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ホーム全日病ニュース(2023年)第1026回/2023年2月15日号電子カルテ情報共有への同意取得は現場負担を軽減する方向で整理

電子カルテ情報共有への同意取得は現場負担を軽減する方向で整理

電子カルテ情報共有への同意取得は現場負担を軽減する方向で整理

【厚労省・医療情報ネットワークWG】全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とするための基盤を議論

 厚生労働省の「健康・医療・介護情報利活用検討会」の「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」(中島直樹主査)は1月27日、全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とするための基盤に関し、患者からの同意取得の仕組みなどを議論した。同意取得においては、現場の負担を軽減する方向で整理していく方針が確認された。政府の「データヘルス改革に関する工程表」では、全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とするための基盤について2022年度中に結論をまとめることとされている。厚労省はWG の次回会合に、とりまとめ案を示す予定だ。
 電子カルテ情報のうち、まずは①傷病名②アレルギー情報③感染症情報④薬剤禁忌情報⑤検査情報⑥処方情報―の6つの医療情報と、◇診療情報提供書◇退院時サマリー◇健康診断結果報告書―の3文書から標準化を進め、その後、段階的に拡張する方針となっている。
 電子カルテ情報の共有は、次のような仕組みとする方向。まず医療機関等から、「電子カルテ情報交換サービス(仮称)」に電子カルテ情報を保存する。紹介先の医療機関では、患者本人の同意を前提に、その電子カルテ情報を閲覧できるようにする。また、6情報に限っては、オンライン資格確認等システムを通じて、患者の同意のもと、全国の医療機関等で情報を閲覧できるようにする。マイナポータルを利用すれば、患者本人もそれらの情報を確認できる。
 同日の会合では、この仕組みにおいて患者からの同意をどのように取得するかを議論した。厚労省は、①患者が受診した医療機関が電子カルテ情報を「電子カルテ情報交換サービス」に保存することへの同意と、②全国の医療機関で電子カルテ情報を閲覧する際に必要な同意の2つに分けて整理。
 ①情報の保存に関しては、海外では患者の同意を不要にしていたり、オプトアウトとして拒否を可能にしていたりしていることが紹介された。他方、②情報の閲覧に関しては、患者の同意の取得が必要としている国が多数であることが示された。患者の同意には、診察のたびに同意が必要な国もあれば、一度同意すればその後は情報の閲覧が可能になる包括同意の仕組みをとる国もある。
 厚労省は患者同意の仕組みをつくる際の方針として、「国民への周知とセットで、なるべく現場の負担を軽減する方向で整理を進める」ことを提案。委員からは概ね同意が得られた。
 日本医師会常任理事の長島公之委員は、患者の負担を軽減するため、電子カルテ情報を保存する場面については、患者の同意を不要にする、またはオプトアウトが可能とする方向で、法的な整備を行うことを提案した。
 また長島委員は、「診療情報提供書は特定の医療機関に送る親書のようなものなので、他の情報とは取扱いを変えなければいけない」と指摘した。
 他の委員からは、「マイナポータルにおいて、閲覧可能とする情報を患者自身が選べる仕組みとすべき」「情報を活用できるように、患者に仕組みを周知することが必要」などの意見が出された。
 患者から同意をとるタイミングとして、厚労省は「顔認証付きカードリーダーの使用時」や「診察時」、「マイナポータル利用時」を選択肢として提示した。これに対し長島委員は、「診察後の会計のタイミングでも同意ができる仕組みにしないと患者さんが困る」と訴えた。

救急・生活習慣病からコード標準化
 同日の会議では、電子カルテ情報のデータコードの標準化について、厚労省から、当面は救急・生活習慣病に関するコード等に絞って標準化を進めることが提案された。
 コードを整理することで、異なる医療機関からの電子カルテ情報を医療機関等の医療従事者間で活用することが容易になる。また、PHRの仕組みにより、マイナポータルで理解しやすいかたちで情報が確認できるようになる。まずは医療従事者間の情報共有や患者の理解を進めるため、対象コードを限定した上で、標準化に着手する考えが示された。
 コードを救急と生活習慣病に限定した上で標準化を進める方針に、理解を示す意見が出された。他方で長島委員は、診療報酬DXなど、政府が進めようとしている医療DXの他の取組みと一体的に進めてほしいと要望。「最初に整合性をもって進めないと、後から医療現場に負担がかかってしまう。一体的にできないのなら、慌てて進めるべきではない」と述べた。
 厚労省の田中彰子参事官は「診療報酬DXの取組みと電子カルテ情報の標準化、そして標準的な電子カルテの検討を、一体的に進めるかたちで、とりまとめをしていきたい」と述べた。
 厚労省は、同日の意見を踏まえたとりまとめ案を次回会合に示す予定。

 

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