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ホーム全日病ニュース(2024年)第1048回/2024年2月1日号日本在宅療養支援病院連絡協議会が第1回研究会を開催

日本在宅療養支援病院連絡協議会が第1回研究会を開催

日本在宅療養支援病院連絡協議会が第1回研究会を開催

~厚労省の医療課長と地域医療計画課長が基調講演、シンポで在支病の役割・展望語る~

 日本在宅療養支援病院連絡協議会(鈴木邦彦会長)は12月9日に第1回研究会をオンラインで開催した。厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長と医政局地域医療計画課の佐々木孝治課長が、それぞれ基調講演を行った。その後、在宅療養支援病院の経営者4名によるシンポジウムがあった。本紙では、その要旨を紹介する。

2024年度診療報酬改定について
  眞鍋氏の基調講演(要旨)

 昨年の骨太方針2023には「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理の連携・推進を図る」という言葉が初めて入った。また同時改定は「物価高騰・賃金上昇」等を踏まえて行うとされた。
 同時改定の基本的な考え方だが、医療では生活の視点を重視し、介護では医療の視点が継続されるような改定にしたい。医療密度の高いところ(7:1病棟や10:1病棟等)から低いところ(介護保険施設や在宅等)へ、なるべく早く患者さんが移るようにしたいと考えている。
 改定の検討状況をみると、在宅医療では、訪問栄養食事指導について新たに議論がある。また24時間の医療提供体制の確保、緩和ケア、看取りなどがテーマになっている。在宅療養支援診療所(以下、在支診)と在宅療養支援病院(以下、在支病)の届出数をみると、在支診は近年横ばい傾向であったが2020年は増加。在支病は着実に増えている。日本の将来を展望すると在宅医療の質的・量的な充実が不可欠であり、在支診や在支病に期待される役割は非常に大きい。
 最近は、要介護度が低い方の訪問診療の利用も増えてきた。そうした中で在支診・在支病の届出をしない理由を調べると、「24時間の往診担当医の確保が困難であるため」が最多であった。これは、連携すれば可能になるのではないか、という考え方の基本資料になる。また各職種が行う在宅医療等に係る報酬の算定回数を比べると、在宅患者訪問栄養食事指導料(診療報酬)及び管理栄養士による居宅療養管理指導(介護報酬)が少なく、在宅で適切な栄養管理ができていないことがわかった。この点を重視していきたい。
 在宅要介護高齢者の要介護度悪化の要因を調べた研究結果(2021年度)によると、年齢と⼀般病院への入院が悪化の重要な要因だと報告されている。このため、高齢者の急性期医療については、病状が把握できている場合は、地域包括ケア病棟や在支病、あるいは老健施設などが中心的に担う方向を出したい。また、介護保険施設等への緊急時の往診については、機能強化型在支病においては対応可能と回答した医療機関が多かったが、在支病全体では70%程度に留まっている。
 介護給付費分科会では、緊急時に原則入院できる体制を確保するなど一定の要件を満たす協⼒医療機関を定めることを、介護保険3施設に義務化する方向が検討されている。それを受けて診療報酬でも何かできないかと思っている。その協⼒医療機関の受け皿となるのは在支病であり、地域包括ケア病床を有する病院だと思う。

第8次医療計画について
  佐々木氏の基調講演(要旨)

 在宅医療を考える上でのキーワードは①人口構造・疾病構造の変化②医療計画③人生会議の3点。今後の医療のメガトレンドをみると、入院は2040年にピークを迎え、その後減少。外来はすでに多くの医療圏で減少局面にある。一方、在宅のニーズは今後も高まる。その体制を構築するための地域医療の設計図が医療計画である。
 第8次医療計画(2024 ~2029年度)における在宅医療のポイントは「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」及び「在宅医療に必要な連携を担う拠点」を医療計画にしっかりと位置付け(これまでは望ましいと規定)、適切な在宅医療の圏域を設定するとしたことだ。医療計画における在宅医療の圏域の設定では、従来の二次医療圏にこだわらず、市町村単位や保健所圏域等の地域の医療及び介護資源等の実情に応じて弾力的に設定し、体制の構築・協議の場を持つことが大事だ。
 在宅医療において積極的役割を担う医療機関は、在支診と在支病を想定している。連携を担う拠点(医療機関、訪問看護事業所、地域医師会等関係団体、保健所、市町村等)では、市町村の取り組みとしっかりと連携していることが大事だ。自立支援・重度化防止を効果的に行うためリハビリテーション・栄養・口腔の連携を一体として推進していきたい。
 次に医療計画の柱のひとつ「地域医療構想」について。2025年の病床の必要量は2015年の合計125.1万床を119.1万床にする目標を掲げていたが現在のところ、ほぼ達成する見込みだ。うち慢性期は35.5万床を28.4万床にする目標に対し29.6万床になる見込みで着実に進んでおり、在宅医療の体制整備の進展が伺える。
 その一方で課題もあり、地域医療構想調整会議における在宅医療の議論の実施率は、構想区域単位で52%に留まっている。また地域医療構想は2026年度以降どうするのか。検討を始めなくてはならないが、在宅医療をより推進し、介護との連携を進めることが求められている。
 人生会議については、そのコンセプトを関係者にしっかりとご理解いただくべく、普及啓発や多職種チーム対象の研修を進めていきたい。大事なのは誰もが日常的に話し合える環境づくりを進めることだ。決して医療費削減や営利目的のために行うものではないし、強制するものでもない。

