染拡大防止のため、価格交渉など接触回数の大幅な減少─などを指摘。特に、「価格交渉のプロセスが今回は全く違った」と強調した。
 薬価改定の範囲や方法では、支払側の吉森委員が「乖離の『率』だけでなく、『額』にも着目すべき」と提案。診療側の松本委員はそれに反対した。四大臣合意では「価格乖離が大きな品目」と明記しており、その点を明確にしていない。『乖離率』に着目すれば、後発医薬品や長期収載品が中心になるが、『乖離額』に着目すれば、薬価の水準が高いため乖離率としては相対的に小さくなりがちな先発医薬品も幅広く対象に含まれることになる。
 2021年(中間年)薬価改定に向けて今後中医協でどのような議論が行われるのか注視が必要となる。

 

全日病ニュース2020年12月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2009年12月15日号 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2009/091215.pdf

    薬価の見直し」は「中医協での検討が必. 要」として保留。 ... 成の基本方針や
    予算建議にマイナス改. 定を明記することを ... 1割の範囲で基準を超過した期間が
    5ヵ月であるが、その間従前の入院基本料が算定できる。 6月目に新たな入院料を
     ...

  • [2] 第6章 激動期に立ち向かう全日病

    https://www.ajha.or.jp/about_us/50years/pdf/50years_06.pdf

    の確立、②薬価差益に頼らずとも安定した経営が. 営める診療 ... 建議書は病院類.
    型化を進め患者の流れを誘導していくとした。 全日病では、診療報酬委員会を
    中心に、建議書. の矛盾点を ... 員長)は、平成10年度税制改正に向けて従前の全.

  • [3] Untitled - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/about_us/50years/pdf/50years.pdf

    2011年3月31日 ... いたが、病院給食は入院医療において、薬価治療、手. 術的治療等と同等の比重 ...
    その後、1月13日の中医協の建議に対し、武見日. 医会長、東畑中医 ... 員長)は
    、平成10年度税制改正に向けて従前の全. ○ 健保法9月改正に ...

  • [4] 2007年6月15日号 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2007/070615.pdf

    2020年9月21日 ... 予算への建議 (財政制度等審議会)や「基 課長、自民党厚生関係幹部、日本医師会
    ... さらに、疾病構造が変化し慢性疾患や 急性期病院は、従前とおりに救急医 役割
    だけではなく、とくに在宅医療を ... ユニット単位で新設するこ 6歳未満の小児を
    診療した場合、当番日 医薬品が薬価収載された際には、速やか.

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。