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ホーム全日病ニュース(2021年)第981回/2021年3月1日号病院の医業利益率は1~3ポイント悪化

病院の医業利益率は1~3ポイント悪化

病院の医業利益率は1~3ポイント悪化

【3病院団体】第3四半期の病院経営状況調査の結果を記者発表

 全日病、日本病院会、日本医療法人協会の3団体は2月16日、新型コロナの感染拡大の影響を把握するための2020年度第3四半期の病院経営状況調査の結果を記者発表した。第3四半期においても病院の外来・入院患者の減少は続いており、病床利用率も前年同期で3ポイント以上の減少が確認された。医業利益率も1~3ポイントの悪化だ。新型コロナ第三波の到来で第4四半期のさらなる悪化が避けられない見通しだが、政府の緊急包括支援交付金は、各都道府県で給付にばらつきがあり、全国平均で申請に対し約6割の入金しかなく、病院経営の改善のために早急な対応が望まれる。
 全日病の神野正博副会長は会見で、「新型コロナの影響による病院経営の悪化が改善していない。この間、医療従事者はエッセンシャルワーカーとして働き、ずっと緊張状態の中にある。新型コロナ患者を増やさない取組みを続け、重症者を減らし、医療従事者の負担軽減につなげてほしい」と訴えた。
 3団体に加入する4,410病院に調査を依頼。回答は1,481病院、有効回答は1,475病院(有効回答率33.4%)。1,475病院のうち、新型コロナの重点医療機関は385病院、協力医療機関は411病院、診療・検査医療機関は748病院(下表参照)。新型コロナ患者を受け入れた病院は10月で29.6%、11月で35.6%、12月で40.2%。一時的外来・病棟閉鎖があった病院は10月で7.6%、11月で10.0%、12月で13.3%となっている。
 赤字病院と黒字病院の割合を2019年と2020年で比較すると、2019年10月は全病院で赤字病院の割合が30.1%、2020年10月は31.8%で大差ない。しかし2019年11月の32.8%に対し2020年11月は46.2%、2019年12月の63.7%に対し2020年12月は65.8%と、再び悪化の兆しが出始めた。なお、12月は賞与が費用の人件費に入るため、赤字病院が増える傾向にある。
 外来・入院患者、手術等をみても、新型コロナの影響が続いていることがわかる。特に11月が顕著で、1病院当たり月平均の外来患者数は2019年の9,195人に対し2020年は8,285人、入院患者延数は2019年の6,805人に対し2020年は6,368人、手術件数(手術室)は2019年の196件に対し2020年は183件に減った。一方、緊急手術は2019年の31件に対し2020年も30件で同水準を維持した。救急患者受入れ件数は2019年の459件に対し2020年は385件に減った。
 神野副会長は会見で、「患者の受診抑制が続き、手術や検査など通常医療が減少していることは、病院の収入減の要因でもあるが、住民にとって病気が進行するリスクが増加することにもなっている」と指摘した。
 病院の経営指標も11月の対前年比での悪化が目立つ。コロナ患者受入れ病院(513病院)の医業利益率は2019年の3.8%に対し2020年は0.4%で、3.4ポイントの悪化だ。費用はあまり変わらず、収益減の影響が大きい。収益全体では3.6%減、健診・人間ドック等収入は7.2%減、室料差額・その他医業収入は4.5%減である。2020年12月の医業利益率は▲20.2%と二桁の赤字だが、前年同期比では2.2ポイントの悪化だ(下図参照)。
 コロナ患者の入院を受け入れていな病院の医業収益率も2019年11月の4.6%に対し2020年11月は1.7%で2.9ポイントの悪化だ。一時的外来・病棟閉鎖のあった病院の医業収益率は2019年11月の3.5 % に対し2020年11月は▲3.5%で7ポイントの悪化。2020年12月の医業利益率は▲27.8%に及び、対前年同期比では6.4ポイントの悪化となっている。
 冬季賞与については、1,475病院のうち減額支給した病院が38.1%あった。新型コロナ患者を受け入れた病院(614病院)で43.3%、一時的外来・病棟閉鎖のあった病院(219病院)で41.6%。
 政府の第一次補正予算、第二次補正予算、予備費による緊急包括支援交付金など支援の申請に対する入金率は、全体で59.7%。1,334病院の申請額5,568億円に対し入金額は3,326億円となっている。ただ、都道府県によるばらつきも大きい。最も高いのは東京都の87.8%だが、最も低い徳島県は24.4%。一方、都道府県独自支援策は417病院を対象に、申請額174億円に対し入金額は136億円で入金率は78.2%。
 4月から12月の経営指標もまとめた。9カ月間のデータがある病院(911病院)の医業利益率は、2019年の▲1.0%に対し2020年は▲5.6%で4.6ポイントの悪化。うち新型コロナ患者を受け入れた病院(498病院)は2019年の▲1.3%に対し2020年は▲6.5%で5.1ポイントの悪化、コロナ患者を受け入れていない病院(413病院)は2019年の0.6%に対し2020年は▲1.5%で2.1ポイントの悪化。これに支援金を加味すると、全体で1.1ポイント、コロナ患者受入れ病院で1.0ポイント、受入れなし病院で1.4ポイントまでマイナス幅は縮小した。
 これらの結果を踏まえ、全日病の津留英智常任理事は同会見にて、「いま新型コロナ患者は減少傾向にあるが、病院・介護施設でのクラスター発生が増えているのを大変心配している。ワクチン接種体制を含め行政も病院も手一杯の状況だが、1、2月での悪化が懸念される次の四半期の状況を踏まえ、適切な支援を行ってほしい」と求めた。

 

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