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ホーム全日病ニュース(2023年)第1041回/2023年10月1日号高齢者救急の評価など中医協分科会が中間とりまとめ

高齢者救急の評価など中医協分科会が中間とりまとめ

高齢者救急の評価など中医協分科会が中間とりまとめ

【中医協・入院医療等分科会】「重症度、医療・看護必要度」の見直しの文言で一定の歯止めかかる

 中医協の入院・外来医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は9月14日、中間とりまとめ案を大筋で了承した。高齢者救急をめぐり焦点となっていた一般病棟入院基本料の「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の見直しについては、全日病会長の猪口雄二委員(日本医師会副会長)や全日病常任理事の津留英智委員をはじめとした病院団体の委員の発言により、急性期病棟での高齢者受入れの評価を引き下げる方向での見直しに関する文言が、同分科会の診療情報・指標等作業グループからの中間報告よりも弱められ、一定の歯止めをかける形となった。
 なお、DPC/PDPSと外来医療については、3面で紹介している。
 中間とりまとめは、◇一般病棟入院基本料◇特定集中治療室管理料等◇DPC/PDPS◇地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料◇回復期リハビリテーション病棟入院料◇療養病棟入院基本料◇外来医療◇外来腫瘍化学療法◇情報通信機器を用いた診療◇横断的個別事項─の項目からなる。入院医療にとどまらず、外来医療も含まれる。同分科会の名称にあるように2022年4月13日の開催から所掌事務に外来医療が加わった。
 一般病棟入院基本料については、入院基本料の中で最も点数が高い急性期一般入院料と他の入院料との比較などが行われた。
 例えば、「75歳以上に多い疾患のうち、『食物および吐物による肺臓炎』や『尿路感染症・部位不明』等は、急性期一般入院料1に入院した場合と地域一般入院料1・2に入院した場合とで、1日当たりの医療資源投入量が大きく変わらない」、「75歳以上の『食物および吐物による肺臓炎』、『尿路感染症』は、全疾患の平均と比べ『専門的な治療・処置』の該当割合が低く、『救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態』の該当割合が高かった」といったデータが示された。
 高齢者に多い疾患は急性期一般入院料1以外の入院料で診療できることや、「専門的な治療・処置」が必要でなくても、高齢者救急であれば、急性期一般入院料1に入院させていることを問題視することを示唆させる文言である。
 これらに対して、「機能分化の推進や急性期一般入院料1における高度・専門的な医療を評価する観点から、急性期一般入院料1においては、B項目以外の項目による評価を重視すべきではないかとの指摘があった。一方で、急性期病棟におけるADLの低下した患者に対するケアの評価の観点から、B項目による評価は重要ではないかとの指摘もあった」という文言が中間とりまとめに明記された。
 この部分に関しては、同分科会の診療情報・指標等作業グループからの中間報告の段階で、「7対1病棟に求められるような高度・専門的な医療を必要とする患者への対応を評価する観点からは、B項目はなじまない」という強い表現が用いられていた。しかし、9月6日の同分科会で、猪口委員や津留委員ら病院団体の委員からの強い意見があり、中間とりまとめにあるような文言に落ち着いた経緯がある。
 急性期一般入院料1の平均在院日数については、「90%以上の施設で施設基準(18日)よりも2日以上短い。届出病床数が小さい場合にばらつきが大きい」というデータが示された。平均在院日数が長い病棟では、特定集中治療室などを届け出ている割合が低く、地域包括ケア病棟または回復期リハビリテーション病棟の届出を行っている割合が高くなっている。
 これを受け、「平均在院日数の区分による患者の状態や医療の内容の違いを踏まえれば、急性期一般入院料1の平均在院日数の短縮化が考えられる」との指摘があった。
 また、「高齢者等に対する急性期医療への対応においては、まずは診断をつけることが重要である場合があるため、第三次救急医療機関等で初期対応を行った後の転院搬送について評価するとともに、地域包括ケア病棟等によるこうした転院搬送の患者の受入れについても評価すべき」との指摘があった。なお、厚生労働省は、この文言中の「第三次救急医療機関等」には第二次救急医療機関が含まれていると説明した。

