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ホーム全日病ニュース(2022年)第1008回/2022年5月1日号10月以降の看護の処遇改善の議論が分科会で始まる

10月以降の看護の処遇改善の議論が分科会で始まる


中医協総会と同様に分科会もYouTubeで配信。

10月以降の看護の処遇改善の議論が分科会で始まる

【中医協・入院医療等分科会】看護職員の月額1万2千円の収入増に診療報酬改定で対応

 中医協の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」は4月13日、初会合を開いた。従来の分科会(入院医療等の調査・評価分科会)を改組し、所掌事務に外来医療を検討事項として加えるとともに、会議の名称を変更した。当面、2022年度診療報酬改定として10月から実施する看護の処遇改善の制度設計に向け、調査・分析を行う。医療機関の看護職員の配置状況などを把握するための特別調査も実施する。

所掌事務に「外来医療」が加わる
 外来医療の実態把握が求められている中で、2022年度改定により、外来データ提出加算が新設されたことなどを踏まえ、同分科会の所掌事務に「外来医療」が加わった。
 その結果、同分科会の所掌事務は、◇DPC導入の評価及び影響の検証等を含む入院医療並びに外来医療等の評価◇医療機関のコスト◇医療技術の評価◇医療機関等の消費税負担◇その他の技術的課題─となった。
 委員からは、「在宅医療は所掌事務に含まれるのか」との質問があった。厚生労働省は、「現時点で明示されてはいないが、2022年度改定の答申書附帯意見に沿って、2024年度改定に向けた議論をどういった形で進めていくかが総会で議論される。それを踏まえて在宅医療の取扱いも整理される」と説明した。
 委員構成は、全日病の猪口雄二会長が日本医師会副会長として、津留英智常任理事が全日病代表として参加することを含め、概ね旧分科会の委員と同様となっている。分科会長も引続き、尾形裕也・九州大学名誉教授が担う。分科会長代理は、山本修一・地域医療機能推進機構理事長となっている。

改定率0.20%の財源を使い実施
 看護の処遇改善は、昨年12月22日の後藤茂之厚労大臣と鈴木俊一財務大臣との折衝で、2022年度改定の改定率の決定事項として決まった。プラス0.43%の改定率のうち、0.20%分を使って、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関の看護職員を対象に、10月以降の収入を3%程度(月額平均1万2千円相当)引き上げるための処遇改善の仕組みを創設するとしている。
 岸田文雄内閣が重視する公的部門の再分配政策の強化の一環であり、2021年度補正予算で措置した看護、介護、保育、幼児教育などに従事する職員に対する収入引上げの継続として、実施する政策と位置付けられる。
 2月から実施されている看護職員等処遇改善事業補助金は9月までの予定で、10月以降は診療報酬での対応に引き継がれる。処遇改善の水準も1%程度(月額4,000円相当)から3%程度(月額1万2千円相当)に拡充する。診療報酬での対応でも、それ以外の取扱いは、補助金事業を参考にするとされているが、両者の配分の方法は大きく異なるため、中医協では難しい制度設計が求められることになる。
 基本的な取扱いは、補助金事業を参考にするとされているため、その仕組みを確認する。対象医療機関は、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関であり、具体的には、◇救急医療管理加算を算定する救急搬送件数年200台以上◇三次救急を担う医療機関である。
 対象職種は、看護職員(看護師、准看護師、保健師、助産師)だが、医療機関の判断により、看護補助者や理学療法士・作業療法士などのコメディカルの賃金改善に充てることが可能としている。
 津留委員は、補助金事業では、日本病院団体協議会が要望したにもかかわらず、薬剤師の賃金改善に充てることができなかったことを踏まえ、「診療報酬での対応でも同様に対象外になるのか」と質問した。これに対し厚労省は、「看護の処遇改善という、そもそもの制度設計の趣旨はあるが、どこまで包含するかは、総会で議論してもらうことになる」と回答した。
 日本慢性期医療協会常任理事の井川誠一郎委員は、「地域でコロナなど一定の役割を担う医療機関が対象だが、今回の第6波で疲弊したのはむしろ、都会で中等症・軽症患者に積極的に対応した医療機関で、それは必ずしも急性期の医療機関ではない」と指摘し、10月からの対応は決定事項のとおりにせざるを得ないとしても、将来的には、柔軟な制度設計にすべきと主張した。
 また、診療報酬での対応における処遇改善の水準は、3%程度の引上げとされているが、収入が変わればその金額は変わる。厚労省は、今回の対応は「対象医療機関で働く常勤換算の看護職員1人当たり月額平均1万2千円の収入増を図る対応」であることを明言した。その他の職種の賃金改善に充てることも可能とするが、その分1人当たりの金額は下がることになる。
 10月の実施に向け、厚生労働大臣への諮問・答申と、新たな制度の周知期間を考慮し、そこから逆算したスケジュールが組まれるが、特別調査の実施を含めると、時間的な余裕はあまりない。基本的には、すでに利用可能なデータを用いた議論や特別調査は分科会で実施し、適宜総会に報告し、方向性などの了解を得た上で、既存データや特別調査の結果などを分科会で議論する予定だ。分科会の議論を踏まえ、制度設計の仕組みは総会が決定する。
 診療報酬で制度設計するにあたり、3月23日の総会で、診療側の委員から「処遇改善に対応するため、基本診療料で評価するのか、加算で評価するのか、あるいは新項目で評価するのか」との発言があった。基本診療料での評価を考えると、初再診料や入院基本料、入院基本料等加算、特定入院料などがあげられる。
 ただ、同日の分科会での議論で、最も指摘されたことは、どの診療報酬項目に充てたとしても、診療報酬による医療機関の収入は、患者数の変動の影響を受けるので、想定する処遇改善の金額と実際に得られる金額に過不足が生じることである。山本委員は、「控除対象外消費税問題と同じく、必ず過不足が生じる。事後的に、過不足を調整する仕組みを導入することになるのではないか」と発言した。
 議論のためのデータとしては、NDBデータと病床機能報告、補助金の支給状況がある。補助金の支給状況の実績報告書がまとまるのは、9月の終了後であり、制度設計の議論には活用できないが、対象者や対象医療機関を確認することはある程度できる。
 猪口委員は、「過不足を少なくするためにも、どの時点のデータを活用するかが重要になる。NDBと病床機能報告はいつ時点が直近になるのか」と質問した。また、「新型コロナ対応の時期と重なっているので、その影響がすごく出てしまう。これをどう考えるかが難しい」と指摘した。
 これに対し厚労省は、「NDBはデータを格納・分析するのに一定の時間がかかるので、2020年10月から2021年3月のデータが直近になる。病床機能報告は2020年度のデータの活用を想定しているが、直近は2021年7月分であり、医政局と相談し整理する」と回答した。コロナの時期と重なることについては、「今も新型コロナの最中であり、直近のデータもその時期にあたる。影響をどう考えるのかは難しいが、新型コロナ以前のデータを使うことは考えにくい」との発言があった。
 特別調査は、各医療機関における看護職員の配置状況などを把握するために実施する。特別調査についても、直近の看護職員の配置状況を確認することとし、2021年7月1日と2022年4月1日時点の報告を求める。委員からは、さらに直近のデータの把握を求める意見もあった。

 

全日病ニュース2022年5月1日号 HTML版

 

 

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