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ホーム全日病ニュース(2023年)第1041回/2023年10月1日号2022年度概算医療費は46兆円、対前年度伸び率は4%

2022年度概算医療費は46兆円、対前年度伸び率は4%

2022年度概算医療費は46兆円、対前年度伸び率は4%

【厚労省】コロナ禍以来3年間をならすと1.8%で高くない伸び率

 厚生労働省は9月13日の中医協総会(小塩隆士会長)に、2022年度概算医療費を報告した。2022年度の概算医療費は46.0兆円で、対前年同期比4.0%の増加(プラス1.8兆円)となった。新型コロナの感染拡大以前である2019年度比では5.5%の増加。これは3年分の伸び率であり、1年当たりに換算すると1.8%の増加となる。
 近年の概算医療費の伸び率と比べると、「対前年度比で4.0%は高い数字だが、新型コロナの感染拡大が生じた3年間をならした数字である1.8%は高い水準とは言えない」と厚労省は判断している。
 概算医療費は、医療費の動向を迅速に把握するために、医療機関からの診療報酬の請求(レセプト)に基づいて、医療保険・公費負担医療分の医療費を集計したもので、労災・全額自費などの医療費は含まないが、国民医療費の約98%に相当する。
 2022年度の概算医療費は、2021年度に引き続き2020年度の減少の反動や、新型コロナの患者が増えた影響などがあり、対前年同期比では4.0%という比較的高い伸び率となった。内訳は、入院が2.9%(3年間をならした伸び率は0.9%)、入院外が6.3%(同3.0%)、歯科が2.6%(同2.2%)、調剤が1.7%(同0.6%)となっている。
 外来が対前年同期比で6.3%と高い伸び率だが、診療科別の分析をみると推定できるように、特に小児科や耳鼻咽喉科で生じた新型コロナの感染拡大による当初の受診控えの反動や、2022年度診療報酬改定による不妊治療の保険適用の影響があると考えられる。
 医療費を構成する要素である受診延日数は2.0%の増加、1日当たり医療費も2.0%の増加となっている。医療費の要因分析を行うと、人口増の影響がマイナス0.4%(人口減)、高齢化の影響がプラス0.9%、診療報酬改定等の影響がマイナス0.94%(診療報酬本体のプラス改定と薬価引下げの差)の影響を除いた増加率は4.5%となる。
 また、主傷病がCOVID-19であるレセプト(電算処理分)を対象に医科医療費を推計すると、2022年度で8,600億円(全体の1.9%)程度だった。
 厚労省は「2021年度は4,500億円で、その倍近く増えている。ただし、主傷病ということであるので、他の病気で受診し検査をしたら陽性であった場合や、新型コロナ陽性で他の病気の治療をした場合も含まれている」との説明があった。
 なお、2022年度は休日数等の対前年度差異は、土曜日が1日少なく、休日でない木曜日が2日少なく、連休日が4日少なかったことから、伸び率に対する休日数等補正はプラス0.04%で、2022年度の概算医療費の補正後伸び率は3.9%となる。

産婦人科が高い医療費伸び率示す
 対前年度同期比を年齢階層別にみると、1人当たり医療費は75歳以上で1.8%、75歳未満(未就学者除く)で4.0%、未就学者で10.9%。1人当たり受診延日数は75歳以上でマイナス0.5%、75歳未満(未就学者除く)で2.3%、未就学者で8.7%。1日当たり医療費は75歳以上で2.4%、75歳未満(未就学者除く)で1.6%、未就学者で2.0%となっている。
 医科診療所の主な診療科別の医療費の状況をみると、内科、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科の増加幅が、他の診療科よりも大きくなっている。
 特に産婦人科が、対前年度比で53.9%、2019年度比で63.1%と高い伸びを示した。これは2022年度改定で不妊治療の保険適用が行われたことによる影響が大きいと考えられるが、その他の影響もあると説明されている。対前年度比の受診延日数の伸びが8.0%であるのに対し、1日当たり医療費の伸び率が42.4%に達している。
 小児科も対前年度比で30.8%、2019年度比で44.8%、耳鼻咽喉科も対前年度比で20.0%、2019年度比で9.6%と伸び率が高い。対前年度比は受診控えからの反動があると考えられる。しかし、小児科の2019年度比の44.8%は3年分であることを勘案しても高い伸びだ。2019年度比で受診延日数はマイナス3.1%でまだ回復していないが、1日当たり医療費の伸び率は49.4%と高い。多くの新型コロナの患者を小児科で診療した影響が大きいと考えられる。

「順調に回復は早計」長島委員
 厚労省からの報告を受け、日本医師会常任理事の長島公之委員は、「対前年度の数字だけみると、コロナ禍から回復しているように思うかもしれないが、医療機関の経営が回復しているわけではない。コロナ禍は医療機関を直撃し、ダメージは残っている。順調に回復していると判断するのは早計だ。対前年同期からの伸びは、受診控えからの反動、新型コロナの感染拡大、不妊治療の保険適用などの影響がある。感染症対策の継続にはコストがかかっており、物価高騰・賃金上昇などへの対応もある」と医療機関の経営が不安定であることを訴えた。
 一方、健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「概算医療費の結果に、コロナ禍の影響がさまざまな形で出ている。一方、2022年度改定における不妊治療の保険適用の影響が大きいこともわかる。不妊治療の保険適用についてもそうだが、リフィル処方の導入や、看護職員の処遇改善のために新設した看護職員処遇改善評価料が、当初想定した予算の枠に収まっているかの検証も必要だ」と厚労省に求めた。

 

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