看護必要度とSOFAスコアを併用
 特定集中治療室管理料等については、患者を評価する指標としてのSOFAスコアの可能性が議論された。
 データでは、「入室日の看護必要度および入室日のSOFAスコアのいずれもが退院時の転帰と相関していた。看護必要度の該当、6点以上と比較し、SOFAスコア5以上、10以上の方が退院時の転帰とより相関していた」など、SOFAスコアの有効性が一定程度確認できた。
 一方で、「入室日のSOFAスコア5以上の患者の割合は、治療室ごとにばらつきがあった。看護必要度が90%以上の施設に限定しても、入室日のSOFAスコア5以上の患者の割合はばらついていた」とのデータもあった。
 意見では、「RRS(Rapid ResponseSystem)を行っている病院では、SOFAスコアが上がる手前の人をICUで管理している」との指摘があり、「SOFAスコア単独で指標として使用することには慎重であるべき」との意見で概ね一致した。
 ハイケアユニット入院医療管理料の看護必要度については、適正化の必要性を指摘する意見が相次いだ。その結果、以下のような意見が指摘された。
〇「 心電図モニターの管理」や「輸液ポンプの管理」は患者の状態や入室経路によらずほぼすべての患者に該当しており、重症度等を評価する観点からは項目として不要ではないか
〇 重症度の高い患者への対応や常時監視の必要な治療の実施を評価する観点から、一部の項目について特定集中治療室用と同様に、点数に差をつけることが考えられるのではないか
〇 一般病棟ではなく治療室に入室が必要な重症度の高い患者に対する医療・看護を評価する観点からは、特定集中治療室用と同様に、B項目は不要ではないか
 3つ目の指摘については、「B項目の測定結果はADL等の改善状況を統一的な指標で把握するために有用であり、B項目を必要度の基準から外す場合においても、特定集中治療室と同様に、測定自体は継続すべき」との意見もあり、両論併記の形となっている。

地ケア直入の医療資源投入は高い
 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料については、実態調査により、救急搬送後に地域包括ケア病棟に直接入棟した患者の特徴として、◇誤嚥性肺炎や尿路感染症が多い◇医療的な状態が不安定◇医師による診察の頻度、必要性が高い◇看護師による直接の看護提供の頻度・必要性が高い◇リハビリテーション実施頻度、リハビリテーション実施単位数は低い─という傾向がみられた。
 入棟経路別の医療資源投入量等は緊急搬送後、直接入棟の患者で包括範囲の医療資源投入量が多い傾向にある。救急搬送後直接入棟の患者の割合は、多くの病棟・病室で5%未満だが、129施設(7.8%)は15%以上であった。
 これらを踏まえ、「地域包括ケア病棟は施設ごとに果たしている機能が多様であることを尊重すべき」、「自宅等からの緊急患者の受入れをしっかりやっているのであれば、救急がなくとも地域の役割を果たしている」、「救急搬送後直接入棟の患者ではリハビリテーションの実施頻度が低いが、直接入院だとリハビリテーションがすぐには開始できないことも多くやむを得ない」といった意見が出ている。
 また、短期滞在手術について、「地域包括ケア病棟で白内障、大腸ポリペクトミー等の患者を受け入れている病院は多いが、こういった医療機関は、地域包括ケア病棟の指標がよくなりやすいことに加え、ポストアキュート、サブアキュートをバランスよく受け入れている医療機関と比べて、退院支援等が少なく、偏った診療による収益確保にもつながるため、こういった患者の受入れが多い地域包括ケア病棟とバランスよく受け入れている地域包括ケア病棟の差別化が必要」との意見も出た。

運動器リハの適切量めぐり議論
 回復期リハビリテーション病棟入院料については、「運動器疾患において、1日当たりの平均リハビリテーション提供単位数が「6単位以上7単位未満」、「7単位以上8単位未満」および「8単位以上9単位未満」の患者の運動FIMについて、リハビリテーション提供単位数の増加に伴う明らかな改善はなかった」とのデータが示された。
 これを踏まえ、運動器疾患に対するリハビリテーションについて、「実施単位数に応じた評価について検討が必要である」との指摘があった。ただ、これには、「科学的なエビデンスはあるのか」といった点を含め、様々な議論があった。津留委員は、リハビリテーション提供単位数の審査支払機関の査定の基準が地域により異なることが影響している可能性を指摘している。
 質の高い回復期リハビリテーション医療の提供に向けては、実態調査の結果を踏まえ、「入院栄養食事指導を実施していない回復期リハビリテーション病棟1については、必要な患者に実施するよう改善を求めるべき」、「退院前訪問指導を推進すべきで、ICTの活用や地域の医療機関との連携も考慮すべき」、「現在の回復期リハビリテーション病棟の地域貢献活動への参加を促すべき」といった意見が出ている。

