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ホーム全日病ニュース(2023年)第1026回/2023年2月15日号健保法等一部改正法案を自民・厚労部会が了承

健保法等一部改正法案を自民・厚労部会が了承

健保法等一部改正法案を自民・厚労部会が了承

【自民党】かかりつけ医機能の制度整備で現場への懸念が相次ぐ

 自民党の厚生労働部会は2月6日、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」を田畑裕明部会長一任で了承した。与党の法案審査を経て、政府は2月中旬に国会に提出する予定だ。法案に盛り込まれた、かかりつけ医機能の制度整備に関する考え方に対して、現場に与える影響を懸念する意見が出ていたため、厚生労働省の当初案を調整する。
 今回の健保法等一部改正法案は、広範な内容を含む大きな改革案となっている。改正の概要は、◇こども・子育て支援の拡充◇高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し◇医療保険制度の基盤強化等◇医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化─である。
 最後の「医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化」の中に、かかりつけ医機能の制度整備がある。具体的には、◇医療機能情報提供制度の刷新(2024年4月施行)◇かかりつけ医機能報告の創設(2025年4月施行)◇患者に対する説明(2025年4月施行)がある。
 自民党議員からは、かかりつけ医機能報告により、医療機関がかかりつけ医機能を確保していることを都道府県が確認する仕組みで、かかりつけ医機能の有無を行政の権限で厳格に判断しすぎることのないよう求める意見が相次いだという。政府としては、これらの意見を踏まえ、今後の法案審査やその後の議論に臨むと考えられる。
 「医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化」ではそのほか、
◇医療保険者と介護保険者が被保険者等に係る医療・介護情報の収集・提供等を行う事業を一体的に実施することとし、介護保険者が行う当該事業を地域支援事業として位置づける
◇医療法人や介護サービス事業者に経営情報の報告義務を課した上で、当該情報に係るデータベースを整備する
◇地域医療連携推進法人制度について、一定の要件のもと個人立の病院等や介護事業所等が参加できる仕組みを導入する
◇出資持分の定めのある医療法人が出資持分の定めのない医療法人に移行する際の計画の認定制度について、期限の延長(2023年9月末→2026年12月末まで)等を行う。
 といった改正内容がある。

出産育児一時金を50万円に引上げ
 こども・子育て支援の拡充では、出産育児一時金を2023年4月から42万円を50万円に引き上げる(政令事項)。一方で、今後、生産年齢人口が急激に減少していく中で、少子化を克服し、子育てを社会全体で支援する観点から、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度が、出産育児一時金の費用の一部を支援する仕組みを導入する。
 具体的には、すべての医療保険制度からの出産育児一時金の費用の7%を後期高齢者医療制度が負担する。後期高齢者医療制度の次期保険料改定が2024年4月であるので、その時点からとする。ただ、2024・2025年度は負担額を2分の1とする。後期高齢者医療制度からの実際の支援は、保険者の事務を簡素にするため、後期高齢者医療支援金と相殺する。
 出産育児一時金の引上げに合わせて、実際の出産費用も上昇してしまうとの指摘も踏まえ、出産費用の見える化を進める。新たに設けるホームページで、サービス内容や分娩に要する費用・室料差額などを公表するとしている。
 高齢者医療制度の見直しも、高齢者の負担が大きくなる方向での見直しだ。後期高齢者医療制度の財源構成は、公費が約5割、各保険者からの後期高齢者支援金が約4割、75歳以上の後期高齢者の保険料が約1割。制度創設以降、現役世代一人あたり支援金の伸び率は1.7倍、後期高齢者一人あたり保険料の伸び率は1.3倍で、当面この傾向が続くと推計される。このため、介護保険を参考に、後期高齢者一人あたり保険料と現役世代一人あたり後期高齢者支援金の伸び率が同じになるよう、高齢者負担率の設定方法を見直す。
 後期高齢者の保険料負担を増やす方法としては、保険料を構成している定額部分(均等割)と定率部分(所得割)の範囲の見直しや、賦課限度額の引上げを用いる。ただし、年金収入153万円相当以下の約6割の年金受給者の負担は増えないよう配慮する。年金収入211万円相当以下の約12%の年金受給者についても、2024年度は負担が増えないよう対応する。
 また、65~ 74歳の前期高齢者の医療費を各保険者が負担する方法において、現在、「加入者数に応じた調整」が行われている。これについて、部分的(3分の1)に「報酬水準に応じた調整」を導入する。あわせて、他の制度における企業負担を勘案し、企業の賃上げ努力を促進する形で、既存の支援を見直すとともにさらなる支援を行う。
 2024年度から2029年度までの第4期医療費適正化計画に向けた見直しでは、計画に記載すべき事項を充実させるとともに、各都道府県に保険者協議会を必置として、計画の策定・評価に関与する仕組みを導入する。都道府県の役割・責務も明確化する。かかりつけ医機能の確保の重要性にも留意する。

 

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