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ホーム全日病ニュース(2022年)第1003回/2022年2月15日号「重症度、医療・看護必要度」の見直しが公益裁定で決着

「重症度、医療・看護必要度」の見直しが公益裁定で決着

「重症度、医療・看護必要度」の見直しが公益裁定で決着

【中医協総会】初診からのオンライン診療の点数の水準や要件設定も公益裁定

 中医協総会(小塩隆士会長)は1月26日、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(以下、必要度)の評価項目・該当患者割合と、初診からのオンライン診療の評価について、診療側委員と支払側委員の意見の隔たりが大きいことから、公益裁定により、2022年度診療報酬改定における見直し内容を決定した。
 その他の事項は、厚生労働省が示した個別改定事項の資料(いわゆる短冊)に沿って、後藤茂之厚労相への答申に向け、議論を進めている。
 必要度の評価項目の見直しについては、A 項目の「心電図モニターの管理」の削除を含む厳しいものとなったが、該当患者割合の基準値は、特に200床未満の病院に対して、一定の緩和が図られる形となった。また、「必要度Ⅱ」への誘導を図る該当患者割合の基準値が設定されたと言える。
 昨年12月17日に厚労省が示した評価項目の見直しの組み合わせによる4種の見直し案をベースに議論が進み、1月12日の中医協総会では、シミュレーションを実施し、現状で各入院基本料を算定している病院が、基準変更により、どのような影響を受けるかを把握した。
 なお、4種の見直し案は、A項目の「点滴ライン同時3本以上の管理」を「注射薬剤3種類以上の管理」に変更、「心電図モニターの管理」の削除、「輸血や血液製剤の管理」の点数を1点から2点に変更、B項目の「衣服の着脱」の削除、C項目の「骨の手術」の該当期間を11日間から10日に短縮─の組み合わせで構成していた。
 これらの項目は、それぞれ異なる厳格化と緩和の作用を及ぼすが、厳格化の観点では、「心電図モニターの管理」の削除の影響が最も大きく、特に内科系の中小病院への打撃が深刻であるとの懸念が生じている。
 最も厳しい見直し案4では、200床未満の急性期一般入院料1の「必要度Ⅰ」の場合で33.5%の病院が、「必要度Ⅱ」の場合で14.0%の病院が、基準を満たせなくなるとの結果が、シミュレーションにより出ていた。
 しかし、支払側は、「必要度の見直しは、今回改定で最も重要なテーマの一つと考えており、中長期的な人口構造の変化と新型コロナの状況も踏まえれば、急性期入院医療の機能分化、連携は不可避である。今回新たに導入される『急性期充実体制加算』とセットで考えると、メリハリをつける観点でも、見直し案4は、全体で2割程度の病院が急性期一般入院料1の基準を満たせなくなる水準であり、機能分化が期待できる」(松本真人委員・健康保険組合連合会理事)と主張した。
 これに対し、診療側の日本医師会常任理事の城守国斗委員は、まず「新型コロナがまん延している状況で、現場で闘っている医療従事者に対し、そのような厳格化は、後ろから鉄砲を撃つようなものだ」と批判した。その上で、「『心電図モニターの管理』の削除は、特に内科系の中小病院への影響が大きい。今回の改定では、『必要度』の項目は一切変更すべきではない」と述べた。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員も、「これまで内科の技術等は、『心電図モニターの管理』により、ある程度把握するという考えがあったと思う。これを削除すると、2~3割の急性期一般入院料1の病院が脱落してしまうというシミュレーション結果が出ている。脱落すれば、7対1から10対1の看護配置になるが、新型コロナ対応で余剰が必要なときに、人手不足の中で患者に対応することになる。コロナに対応する医療現場に混乱の無いよう、中医協は改定に責任を持つべき」と訴えた。
 これらの意見を踏まえ、小塩会長は、両側の意見の隔たりが大きく、このまま議論しても結論は出ないと判断し、公益裁定を提案。両側は承諾した。

入院料1からの移行進める
 公益裁定の結果は、「心電図モニターの管理」の削除を含む、4種の見直し案のうち、2番目に厳しい見直し案3となった。
 具体的には、◇「点滴ライン同時3本以上の管理」を「注射薬剤3種類以上の管理」に変更◇「心電図モニターの管理」を削除◇「輸血や血液製剤の管理」の点数を2点に変更─を採用することになった。
 小塩会長は、最も厳しい案を採用すると、「該当患者割合の基準を現行の水準とした場合、相当数の医療機関が基準を満たせなくなることが想定される」と指摘。一方で、「急性期一般入院料1から、急性期一般入院料2・3への適切な機能分化を促し、患者の状態に応じた適切な入院料が選択されるよう、取組みを進めることは重要」とも述べた。
 その上で、新型コロナの特例措置は継続しつつ、「新型コロナの感染拡大が見込まれる中であっても、将来の医療ニーズの変化を踏まえ、入院患者の状態に応じて適切に医療資源を投入する体制の構築を進めることが求められる」と説明した。
 その際、シミュレーション結果によると、急性期一般入院料5は公益裁定案でも大きな影響を受けることから、簡素でわかりやすい診療報酬とする観点も含め、急性期一般入院料5・6を統一する。その上で、それぞれの入院料間に、適切な該当患者割合の間隔を設けながら、基準を設定していく(左下表を参照)。