医療区分の分類は見直しへ
 療養病棟入院基本料については、「疾患・状態としての医療区分3と処置等としての医療区分1~3の組合せにより、医療資源投入量に2~3倍の違いがあることから、医療資源投入量に応じた適切な評価を行っていく上で医療区分を精緻化する必要がある」とされた。具体的には、「医療区分について、疾患・状態としての医療区分3分類と処置等としての医療区分3分類を組み合わせた9分類とすることとしてはどうか」との提案が出ている。
 その際、「医療区分を細かく分類することにより、医療資源投入量との整合性が増すと考えられるが、200床未満の病院における電子カルテの普及率がいまだに50%ほどしかないことから、記入に係る負担には配慮が必要」ということも求められた。
 療養病棟入院基本料における中心静脈栄養については、最近の診療報酬改定において、嚥下機能の回復に努め、適切な栄養提供の手段が選択されることを促す診療報酬の設定が行われてきた。だが、中心静脈カテーテルを挿入して病棟に転棟した患者のうち、中心静脈栄養から経口摂取へ移行した患者は4.1%と少ない状況にある。
 中間とりまとめでは、「診療ガイドラインにおいて、消化管が機能している場合は、中心静脈栄養ではなく、経腸栄養を選択することが基本であるとされている。また、療養病棟における経腸栄養は、中心静脈栄養と比較し、生命予後が良好で、抗菌薬の使用が少ない」との報告を引用。「中心静脈カテーテルについては、留置期間が長いほど感染のリスクが高まる」と指摘した。
 委員からは、「中心静脈栄養が漫然と続いている可能性があるため、医学的根拠に基づき、腸を使った栄養管理へシフトし、過不足のない中心静脈栄養が行われるような促しが必要」、「中心静脈栄養の医療区分3としての評価は、経腸栄養が可能な患者は対象とせず、腸閉塞等の腸管が利用できない患者のみを対象とし、それ以外の患者についての評価は医療区分3から2あるいは1に引き下げるなど見直しが必要」との意見が出ている。
 一方、経腸栄養が禁忌で静脈栄養の適応とされる疾患は、「汎発性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、麻痺性イレウス、難治性下痢、活動性の消化管出血に限定」とされているが、「これ以外にもあるのではないか」との意見も出ている。

身体的拘束と栄養への対応
 横断的個別事項では、身体的拘束と入退院支援、急性期のリハビリテーション・栄養等が取り上げられた。
 身体的拘束については、ほとんどの病棟・病室において、入院患者に対する身体的拘束の実施率は0~ 10%未満(0%含む)であるが、実施率が50%を超える病棟・病室も一定程度ある。「身体的拘束を予防・最小化するためには、組織としてこの課題に取り組むことが重要であることや、急性期の医療機関においても身体拘束の最小化に取り組む必要」が指摘された。
 入退院支援では、入院料別の入退院支援の特徴として、「入退院加算の対象者における『退院困難な要因』は、急性期一般入院料では『緊急入院』、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟では『ADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要』が多い」ということなどが実態調査で示されている。
 これを受け、「急性期はより病院や診療所との連携が必要であり、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟に関しては、介護保険や障害福祉サービスとの連携をより進めるべき」との意見が示された。
 急性期におけるリハビリテーション・栄養等に関しては、様々な既存の診療報酬項目の改善が求められた。
 急性期のリハビリテーションについては、ADL維持向上等体制加算の評価の不十分さが多くの委員から指摘された。届出施設数は2022年度で98施設に過ぎず、「点数設計を見直す必要がある」との意見が相次いだ。急性期病院において、休日を含めた早期からの切れ目のないリハビリテーションの提供が行われるための点数設計を求めることも重要な課題となった。
 栄養管理については、入院患者に適切な栄養管理が実施される体制を病院が備えられるようにするため、栄養サポートチーム加算や入院栄養管理体制加算、入院栄養食事指導料、栄養情報提供加算などに関して、管理栄養士の確保や対象範囲の拡大の観点を含め、それぞれの課題に対して改善を図るための見直しが求められた。

 

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