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ホーム全日病ニュース(2023年)第1026回/2023年2月15日号コロナ治療薬のゾコーバ錠の薬価を特別に算定

コロナ治療薬のゾコーバ錠の薬価を特別に算定

コロナ治療薬のゾコーバ錠の薬価を特別に算定

【中医協】1,500億円超の市場規模を見込み医療保険財政への影響を懸念

 中医協総会(小塩隆士会長)は1月25日、新型コロナの「軽症・中等症1」の患者に効能・効果があるゾコーバ錠(塩野義製薬)の薬価収載に向け、通常とは異なる薬価算定方法を特別に検討することを了承した。
 2022年度薬価制度改定の骨子で、年間1,500億円の市場規模を超えると見込まれる品目が承認された場合には、直ちに中医協総会で薬価算定方法の議論を行うとされたことを踏まえた。ゾコーバ錠の市場規模予測は難しいが、1,500億円を超える可能性は否定できないと判断されている。
 ゾコーバ錠の投与状況をみると、2022年11月24日の政府による供給開始以降、2023年1月16日時点で投与患者数は累計約1万7,500人。この間の新規陽性者数(約740万人)の約0.2%に投与されている。
 1月25日以降、薬価専門部会で具体的な論点として、新規収載時の薬価算定方法や薬価収載後の価格調整方法などが議論される。2月8日には製薬業界からのヒアリングを実施した。

複数の比較薬に基づき薬価算定
 類似薬効比較方式で算定する場合、新型コロナの抗ウイルス薬では、ベクルリー点滴静注やラゲブリオカプセルがあり、インフルエンザの抗ウイルス薬では、タミフルカプセルやゾフルーザ錠がある。ただ、対象疾患の類似性と投与対象患者の類似性のどちらを優先させるかにより、比較薬が異なるという問題がある。
 総会の委員からは、ゾコーバ錠が、重症化リスク因子のある軽症者に対し重症化抑制効果を裏付けるデータが得られていないことなどから、ベクルリー点滴静注やラゲブリオカプセルを比較薬とすべきではないとの意見が出た。また、インフルエンザの抗ウイルス薬を比較対象にすると、薬価が低くなるので、イノベーションや原価計算を考慮した類似薬効比較方式を考えるべきとの意見も出た。
 2月1日の薬価専門部会(中村洋部会長)では、厚生労働省が総会の議論を踏まえ、「類似薬効比較方式により対応するが、比較薬の選定にあたっては、対象疾患の類似性と投与対象患者の類似性のいずれを選択するかによって、算定薬価が大きく変動する特殊性も鑑み、複数の比較薬に基づき薬価を算定するなどの柔軟な運用を可能とする」ことを提案。概ね了解を得た。
 また、総会で、「ゾコーバ錠は催奇形性の観点から、妊婦には禁忌とされているが、投与後に妊娠が発覚した事例があった。安全対策の徹底が必要」との意見も出た。このため、適切な患者に限って使うことを留意事項通知で明示する。

市場拡大再算定をより迅速に
 薬価収載後の価格調整については、現状でも市場拡大再算定による薬価引下げの仕組みがあるが、実際の年間販売額が、予想販売額より大きく拡大したことが確認されてからの対応となっている。新型コロナの患者は急激に増加することがあり、保険財政への影響を最小限に抑えるため、より迅速な対応を検討する。
 具体的には、市場規模を迅速に把握するため、薬価調査やNDB(ナショナルデータベース)に代えて、新型コロナの感染状況や投与割合、出荷量などの情報により、市場規模を推計する。薬価収載後、四半期ごとに直近3か月の市場規模を基本に年間推計額を試算する。
 ただ、その推計結果は、市場拡大再算定を発動する基準である年間市場規模が1,000億円超、1,500億円超であるかの判断のみに用いることにする。
 現在、市場拡大再算定は、年間販売額が1,000億円~ 1,500億円、予想販売額よりも1.5倍以上であった場合に10%~ 25%、年間販売額が1,500億円超、予想販売額よりも1.3倍以上であった場合に10%~ 50%の薬価引下げを実施するルールとなっている。
 再算定を行うに際し、通常と同様に薬価算定組織を経て、中医協総会で了承を得る。改定薬価の告示までの期間は、従来と同様に2~3か月の猶予期間を設ける。迅速な価格調整が求められる一方で、再算定による薬価引下げは、医療機関・薬局の在庫価値を減少させ、経営に影響を与えるためだ。
 また、急激な市場拡大への対応であることや3か月のデータからの推計であることを踏まえ、市場拡大再算定の引下げ率や上限の設定も論点となる。

 

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