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ホーム全日病ニュース(2022年)第1003回/2022年2月15日号中医協総会が個別改定項目の議論を終える

中医協総会が個別改定項目の議論を終える

中医協総会が個別改定項目の議論を終える

【2022年度診療報酬改定】20項目の答申書附帯意見も了承

 中医協総会(小塩隆士会長)は2月2日、2022年度診療報酬改定に向けた議論を終えた。まだ、点数などは未記載だが、個別改定項目の内容と答申書附帯意見案を了承した。2月9日に後藤茂之厚生労働大臣に答申した。
 中医協総会は、昨年12月10日に社会保障審議会医療保険部会・医療部会が策定した基本方針に沿って、昨年夏頃から中医協で重ねてきた議論を踏まえ、1月14日に「議論の整理」をまとめた。同日に後藤厚労相から2022年度改定の諮問を受け、2022年度改定の議論は大詰めの段階に入った。
 厚労省が1月26日に、個別改定項目の資料を示したことで、2022年度改定の点数や施設基準の基準値、経過措置などを除き、改定内容の全容が明らかとなった。その中で、診療側と支払側で意見の隔たりが大きく、合意が困難と考えられた一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の評価項目・該当患者割合と、オンライン診療の評価については、同日に公益裁定が行われた(次頁を参照)。
 個別改定項目については、1月26日、28日の中医協総会で議論した。その中で、診療側と支払側で意見が分かれた項目をみていく。具体的には、◇感染防止対策の評価の新設・感染防止対策加算の見直し◇紹介受診重点医療機関入院診療加算◇電子的保健医療情報活用加算◇看護補助体制充実加算等─などの議論を紹介する。

感染防止対策のすそ野を広げる
 「感染防止対策の評価の新設・感染防止対策加算の見直し」は、新型コロナの感染拡大を踏まえた対応となる。新型コロナ対応の診療報酬の特例は継続されているが、コロナ収束後の今後の新興感染症等の感染拡大を見据え、医療機関が連携し、感染症に備える体制を強化するための評価だ。
 診療所に対しては、「外来感染対策向上加算」を新設する。診療所内に感染防止対策部門を設置し、医療有資格者を配置するなど、組織的な体制を求める。
 ただ、健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「『感染対策向上加算1』を算定する病院との連携が必須ではなく(地域医師会のカンファレンスに参加することでもよいということになっており)、体系的な感染症対策の質が担保されていない」と指摘。これに対し、福井県医師会長でもある日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「外来での対策が評価されることはありがたい。地域の医療機関全体の取り組みとして、地域医師会もしっかりとやっていく」と応えた。
 一方、病院に対する感染対策の評価である「感染防止対策加算」については「感染対策向上加算」に名称を変え、加算の種類も2つから3つに増やし、より小規模の感染制御チームの取組みを評価することになった。入院医療等の調査・評価分科会の議論を踏まえ、病床規模が小さな病院でも施設基準を満たすことのできる加算を新設することで、感染防止対策の取組みのすそ野を広げることを目指す。

外来機能の明確化に向けて
 「紹介受診重点医療機関入院診療加算」は2022年度から始まる外来機能報告制度により、「紹介受診重点医療機関」が位置付けられることに対応する。重点医療機関に該当し、一般病床が200床以上であれば、紹介状なしで受診する場合の新たな定額負担が義務化されることを踏まえ、新たな入院診療の評価を新設する。なお、新たな定額負担の仕組みは、一部を除き、2022年10月1日から適用される。
 日本医師会常任理事の城守国斗委員は、「定額負担の仕組みの見直しや、紹介・逆紹介割合の減算規定の見直しなど、医療機関に対するさらなるペナルティにより、外来機能の明確化を図る方針が出ている。しかし、この評価は、外来を制限する代わりに、勤務医の負担軽減などに医療資源を投入することを、新たな加算で評価するものと認識しており、積極的な評価の組み合わせとなるので、賛成する」と述べた。
 一方、支払側委員は、これまで入院診療での加算新設に反対の姿勢を示していたが、「紹介受診重点医療機関」に紹介する側である、かかりつけ医機能の評価の抜本的な見直しの議論を続けることを求めた上で、容認に転じた。

オンライン資格確認に新たな評価
 「電子的保健医療情報活用加算」は、外来でオンライン資格確認システムを通じて、患者の薬剤情報・特定健診情報を取得し、その情報を活用し、診療を実施することを評価するもの。ただ、患者がマイナンバーカードを持たず、電子資格確認により、情報を取得することが困難な場合でも、2024年3月31日までに限り、同加算を初診患者に算定できる。
 全国健康保険協会理事長の安藤伸樹委員は、「オンライン資格確認システムを普及させることの必要性は理解する。しかし、マイナンバーカードによる情報の取得に同意しない患者にも加算できることは、患者本人にとってメリットはないのに、費用は増えるため、逆に、ペナルティと受け止めるかもしれない。加算を設けることに正当な理由があるのか疑問だ」と述べた。
 これに対し、日医常任理事の長島公之委員は、「まだ普及していないが、患者の薬剤情報・特定健診情報の活用は、医療の質向上につながる。加算を設けることは、普及への強いメッセージとなり、着実な推進につながる」と理解を求めるとともに、国に対して、引き続き対策と支援を求めた。

看護補助者への研修を評価
 「看護補助体制充実加算等」は、看護職員と看護補助者の業務分担・協働をさらに推進する観点から、看護職員・看護補助者に対して、より充実した研修を実施した場合などを新たに評価する。医療従事者の勤務環境の改善やタスク・シェアリングを推進する狙いがある。
 松本委員は、「看護補助者に対する研修について、質の担保が行われているのか。体制が整ってから、評価を検討すべきではないか」と今回の評価に疑問を呈した。
 日本看護協会常任理事の吉川久美子専門委員は、「すでに研修を実施している医療機関があり、そこでは定着率が向上するという成果が出ている。看護協会としても講義と実習からなるプログラムを作成し、eラーニングも準備している。質の高い看護補助者の育成は待ったなしだ」と説明した。
 一方、池端委員は、「病院の介護職員は看護補助者として扱われ、介護報酬の介護職員処遇改善加算のある介護施設より待遇が低い。何とかこの差を縮小させないと、病院での看護補助者の確保が困難な状況が続く」と、病院が抱える苦労を訴えた。

答申書附帯意見を修正し了承
 2日の中医協総会で、2022年度改定の答申書附帯意見案を了承した。1月28日の議論を踏まえ、不妊治療の保険適用に伴う情報提供のあり方や、明細書の無料発行に関して追記するとともに、医薬品・医療機器等の保険給付範囲のあり方に関する項目を追加した。
 不妊治療の保険適用では、特に公益側委員から、患者・住民への情報提供に関する検討が不十分との指摘があったことを踏まえ、「学会等における対象家族・年齢、治療方法、保険適用回数、情報提供等に関する検討状況を迅速に把握する」との文言を加えた。
 明細書の無料発行については、2022年度改定での対応は行わないが、2024年度改定に向け、「訪問看護レセプトの電子請求が始まること等を踏まえ、患者への情報提供の促進、医療の透明化の観点」から促進を検討することの文言が、支払側委員の要望で加わった。
 保険適用範囲のあり方の議論を把握しつつ、医薬品、医療機器、医療技術の適切な評価を検討することの項目も、支払側委員の要望で加わった。

 

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