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ホーム全日病ニュース(2023年)第1041回/2023年10月1日号10月以降、新型コロナの病床確保料や診療報酬の特例を減額

10月以降、新型コロナの病床確保料や診療報酬の特例を減額

10月以降、新型コロナの病床確保料や診療報酬の特例を減額

【厚労省】病床確保料は感染拡大Ⅰ~Ⅲの期間のみに限定

 厚生労働省は9月15日、10月以降の新型コロナの対応方針を公表した。政府は、病床確保料など補助金や診療報酬上の取扱いなどの特例について、来年度に向け、段階的に解消する方針を示してきた。10月以降も病床確保料などの補助金や診療報酬の特例は継続するが、減額となる。感染拡大が一定以上の段階に達しなければ、確保病床は設定されず、設定中の期間でないと病床確保料は給付されなくなる。
 しかし、足元で新型コロナは収束しておらず、再び感染拡大が起きるかもしれない。物価高騰・賃金上昇など病院経営を取り巻く環境が悪化する中で、新型コロナ患者への医療を提供する基盤が弱体化しつつある。全日病は新型コロナ患者を受け入れる病院の取組みの継続に懸念を抱いている。

常任理事会等で対応を議論
 政府の新型コロナ対応が10月以降に見直されることになっていたことから、全日病は常任理事会等で議論を行ってきた。8月26日の理事会で各地の状況を聞くなど情報交換を行うとともに、政府の方針への対応を話し合った。9月16日の常任理事会では、見直しの政府決定を猪口雄二会長が説明し、内容を確認した。
 猪口会長は、9月16日の常任理事会で、「今後は一定の感染拡大を超えないと病床確保料は支払われなくなる。最大の感染拡大を見込んだ『Ⅲ』の期間であっても、東京都の確保病床数は千床ぐらいとなり、現状の3分の1になってしまう。そのぐらい、病床確保料が厳しくなる。さらに、診療報酬も引き下げられ、こうなると、もう新型コロナ患者は受け入れないという病院が相次ぐ可能性がある。感染拡大時に病床逼迫が起きるかもしれない。その時に、病院が新型コロナ患者を断るということが報道されれば、病院批判が再び出てくるということも考えられる」との危機感を示した。
 参加した常任理事からは、「感染症法上の取扱いが5類になっても、新型コロナ患者は個室での入院とならざるを得ない。病院の都合による個室であるから差額ベッド料は請求できず、病院の負担が大きくなる。今回の見直しで、病院が積極的に新型コロナ患者受入れに協力するとは思えない」との意見が出た。
 神野正博副会長は、「病床確保料がほとんど出なくなるのであれば、新型コロナ患者を診療した場合の診療報酬の特例はもっと手厚くするべきだ。どちらも下げられるというのでは、病院にとってよいことは何もなくなってしまう」と述べ、適切なタイミングで、病院団体の考えを政府に訴えることを主張した。
 このように、今回の見直しは新型コロナ対応に取り組む病院にとって、厳しいものとなった。猪口会長は、政府の対応は今回の決定で揺るがないが、各都道府県では異なった受け止めがあり、個別の支援を検討している都道府県もあることが報告された。以下で、今回の見直しの概要をみていく。

