全日病ニュース

電子処方箋のシステム導入に伴う負担に懸念

【社保審・医療部会】薬局から医療機関への診療情報の確実な伝達不可欠

　社会保障審議会医療部会（永井良三部会長）は１月31日、電子処方箋導入に向けた検討状況や外来機能報告制度のとりまとめの報告を受けるとともに、新型コロナ対応として、看護師を臨時の医療施設に派遣することができることを了承した。
　電子処方箋については、全日病副会長の神野正博委員が、HPKI（保健医療福祉分野の公開鍵基盤）を使用すると、本人確認のシステム構築に伴う負担が過大になることを懸念する意見を述べた。外来機能報告制度の報告では、「紹介受診重点医療機関」の該当基準を満たすが、当該医療機関が対象にならない場合の理由を明確にすることを求める意見が出た。

情報化支援基金で費用を支援
　電子処方箋とは、オンライン資格確認システム等を拡張し、現在紙で行っている処方箋の運用を、電子的に実施する仕組みである。患者が処方・調剤された内容を閲覧できるほか、データを用いて、重複投薬のチェックなどの確認も可能となる。2023年１月から運用開始の予定となっている。
　医療機関にとっては、リアルタイムで処方・調剤情報を閲覧でき、医師と薬剤師の円滑なコミュニケーションが図れるようになると期待される。
　運用開始に向け、今後、医師法・歯科医師法、個人情報保護法など関連法令の整備を行う。電子処方箋管理サービスは社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会が担うため、費用負担の問題を含め、業務規定の整備も必要となる。
　医療機関や薬局が、電子処方箋を導入するには、オンライン資格確認システムと接続しなければならない。その際に、改修費が発生する。政府は2022年度予算案で、医療情報化支援基金に383億円を積み増し、「オンライン資格確認の導入に向けた医療機関・薬局のシステム整備の支援」の一環で、電子処方箋導入の費用を計上している。
　神野委員は、電子処方箋に公的資格の確認機能を有する電子署名や電子認証を行う基盤であるHPKIを活用することが、運用ガイドラインで推奨されていることを踏まえ、「現状の医療機関では包括的に資格を確認している。それを複雑にすると、システムと現場の負担が大きい。セキュリティと利便性・簡便性が両立するべきだ」と要望した。厚生労働省担当者は、運用ガイドライン見直しの議論を現在行っていると説明した。
　国立病院機構理事長の楠岡英雄委員は、2022年度診療報酬改定でリフィル処方箋が導入されると、医療機関が調剤状況を確認しにくくなることを含め、薬局から医療機関に調剤状況の情報がきちんと提供される仕組みを求めた。

紹介受診重点病院の説明難しい
　４月から施行される外来機能報告制度の報告もあった。外来機能報告等に関するワーキンググループが昨年12月17日にまとめたものだ。この制度の下で、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」は、広告も可能な「紹介受診重点医療機関」となり、都道府県による住民向けの医療機能情報提供制度の項目にも含まれることになる。
　一方、2022年度診療報酬改定により、一般病床200床以上の「紹介受診重点医療機関」は、紹介状なしで受診した患者から定額負担を徴収する義務のある病院に追加されるとともに、入院診療の評価として、新設の「紹介受診重点医療機関入院診療加算」を算定できる見通しとなっている。
　神野委員は、「『紹介受診重点医療機関』と地域医療支援病院の位置づけが不明確であり、患者・住民への説明が難しい。また、入院診療の評価が新設されたが、相手役の中小病院や診療所に、かかりつけ機能を担うことのインセンティブを設けないと不十分」と述べた。
　一方、健康保険組合連合会常務理事の河本滋史委員は、「『紹介受診重点医療機関』の基準に該当する医療機関でも、医療機関にその意向がなければ、対象にならない。基準を参考に『地域の実情を踏まえる』としているが、明確な理由が示されるべき」と要望した。