全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2021年)第988回/2021年6月15日号入院医療と居宅介護の情報共有で調査研究

入院医療と居宅介護の情報共有で調査研究

入院医療と居宅介護の情報共有で調査研究

【高齢者医療介護委員会】市町村間・地域間で統一性のあるルールづくりを提言

 「早期地域療養移行支援パス作成に関する調査研究」の報告書が、高齢者医療介護委員会でこのほどまとまった。要支援・要介護状態にある高齢者の入退院時における情報共有の課題について市区町村と医療・介護サービス提供側の両面から実態を調査した。医療機関の所在地と患者住所地とが異なるなど、地域をまたぐ入退院が多い実態を踏まえ、入院医療・居宅介護間の連携や情報共有のルールは、異なる市町村間・地域間で一定程度の統一性をもたせることが望ましいと提言している。
 地域包括ケアシステムを構築するにあたり、「退院可能な入院患者の退院・地域移行」が円滑に進むことがカギとなっている。一方、退院や地域移行は、単に早期に実施されればよいというものではなく、退院後に介護や生活支援を必要とする患者は必要なサービスの選択・利用が可能となる必要がある。特に退院後も医療的なケアや管理が必要な患者は、医学上の留意事項が介護等のサービス提供者に確実に伝達されることが必要で、医療・介護関係者の適切な情報共有が求められる。
 調査研究では、「入院医療と居宅介護との間の情報共有」を対象として、入退院の両時点における、「情報共有シートや地域連携パスの活用の状況」「入退院支援における情報共有シートや地域連携パスの活用のルール化の状況」「情報共有シートや地域連携パスの活用にあたっての課題」等について、「市区町村の取組」と「ルールやパス等を運用する医療・介護側の活用実態」の両面から把握・整理を行った。
 そのうえで、抽出された課題をもとに、「情報共有シートや地域連携パスを用いて伝達する情報内容」や「情報共有シートや地域連携パスの伝達時期・伝達先」等の、あるべき姿について検討。入退院支援や地域移行プロセスの評価指標の構築や手順の標準化に資する知見を整理することを目的として実施した。
 調査研究に当たって、①在宅医療・介護連携事業の実施主体である「市区町村」、②退院時に患者の送り出し元となる「病院」、③退院後に居宅介護に移行する患者のサービスのコーディネートを中心的に担う「居宅介護支援事業所」の3つを対象に、アンケート調査やインタビュー調査を行った。
 主要な調査結果は、以下の通り。①アンケート調査において、「2020年9月の退院のうち、病院所在地と住所地とが同じ市区町村内である患者割合が7割程度未満」と回答した病院の病棟は41.3%にのぼる。退院調整にあたり病院とは異なる市区町村に帰る患者も多いため、市区町村ごとに入退院調整のルールが異なると、多くの病院が、複数ルールへの対応を求められるものと考えられる。②「入退院時の情報共有の進め方のルール化や情報提供様式の作成・公表を行っている市区町村」によるアンケート回答をみると、当該ルールや様式について、「市区町村内に広く普及しており、それを市区町村も把握している」旨の回答と、「普及状況を市区町村が把握していない」旨の回答とに二分された。また後者の回答数の方が多かった。③病院向けおよび居宅介護支援事業所向けのアンケート調査において、入院医療と居宅介護間の連携・情報共有のルールに対する考えを問うたところ、大半のルール内容について、「地域をこえて統一されたルールが望ましい」との回答が、「地域の個別事情に応じたルールが望ましい」との回答よりも多かった。④入院時における居宅介護側から入院医療側への情報提供の項目について、情報の受け手である病院の病棟にとって「特に重要」かつ「十分な情報が得られないケースが多い」項目のうち、「生活困窮の有無」「退院後の家屋希望」「退院後の本人希望」「家族との関係」等が抽出された。⑤退院時における入院医療側から居宅介護側への情報提供の項目について、情報の受け手である居宅介護支援事業所にとって「特に重要」かつ「十分な情報が得られないケースが多い」項目のうち、「傷病の見通し」「受診を勧める目安」「退院後に必要なリハビリテーション」等が抽出された。
 上記のうち、①や③を踏まえると、入院医療・居宅介護間の連携や情報共有にあたってのルールには、市区町村をまたぐ入退院の多さ等を踏まえ、異なる市区町村間や地域間であっても、一定程度の統一性をもたせることが望ましいと考えられる。
 地域の入退院支援ツールに関する評価指標を設定するに当たっては、◇ルールの普及や地域間の互換性が図られているか◇必要な情報の伝達がなされているか―の視点による評価が盛り込まれるべきである。

 

全日病ニュース2021年6月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 主張・提言 | 公益社団法人全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/voice/request.html

    全日病(公益社団法人全日本病院協会)の医療体制・病院運営・教育研修・最新
    医療行政に関する情報サイト。各情報を「全日病について」「主張・要望・調査
    報告」「教育研修」「病院支援事業」「全日病ニュース」「みんなの医療 ...

  • [2] 100519_2.pdf

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2010/100519_2.pdf

    2010年5月14日 ... 薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」が取りまとめ.
    られました。 この提言では、国や製薬企業等に対して様々な取組が述べられて
    いるほか、医療機. 関における安全対策についても盛り込まれてい ...

  • [3] 地域医療構想:みんなの医療ガイド | 公益社団法人全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/guide/28.html

    地域医療構想は、将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数(病床の必要
    量)を4つの医療機能ごとに推計した上で、地域の医療関係者の協議を通じて
    病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制を実現する取組みです。

  • [4] 四病協のうごき:お知らせ | 公益社団法人全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/topics/4byou/

    全日病(公益社団法人全日本病院協会)の医療体制・病院運営・教育研修・最新
    医療行政に関する情報サイト。各情報を「全日病について」「主張・要望・調査
    報告」「教育研修」「病院支援事業」「全日病ニュース」「みんなの医療 ...

  • [5] 四病協提言「地域医療・介護支援病院」:200床未満 地域包括ケア ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20131201/news01.html

    2013年12月1日 ... 四病協提言「地域医療・介護支援病院」:200床未満 地域包括ケアを支える多
    機能型病院・病棟を提言|第814回/2013年12月1日号 HTML版。21世紀の医療
    を考える「全日病ニュース」は、全日本病院協会が毎月1日と15日 ...

  • [6] 日本の医療・介護を考える ~(社)全日本病院協会の取組み

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/080329_iryou.pdf

    ただき,われわれ全日本病院協会(以下全日病)の取り組みを知っていただく
    ため. に本書を ... 合同調査などを行い,厚生労働省(厚労省)などに提言や要望
    などを行っています。 ... しかし,最新の科学的な知見に基づいて安全対策を行っ
    たと.

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。