病床確保料は感染拡大時だけ
 見直しの詳細は、9月15日に事務連絡された「新型コロナウイルス感染症の令和5年10月以降の医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について」、「令和5年秋以降の新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」、「令和5年秋以降の新型コロナウイルス感染症の流行状況を踏まえた施設基準等に関する臨時的な取扱いについて」に記述されている。
 今回の見直しは、新型コロナの感染症法上の取扱いが2類相当から5類になったことに伴う、来年度の通常の対応への完全移行に向けた移行期との位置づけで、冬の感染拡大に備えた重点的・集中的な入院体制の確保を図るための対策となっている。
 確保病床によらない形での入院患者の受入れを進めていることから、病床確保料の対象となる確保病床は、引き続き重点化を図るとの観点で、厳格化が行われる。入院患者は、通常医療との公平性を考慮し、「重症・中等症Ⅱ」等とする。これは新型コロナ患者の全体の25%に相当する。
 確保病床を設定する期間は、オミクロン株流行の最大在院者数(第7波または第8波)との比較で3つの段階に分類する。具体的には、一定の感染者数を超えるⅠ~Ⅲの3段階を設定。Ⅰの期間はピーク時の3分の1の在院者、Ⅱの期間はピーク時の2分の1の在院者、Ⅲの期間はピーク時の8割の在院者が発生していることを目安に都道府県が決定する。このⅠ~Ⅲが病床確保料の発生する期間となる。
 経過措置として10月の間は、段階Ⅰに達しない都道府県でも、段階Ⅰの即応病床数を上限に病床確保料の対象とすることができる。
 病床確保料の金額については、重点医療機関の補助区分が廃止された。
 補助単価の上限は、9月末までの補助単価の0.8倍となる。その結果、ICUの場合、特定機能病院等では1日17万4千円、一般病院では12万1千円。HCU の場合、一律1日8万5千円。その他病床の場合、特定機能病棟等では1日3万円、一般病院では1日2万9千円となっている。
 休止病床の補助上限数は、即応病床1床当たり休床1床(ICU・HCU病床の場合は2床を上限)である。 

入院料は1.5倍から1.2倍に減額
 診療報酬上の取扱いは、9月13日の中医協総会で方向性を議論しており、9月15日の持ち回り開催の中医協で了承している。外来・在宅・入院・歯科・調剤のそれぞれにおいて、見直しが行われている(左表を参照)。
 外来では、発熱外来など対応医療機関の枠組みを前提として、院内感染対策に加え、受入患者を限定しない場合の300点が147点となる。これに該当しない場合の147点は50点になる。初診時を含め新型コロナ患者に療養指導した場合の147点は廃止となった。新型コロナ患者の入院調整を行った場合の950点は100点となる。
 在宅では、緊急の往診が950点から300点。介護保険施設等への緊急往診は2,850点と手厚い対応がなされていたが、950点になる。介護保険施設等において、看護職員とともに、施設入所者に対してオンライン診療を実施する場合の950点は300点になる。新型コロナ疑い・確定患者への往診の評価は300点から50点となる。
 入院では、新型コロナの重症患者に対するICUなどでの入院料が1.5倍(プラス2,112~ 8,159点)となっていたが、1.2倍(プラス845~ 3,263点)となる。中等症患者等に対する急性期病棟等での救急医療管理加算1の2~3倍(1,900~ 2,850点)の加算は、救急医療管理加算2の2~3倍(840~ 1,260点)になる。
 介護保険施設からの患者などを地域包括ケア病棟などに受け入れる場合の950点は420点になる。コロナ回復患者を受け入れた場合の750点(14日まで950点)は500点になり、算定できる期間が14日目までに縮減される。
 入院に関するそのほかの特例についても、概ね点数が引下げとなった。
 また、施設基準について、平均在院日数や手術の実績件数などの診療実績等に係る要件に関する特例は、原則として2023年9月30日で終了する。ただし、月平均夜勤時間数の変動や職員が一時的に不足した場合の特例は、該当する場合に地方厚生局への届出を求めた上で、3カ月を想定した一定程度の期間継続し、それにより施設基準を満たせなくなることはない。

コロナ治療薬で一定の患者負担
 患者に対する公費支援は、これまで全額公費負担であったコロナ治療薬の費用に、一定の自己負担が発生するようになる。自己負担の上限額は負担割合が1割で3千円、2割で6千円、3割で9千円となる。重症化予防効果のあるラゲブリオの薬価は約9万円だが、9千円に抑えられる。
 入院医療費については、高額療養費制度の自己負担限度額から差し引く金額について、これまでの2万円を1万円に減らした上で、公費負担を継続する。厚労省は、新型コロナの平均在院日数は約7日で、インフルエンザの約6日とほぼ同様の状態に近づいているが、まだインフルエンザと同様に考えることはできないとして、公費支援を継続すると説明した。
 高齢者施設等への支援については、感染者が発生した場合などのかかり増し経費の補助の一人当たり補助額の上限が1日4千円となる。施設内療養の補助は1人当たり1日で1万円が5千円に減額され、医療機関からのコロナ回復患者の受入れの場合の加算(500単位)の算定可能日数は30日から14日に縮減となる。

 

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