全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2023年)第1041回/2023年10月1日号情報機器をWEB技術でつなげる10年後の「病院情報システム構想」の作成を

情報機器をWEB技術でつなげる10年後の「病院情報システム構想」の作成を

情報機器をWEB技術でつなげる10年後の「病院情報システム構想」の作成を

【医療DX人材育成プログラム③】IT戦略のポイントも説明

 院内のDX化が適切に推進できる院内人材を養成する目的で、全日本病院協会は、広報委員会を担当委員会とし、日本医療教育財団、介護・医療見える化・効率化協会と共同共催で、「2023年度医療DX人材育成プログラム(全10回)」を開講した。今回は、第3回目の講習会の内容を紹介する。
 第3回講習会が、8月17日(木)13時〜 16時にZoom で開催され、132病院、322人が参加した。前半の特別講義において高橋泰教授(国際医療福祉大学)は、毎年秋に東京ビッグサイトで開催されていたHOSPEX Japan(2022年度をもってクローズ)の2022年度展示のテーマビデオとして自らが手掛けた「MIRAI 病院」の映像を用い、現在広く普及しているWEB技術を用いて全ての情報機器がつながった病院の様子を、自宅からスマホで診療予約ができ、手続きや支払いが簡単になった「患者」、AI 画像診断、サマリー作成支援、音声文字変換等の外部のサービスを、電子カルテのボタンを押す、画面のタグを切り替えるだけという気軽さで使えるようになる「診療」、病院の状況をリアルタイムで把握できる「マネジメント」の視点別に紹介した。
 図は、上記MIRAI病院の情報システム図である。このシステムの特徴を一言で述べるならば、「電子カルテ、レセコン、患者スタッフ管理システム、周辺機器の情報モジュール全てがクラウド内のプラットフォーム上に移動し、全てのシステムがAPIを介して情報をやりとりできる」ということである。病院情報システムが図のように変わることにより、(1)新たな設備の追加をしなくとも、モバイル対応が可能になる、(2)セキュリティーのレベルも大幅に向上する、(3)電子カルテのリプレースも必要なく、一つの電子カルテを病院ごとに分割して共同で利用するので、費用も現行の電子カルテより格段に安くなるなどのメリットを得ることができる。
 ただし現状は、病院用WEBカルテを提供しているベンダーが2〜3社で、しかも100床未満の病院用というようなWEBカルテ黎明期にある。また、周辺機器がクラウド化されておらず、電子カルテとの接続が大変な状況にある。
 100床未満でこれまで電子カルテを導入していない病院は、周辺機器との接続の問題も少ないので、現状でもWEBカルテの導入は良い選択になると思われる。一方、200床を超える病院や急性期医療を行っている病院は、時期尚早である。しかしWEBカルテを提供しているベンダーの開発速度は速く、今後WEBカルテに参入してくるベンダーも少なからず現れる。1〜2年で状況は大きく変わる可能性は高く、また、WEB化が早く進めば進むほど、WEBカルテの導入が簡単になる。各病院にとって大切なことは、病院として医療DXの理解を深め、自院の10年後を見据えた「病院情報システム構想」をまず作成し、工程表を作成し、その工程表に沿って機器の導入や入れ替えを進めることである。このようなことを考えられる人材を養成することが、この講座の目標であることを再確認して、前半の講座を終えた。
 後半の小林土巳宏氏( 株式会社MEMORI)によるシステム企画・デザインについての講義では、①システム企画の基礎、②システムデザイン(設計)の基礎、③IT 戦略の立て方についての説明があった。
 ①のシステム企画とは、事業やサービスを実行するに当たってどのようなシステムが必要か、最適かを検討し、システムの計画から導入までを取りまとめていく仕事である。システム企画を進めるために必要な、システムを利用する院内の関連部署の業務やシステムニーズの把握や、実際にシステム設計・構築を行う開発会社を選定し、構築するシステム全体の要望を伝える具体的な手法の説明が行われた。
 ②システムデザインとは、個々の業務を分析し、その業務に最も適したコンピューターシステムを設計することであり、具体的な業務分析の進め方やコンピューターシステムの設計の説明が行われた。
 ③のIT戦略とは、「ITツールを経営戦略の一部としていかに活用するかという視点から経営を考える、医療機関の中長期的かつ具体的な方針・戦略」のことである。IT戦略を立てるポイントの説明が行われた。
 最後にオンラインで講義内容の振り返りテストを行い、第3回の講習会が終了した。

 

全日病ニュース2023年10月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。