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ホーム全日病ニュース(2022年)第1008回/2022年5月1日号常任理事会でオンライン診療をめぐって討論

常任理事会でオンライン診療をめぐって討論

常任理事会でオンライン診療をめぐって討論

織田病院のオンライン診療を紹介

 全日病は、4月16日に開いた常任理事会で討議の時間を設け、オンライン診療をテーマに意見交換した。猪口雄二会長が「オンライン診療の適切な実施に関する指針」および関連のQ&A、オンライン診療に関する診療報酬について説明したほか、織田正道副会長が織田病院におけるオンライン診療の取組みを紹介した。

医師以外の健康相談に懸念
 オンライン診療については、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、時限的特例的措置で、初診からのオンライン診療が認めれているが、特例措置を恒久化する形で、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が1月に改定され、これを受けて4月の診療報酬改定でオンライン診療の点数が設定された。
 指針は、初診からのオンライン診療を認め、原則として「かかりつけの医師」が行うことを求めている。ただし、必要な医学的情報を把握でき、医師が可能と判断した場合には、かかりつけの医師以外の医師が初診からオンライン診療を行うことができる。その場合は、医師と患者が映像を用いたリアルタイムのやりとりで、診療前相談を行い、オンライン診療が可能であると判断し、相互に合意する必要がある。
 診療前相談は、診断、処方、その他の診療行為を含まず、患者から費用を徴収することができる。なお、指針では、遠隔健康医療相談を医師以外が行うことができるとしているが、猪口会長は、「一番問題となるのではないか」と述べた。
 薬剤の処方に関してオンライン診療では、麻薬および向精神薬を処方できないほか、基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する安全管理が必要な医薬品の処方、および8日分以上の処方はできない。
 こうした指針を前提として診療報酬では、恒久的な点数として、情報通信機器等を用いた場合の初診(251点)および再診(73点)の点数が設定された。また、医学管理および在宅管理の点数も設定された。
 猪口会長は、多くの企業が健康相談のオンラインサービスに参入し、無資格者による相談も行われていることに懸念を示した。また、「良いガイドラインの作成が求められている。病院がオンライン診療をどのように利用するかが課題となっている」と述べた。

在宅の高齢者を対象に遠隔診療に取り組む
 織田副会長は、織田病院(佐賀県鹿島市)におけるオンライン診療の取組みを紹介した。
 織田病院は1999年から、テレビ電話(ISDN回線)を活用して遠隔診療を開始した。血圧、脈拍、SpO₂、心電図のデータを送信して患者の状態の把握し、難病や呼吸不全の在宅患者を診療してきた。
 織田病院は、在宅医療を補完する形で遠隔診療の取組みを継続。スマートフォンやタブレットが普及するなかで、オンライン診療のためのアプリケーションも数多く登場した。
 新型コロナの感染拡大でオンライン診療の時限的特例的措置が示されると、感染リスクを避けてオンライン診療の希望者が増加。オンライン診療の件数は2020 ~ 2021年の2年間で約4,000件となった。年代別にみると、70 ~ 90歳代の高齢者が多く、通院困難な高齢者に家族が付き添ってオンライン診療を行っている。家族は、通院に付き添う負担を軽減できる。現在、7診療科、20名の医師がオンライン診療を担当している。
 織田副会長は、「オンライン診療は医師と患者の信頼関係が必要であり基本的に初診では行わない方針だ」と説明するとともに、アンケート調査から、オンライン診療の満足度は高いとし、「病院まで来なくても診察が受けられるメリットが大きい」と説明した。
 ターミナルの患者にもオンラインで対応している。心拍数や呼吸数をリアルタイムで把握し、対面診療と同等の状況把握が可能となっている。
 最後に織田副会長は、織田病院の遠隔診療を取材したニュース番組の動画を紹介した。患者の容態変化にも病院と同じように対応し、家族も安心であるという説明に続いて、呼吸不全で入退院を繰り返していた患者が登場し、「どんなに設備の整った病院よりも自分の家が一番いい」と述べた。在宅で療養する患者のニーズに応える形でオンライン診療を展開しているといえる。
 猪口会長は、「こういうオンライン診療の使い方は絶対いい」と述べるとともに、好事例を集めて本来のオンライン診療の形を示す必要があるとの考えを示した。

 

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