全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2023年)第1025回/2023年2月1日号社会保障関係費の増加額を4,100億円に抑える

社会保障関係費の増加額を4,100億円に抑える

社会保障関係費の増加額を4,100億円に抑える

【2023年度予算案大臣折衝】薬価改定の影響額は安定供給問題などに配慮し▲3,100億円

 加藤勝信厚生労働大臣と鈴木俊一財務大臣は昨年12月21日、2023年度予算編成に向けた大臣折衝を行い、社会保障関係費について、2022年度と比べ、実質的な伸びを4,100億円(年金スライド分除く)とすることで合意した。歳出増の項目もあるなかで、2023年度の薬価の中間年改定で得られる財源により、支出増を抑えた形となっている。
 社会保障関係費に相当する予算の夏の概算要求時点の対前年度増加額は5,600億円程度であったので、1,500億円程度の圧縮が行われたことになる。

薬価改定の影響額は3,100億円
 2023年度薬価改定では、2022年薬価調査に基づき、改定の対象範囲について、国民負担の軽減を図る観点から、平均乖離率7.0% の0.625倍( 乖離率4.375%)を超える品目を対象とした。これは、全品目(約1万9,400品目)のうち69%(約1万3,400品目)に相当する。
 その上で、原材料費の高騰、安定供給問題への対応、イノベーションへの配慮の観点から、緊急・特例的な措置を実施する。緊急・特例的な措置は大きく2つで、「不採算品再算定の特例適用」による薬価引上げ(1,100品目)と新薬創出等加算の特例適用(従前薬価と遜色ない水準)(150品目)となっている。これにより、薬価引下げの対象品目は69%から48%(約9,300品目)に落ちる。
 薬価改定の影響額は、薬剤費ベースでは▲3,100億円(国費▲722億円)に相当するが、厚労省が、2022年薬価調査に基づいて示した試算では、平均乖離率0.625倍超を採用した場合の実勢価改定のみの影響額は▲4,830億円であった。
 今回決定した薬価改定の影響額をみると、▲3,100億円のうち、新薬が▲780億円(新薬創出等加算対象▲10億円)、長期収載品が▲1,240億円、後発品が▲1,210億円、その他がプラス130億円となっている。
 平均乖離率0.625倍を超えるのは1万3,400品目。改定対象品目の割合は、新薬が2,400品目のうち1,500品目で63%、長期収載品が1,700品目のうち1,560品目で89%、後発品が1万500品目のうち8,650品目で82%、その他品目が4,700品目のうち1,710品目で36%。新薬のなかで新薬創出等加算対象は600品目のうち240品目で41%(下表参照)となっている。
 実質的に初めての中間年改定であった2021年度薬価改定では、平均乖離率8.0%の0.625倍(乖離率5%)を超える品目が対象となった。2023年度薬価改定では、平均乖離率が1.0ポイント下がったため、対象品目の割合も下がったが、平均乖離率の0.625倍超という水準を踏襲する形となった。
 一方で、市場実勢価格加重平均値調整幅方式で改定する場合の調整幅は通常改定と同じく2%とする。2021年度薬価改定で適用した「新型コロナウイルス感染症特例(0.8%)」のような一律の削減額の緩和は実施しない。それでも、2023年度薬価改定では、緊急・特例的な適用が実施されるため、薬剤費ベースの影響額は3,100億円に落ちる。2021年度薬価改定の影響額は▲4,300億円で、2023年度薬価改定よりも大きい。
 また、医薬品の供給が不安定ななか、患者への適切な薬剤処方の実施や薬局の地域における協力促進などの観点から、2023年12月末までの間、一般名処方、後発品の使用体制に係る加算、薬局における地域支援体制に係る加算について上乗せ措置を講じることでも合意された(4・5面参照)。

国立病院等の積立金を国庫返納
 財源確保のため、独立行政法人国立病院機構と独立行政法人地域医療機能推進機構の積立金(746億円)を、前倒しで国庫返納させる。この取扱いについては、「前倒しの国庫返納」という法律に規定された原則とは異なる対応であることから、「二法人が、コロナ医療や各種政策医療を含め、法人に課せられた責務や地域医療における役割を適切かつ確実に果たす運営を行うことができるよう、最大限配慮する」と明記した。

医療保険制度改革
 出産育児一時金は昨今の出産費用の上昇を踏まえ、2023年4月から50万円に引き上げる方針が決まっている。引上げの財源措置については、75歳以上の後期高齢者にも新たに負担を求める仕組みとする。ただ、2023年度に限っては国が76億円の支援を行い、後期高齢者の負担はない。2024年度以降は、後期高齢者医療制度での負担を求めるが、経過措置として、2024・2025年度の負担は2分の1とし、2026年度から出産育児一時金全体に対する負担分を負担してもらう。
 また、後期高齢者医療制度の医療費を全世代で負担能力に応じて支え合う形にするため、後期高齢者全体の負担率を増やす。後期高齢者の負担増の特例的な算定については、◇(2024年度の)施行後1年内に新たに75歳に到達する方を除き、賦課限度額を2年かけて段階的に引き上げる。具体的には、2024年度に73万円、2025年度に80万円とする◇年収211万円相当以下の所得層に対しては、2024年度は制度改正分を軽減した所得割とし、2025年度は制度改正分を含む所得割とする。
 さらに、今回の医療保険制度改革では、65~ 74歳の前期高齢者の医療費に対する財政調整の仕組みにおいて、「加入者数に応じた調整」に加え、「報酬水準に応じた調整」を部分的に導入することになった。これにより、各保険者の負担割合が変わる。これに伴い、2024年度から特例的に、健康保険組合への支援を430億円追加する。
 そのほか、オンライン資格確認の導入・普及の徹底の観点から、2023年12月までの間、初診時・調剤時における追加的な加算、再診時における加算を設定するとともに、加算に係るオンライン請求の要件を緩和する(4・5面参照)。

 

全日病ニュース2023年2月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。