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ホーム全日病ニュース(2022年)第1008回/2022年5月1日号宿日直許可申請に関する相談受付けの専用ページを新設

宿日直許可申請に関する相談受付けの専用ページを新設

宿日直許可申請に関する相談受付けの専用ページを新設

【厚労省】医療機関における宿日直許可基準の資料も添付

 厚生労働省は4月1日に、宿日直許可申請に関する医療機関からの相談を受け付ける専用ページを同省ホームページに設けた。医療機関は専用ページのメールフォームに、制度の仕組みや手続きなどの相談内容を入力し、送信する。返事は、厚労省労働基準局が電話またはメールで連絡するとしている。
 相談体制の概要は右下図を参照。「https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24880.html」が専用ページのURL。
 相談窓口の設置は、3月18日に日本医師会・四病院団体協議会・全国有床診療所連絡協議会が後藤茂之厚労相に手渡した要望書に盛り込んでいた。具体的には、「医師独自の宿日直許可基準を明確化し、対応の統一を図っていただくとともに、実態に合わない判断が出された場合、厚生労働省に相談できる窓口を設置することをお願いしたい」と明記しており、相談窓口の設置は、日医や四病協などの要望を受けたものといえる。
 専用ページには、現状の宿日直許可基準に関する説明資料も添付している。以下で、資料の内容を紹介する。

労働時間規制を適用しない勤務とは
 労働基準法における宿日直許可を受けることのできる業務とは、常態としてほとんど労働することがなく、労働時間規制を適用しなくても必ずしも労働者保護に欠けることのない宿直または日直の勤務で、いわゆる寝当直のような断続的な業務のことである。労働基準監督署長の許可を受けることができれば、労働時間規制の適用外となる。
 医療機関に対する宿日直許可基準の対象業務としては、①通常の勤務時間から完全に解放された後のものであり、②宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限ること、③一般の宿日直の許可の条件を満たしていること、④宿直の場合は十分な睡眠がとりうること─などの条件を満たしていることが必要とされている。
 この中の「一般の宿日直の許可」の条件とは、◇常態として、ほとんど労働することがない◇通常の労働時間の継続ではない◇宿日直手当額が同種の業務に従事する労働者の一人一日平均額の3分の1以上である◇宿日直の回数が、原則として当直は週1回、日直は月1回以内である◇宿直について相当の睡眠設備を設置している─を意味するとしている。
 ただし、「18歳以上の者で、法律上宿直または日直を行いうるすべての者に宿直または日直をさせても、なお不足があり、かつ勤務の労働密度が薄い場合には、宿直または日直業務の実態に応じて週1回を超える宿直、月1回を超える日直についても許可して差し支えないこと」との規定もある。
 また、許可が与えられた場合でも、宿日直中に通常の勤務時間と同態様の業務に従事したときは、その時間について割増賃金を支払わなくてはならない。
 医師の働き方改革に向けた議論のなかで、これらの考え方を基本に厚労省は、2019年7月の通知で、医師や看護師の宿日直許可基準の「現代化」を図った。通知では、通常の労働の対象外となる「特殊の措置を必要としない軽度・短時間の業務」を例示するとともに、宿日直許可を「所属診療科、職種、時間帯、業務の種類等に限って得ることも可能」との考えを示している。
 例えば、医師の業務では、「少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと」は、そのような業務に該当する。また、宿日直許可は、「深夜の時間帯のみ、病棟日直業務のみも可能」としている。
 このような条件を満たしていることを労働基準監督署は、医療機関が提出する書面から判断する。
 さらに、労働基準監督官による実地調査がある。宿日直業務に従事する医師などへのヒアリングや、仮眠スペースの確認などは、原則として実施することになっており、申請時に提出された書類の内容が事実に即したものであるかを確かめる。また、勤務実態の確認に必要な期間の勤務記録の提出が求められる。
 これらの結果、許可相当と認められた場合に、宿日直許可が得られる。

許可が得られる具体例を示す
 医療機関の許可事例としては、次のような場合が示された。救急であっても対象業務が、「特殊の措置を必要としない軽度・短時間の業務」と判断され、許可される事例とした。
 二次救急病院で、宿直は週1回、日直は月1回。対象業務は、非常事態に備えての待機、定期回診。労基署の調査概要では、「宿直勤務では、約30分の定期回診と入院患者の容態急変に備えた病棟管理」で、「回診は、1~3階病室を巡回し、処置の必要な患者は看護師が回診時に案内するが、1回2件程度、発熱診察や転倒等による軽症処置」、「病棟管理では診察を要する事案の発生頻度は1日最大5件、平均1件程度(1件約32分)」となっており、宿日直許可が認められた。
 逆に、不許可事例としては、次のような場合が示された。通常の勤務態様が継続しているため、宿日直の許可の対象にならないとしている。
 二次救急病院で、日直が月1回。対象業務は、緊急事態に備えての待機、文書・電話収受など。調査概要では、「日直勤務日の14時までは時間外労働として勤務し、14時以降は宿直室に移動して待機」したが、「ほぼ毎回、14時以降も患者への治療等が複数回発生(合計約30分~2時間)」があり、「終業時刻に密着して行う短時間の断続的な労働」と判断され、宿日直許可が認められなかった。

要望の実現に向け今後調整
 これらは現状の宿日直許可基準の考え方であり、前述のとおり、日医や四病協などは、さらなる基準の緩和を要望している。例えば、「宿直は月8回、日直は月4回まで認める」、「派遣元と派遣先の宿日直回数を分ける」、「連日の宿日直を認める」ことなどを求めている。
 また、睡眠時間などについても一定の配慮を講じることも盛り込んだ。
 医師の時間外労働規制が2024年度に迫るなかで、二次救急などを担う病院が、宿日直許可を得られなければ、大学病院などから医師の派遣が受けられないことにつながりかねない。宿日直許可基準については、今後、改めて調整が図られることになりそうだ。

 

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