200床未満の病院には一定の配慮
 200床未満の病院に対しては、該当患者割合において、一定の緩和措置を設ける。A・C項目がレセプトコンピュータにより自動入力される「必要度Ⅱ」は、さらに緩和が図られている。これについて、医療従事者の負担軽減を図る視点も重要と指摘している。
 具体的には、「必要度Ⅰ」の該当患者割合の基準について、急性期一般入院料1は31%に据え置き、200床未満の病院については、28%に引き下げる。
 さらに、「必要度Ⅱ」については、それぞれ200床以上・未満で28%・25%とし、「必要度Ⅰ」と一定の差を設ける。
 また、急性期一般入院料4・5の「必要度Ⅰ 」について、それぞれ20%、17%とし、急性期一般入院料4は200床未満の場合に18%とする。「必要度Ⅱ」の基準については、急性期一般入院料1と同様に、「必要度Ⅰ」の基準と一定の差を設ける。
 なお、個別改定項目では、急性期一般入院料1の200床以上の病院に対しては、「必要度Ⅱ」を要件化することが示されている。その際に、経過措置を一定期間設ける予定だ。
 また、特定機能病院入院基本料(7対1)などの入院料や、その他の加算などの施設基準における該当患者割合の基準値については、同様の考え方に基づき、適切に定めるとしている。
 今後、改定の影響を調査・検証し、急性期一般入院料の適切な評価のあり方について、引続き、次回以降の診療報酬改定に向けて検討を行うとの考えも示され、そのことが、1月28日の中医協総会で説明された答申書附帯意見案にも盛り込まれている。

オンライン初診の水準決まる
 オンライン診療の評価についても、公益裁定となった。
 診療側は、オンライン診療はあくまで対面診療の補完であるとの考えから、「対面診療の実効性を担保するため、一定期間内に通院または訪問が可能な患者に利用を限定することや、オンライン診療のみを専門に扱う医療機関により地域医療に悪影響が生じないよう、オンライン診療の実施割合に係る上限設定は維持する」ことを求めた。
 また、点数水準については、「対面診療と同等の評価はできず、『時限的・特例的な対応』として設定された水準を基本として設定すべき」と主張した。
 これに対し、支払側は、医政局で議論された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、指針)を超える制限を設けるべきではないと主張した。点数設定については、日本経済団体連合会の眞田享委員の「対面診療と同内容・同水準で実施される行為は、同等の評価とすべき」との意見を踏まえ、「相当程度の引上げ」が必要と提案した。
 公益裁定では、「指針」に準拠した診療の実施を要件化することを前提としつつ、「医療機関と患者との間の時間・距離要件や、オンライン診療の実施割合の上限については、要件として実施しないことが適切である」とした。
 「指針」では、オンライン診療について、「対面診療を適切に組み合わせて行う」ことを求めており、診療報酬においても、オンライン診療では対応が困難な場合には、他の医療機関と連携して対応できる体制を整えることが適切であるとの考えが、公益裁定で示された。このため、オンライン診療の実施割合の上限を、要件として設定しないとしても、「指針」に準拠した診療の実施を要件化することが前提であるとしている。
 一方、今後、オンライン診療の実態の把握・検証が可能となるよう、施設基準の定例報告で、オンライン診療の実態の報告項目を盛り込むことが重要になるとした。
 点数水準については、対面診療の初診料(288点)と「時限的・特例的な対応」の初診料(214点)の「中間程度の水準とすることが適当」とした。「時限的・特例的な対応」の214点は、288点の約74%であり、単純計算して中間程度の251点に設定されるとすると、約87%の水準になる。
 小塩会長は、「対面診療との比較において、触診・打診・聴診等が実施できないことを踏まえると、点数水準に一定程度の差を設けることは妥当と考えられる」と述べた。
 また、医学管理料については、対面診療の場合の点数が87点から1,681点まであり、オンライン診療では一律100点に設定されている。「時限的・特例的な対応」では一律147点となっている。このため、「オンライン診療の初診料の対面診療に対する割合と整合的に設定することが適当である」とした。その割合は約87%であると想定される。

 

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  • [1] 2022.2.1 No.1002

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2022/220201.pdf

    2022/02/01 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は1月. 14日、2022年度診療報酬改定に ... 総会は2月上旬の答申に向け、大詰め ... ターの管理」を削除③「輸血や血液製.

  • [2] 2021.12.1 No.999

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/211201.pdf

    2021/12/01 ... 2021年(令和3年)12月1日(水). 全日病ニュース. (3). 中医協総会(小塩隆士会長)は11月. 10日、2022年度診療報酬改定に向けて、.

  • [3] 2021.11.1 No.997

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/211101.pdf

    2021/11/01 ...答申書附帯意見のうち、入院医療に ... 中医協総会(小塩隆士会長)は10月 ... 「輸血や血液製剤の管理」有りの方が、診察が頻回.

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