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ホーム全日病ニュース第814回/2014年12月1日号四病協提言「地域医療・介護支援病院」

四病協提言「地域医療・介護支援病院」:200床未満 地域包括ケアを支える多機能型病院・病棟を提言

四病協提言「地域医療・介護支援病院」:200床未満 地域包括ケアを支える多機能型病院・病棟を提言

四病協提言「地域医療・介護支援病院」
200床未満
 地域包括ケアを支える多機能型病院・病棟を提言

高齢者救急、認知症対応、在宅支援、連携室必置など。急性期と回復期からなる病院類型

 四病院団体協議会は、高齢者の救急受入れ、在宅医療支援、医療・介護連携、ケアマネジメント支援の機能を持って地域包括ケアシステムを下支えする中小病院を「地域医療・介護支援病院」(仮称)として位置づける位置づける提言をまとめ、11月18日に公表した。
 提言は、高齢者に対する医療・介護の提供が深刻な課題となる2025年に向け、医療の提供と在宅復帰を担うとともに退院後の在宅療養を支え、さらに介護を後方支援する医療機関として、急性期と回復期の機能を併せ持つ“多機能病院”を地域包括ケアシステムの医療の側の中核に位置づけ、高度急性期から在宅・介護にいたる提供体制の連鎖の環とすべく、医療法等の法的枠組みと補助金そして診療報酬による評価を行なうべきであると進言している。(6面に提言の詳細)

6面に「改定項目の骨子」を掲載)

 

日医・四病協共同提言を踏まえ、医療機能を病院類型へと具現化

 「医療提供体制のあり方―地域包括ケアシステム構築に向けて」と題した提言を公表した記者会見には、四病協から、全日病の西澤会長と猪口副会長、日病の堺会長と相澤副会長、そして万代中医協委員(日病常任理事)が出席した。
 代表して、猪口副会長は、提言は「日医と四病協が8月にまとめた医療提供体制のあり方に関する合同提言の追加版である」と説明した。
 合同提言には、「地域包括ケアシステムの実現に向けて、在宅医療を含めた地域特性にあわせた柔軟な医療提供体制を構築する」と記されている。つまり、今回の提言は、「地域特性にあわせた柔軟な医療提供体制」の具体案であり、したがって合同提言の続編であると説明した。
 合同提言は、病床機能報告制度で用いるべき病期にもとづく医療機能を4区分として提案。その中で、1つの病院(病棟)が1つの機能とは限らないことから、「各病院は地域の将来ニーズに応じて機能の構築を適切に判断していくべきである」とし、その参考として複数機能の組み合わせからなる異なる病院類型を5つ例示している。
 今回提言された「地域医療・介護支援病院」は、その中の「病院類型3」(地域型の急性期医療機能+回復期医療機能からなる「地域急性期型病院」)に、新たに「地域包括ケア支援」という機能を付加したものだ(6面の図を参照)。
 では、「地域医療・介護支援病院」とはどういう病院か。追加提言は、病院の基本特性として「地域包括ケアを担う地域に密着した病院」をあげ、「概ね200床未満、ただし地域特性を考慮する」と記した。まさに、地域医療の前線を支える中小病院である。
 その上で、①24時間体制で高齢者等の入院に対応する、②他機関との連携を図る専門の部署(一定数の連携担当専門職を配置)をもつ、③認知症に対応できる、④一定の急性期医療に対応できる職員を配置する、⑤患者・家族に医療・介護の情報を提供し、在宅医療等の相談に対応する(必要に応じてかかりつけ医を紹介)という機能を示した。
 すなわち、「病床機能としては急性期病床(病棟)と回復期病床(病棟)をそれぞれ持ち、病院全体として在宅療養支援・医療介護連携支援の機能を持つ」多機能型の病院である。したがって、小規模の場合は「1病棟で複合的機能を持つ『地域支援病棟』(仮称)」が許容される必要があるとしている。
 これは、かつて病床機能報告制度の検討会で医政局が提案した「地域多機能」という機能区分案と事実上同じであり、1病棟の場合は、前改定で導入された「特定一般病棟入院料」にも通じるものだ。したがって、決して現実から乖離した構想ではないどころか、全国各地で機能している一般病院をカテゴライズしたものであることが分かる。
 このように、病期の視点から定義された医療機能を、実際に多様な地域のニーズに対応している病院像に落とし込んで、かつ、類型化したものが「地域医療・介護支援病院」ということになる。
 同時に、「地域医療・介護支援病院」あるいは「地域支援病棟」は、全日病と四病協が10数年来提唱してきた地域一般病棟の発展型であることが分かる。
 これについて、今回の提言を中心的にまとめた猪口雄二副会長は、11月2日の第55回全日本病院学会で、地域一般病棟の発展型を四病協として検討している旨を明らかにしている(4面を参照)。
 その中で、発展型の検討は「地域一般病棟が地域医療と地域包括ケアの中ではたす役割と機能を再度明確にするという作業を併せ持つ」という問題意識を披露。その結果、発展型は「地域包括ケアを担う地域に密着した病棟として、24時間の高齢者対応、他医療機関との連携」をもち、「この点は地域一般病棟と同じであるが、新しく、認知症への対応と連携部署の必置を加える必要がある」と論じている。
 「地域医療・介護支援病院」実現するために、「早急に議論すべき診療報酬上の論点」を提起。同時に、病棟単位の報酬評価と患者単位での報酬評価の組み合わせ例を示し、多機能型病院(病棟)の適正な評価のあり方を問題提起し、中医協における審議を求めている。
 11月27日の中医協総会に、診療側の万代委員は四病協の追加提言を報告、地域包括ケアを支える地域密着の病棟として議論の俎上にのぼらせるよう求めた。鈴木委員(日医常任理事)は「日医もこの考え方と同じである」と支持する見解を表明した。