かかりつけ医が支援する在支病
  シンポジウム(要旨)
◆小川聡子=医療法人社団東山会調布東山病院理事長

 当院は二次救急指定・83床の強化型在支病で、救急医療と、介護と一体となった虚弱高齢者に対する包括的なサービス提供の二つを推進。平均在院日数12.9日、在宅復帰率94.6%を実現している。そのため医師は自分の専門科以外の患者をなるべく診て教えあい「医局として病院総合医機能」を確保している。また在宅患者・家族を支える地域の診療所や介護事業所等も私たちの顧客であると職員に徹底している。施設からや他院の訪問患者の入院も相当数受け入れており、在宅療養支援を進めているが、課題として入退院支援力のさらなる強化などがある。
 東京都調布市(人口約24万人)の医師会の調査によると、訪問診療が可能な医師が2010年の31人から2018年には20人になり、危機感を抱いた。そこで当院は2019年に在宅専門部隊を強化し対応。昨年度は約2,400台の救急車を受け入れたが、「地域の急性期病院の救急医療を支援する役割」を改めて実感した。ただしその後、在宅医療を大規模に展開するメガ在宅診療所が複数できて競争が激化。しかし在宅のニーズは今後ますます増えるので、当院の在宅医療では困難事例、ガン末期、重症例をみる役割を推進していく考えだ。ケアマネジャーやヘルパーなど介護職のマンパワーを強化し、在宅医療の需要を減らすことも必要だと思う。
 累次の診療報酬改定による地域の病院の機能分化の変化をみると、大規模病院に救急車が押し寄せ、医療密度の高い患者を転床できず、目詰まりを起こして応需率が下がっている。結果を出している二次救急病院の診療報酬を上げて活用し、役割分担を進めることが必要だ。

◆星野拓磨=社会医療法人豊生会東苗穂病院副院長・札幌あんしん在宅医療ネットワーク所長
 当院は人口約26万人の北海道札幌市東区で唯一の在支病(161床)である。東区には、「医療介護ネットワーク協議会」が地域医師会の協力を得て設置されており、区内の病院の空床情報をリアルタイムで共有し、地域連携パスの作成などを実施。医療機関の機能分化と連携は進んでいる地域だと言えるが、高齢者の救急の増加は大きな課題だ。
 そうした中で、当法人グループの在宅医療にかかわる組織でつくる「札幌あんしん在宅医療ネットワーク」は、当院など多機関、約20名の医師をはじめとした多職種が所属。年間約1,700名の訪問診療と往診を担当し、看取りは約300名。また、他の医療機関の在宅患者への訪問歯科の提供でも地域で活用されるよう努めている。
 同ネットワークにおいて当院は在支病として、①一般急性期入院②検査入院③訪問診療導入時の評価のための入院④他院からの転院対応⑤レスパイト入院といった役割を担い、急性期病棟で対応している。月約120人の入院のうち約4割が在宅関連の入院患者で、多いのは①と④。即日入院が難しい場合は、翌日入院で対応するなど努力している。入院中は回復期病棟レベルのリハビリテーションを提供。また入院中に人生会議をしっかりと行うことが在支病の役割であり実践している。
 在支病としての課題としては、◇緊急入院対応に限界があり改善策を検討中◇他法人との迅速な情報連携の構築◇特養など高齢者施設対応がある。

◆梶原崇弘=医療法人弘仁会板倉病院理事長兼院長
 当院がある千葉県船橋市は人口約65万人。医療資源が少なく二次救急病院は当院を含め市内に9か所のみ。病診連携を深めつつ在宅を進めることが課題だ。なお在宅医療では訪問専用クリニックが参入してきており、そうしたところとの連携も求められている。
 当院(急性期91床)は船橋南部地域17万人の医療圏で唯一の病院で、地域に密着した高機動都市型病院として救急車を年に約2,800台受け入れるなど、救急・地域医療・予防を3本柱に展開。法人全体としては地域の他の医療機関等との連携を強化して「都市型地域包括のモデル」をめざしている。
 そのネットワークに他の医療機関に加わってもらうため、CTやMRIなど院内のインフラを地域に開放した。予約操作は各診療所の診察室等で完結し、検査結果も届く。また読影をつけることで各診療所の担当医の不安も解消でき(読影依頼料は当院負担)、質の高い医療を確保している。
 連携するクリニックや介護保険施設等との情報共有も進めている。これはコロナ療養ホテルの支援で、当院で使っているスマートフォンを実験的に貸し出し、速やかな連携ができた経験を受けて展開。ケアマネジャーにも貸し出す計画だ。介護職は病院に相談することにストレスを抱えている場合が多いが、それを緩和。患者の状態を画像で共有し診察の必要性を迅速に判断できるメリットもある。
 働き方改革では、スマートフォンを活用した院内コミュニケーションの円滑化を進め、医事課の保険請求業務を除き、残業をほぼ解消できた。AI問診も導入し、看護師の負担軽減、待ち時間の減少など患者の満足度向上にもつながっており、メリットは大きい。
 地域密着中小病院と在支病はイコールであり、当院は都市型地域包括病院のトップランナーとして、また地域をデザインする医療法人として今後も進化していきたい。

◆横倉義典=社会医療法人弘恵会ヨコクラ病院院長
 主要産業が農業・漁業の福岡県みやま市(人口約3.5万人)にある当院199床は、終戦直後から地域とともに歩んできたが、これからは求められる役割を明確に考えて動く必要がある。全国の病院の約7割は200床未満。担うべき役割は「在宅との連携」であり、在支病になっていかなくてはならない。
 市内に病院は2か所で救急告⽰病院は当院のみ。新病院建設後の2016年には災害拠点病院の指定も受けた。また最近は⼦育て・教育・地域おこしとの連携強化も進めている。みやま市の2020年の人口ピラミッドは⽇本の2040年と一致しており、それを踏まえた対応が今後は求められる。
 これらの機能にプラスして、これからはかかりつけ体制の整備と在宅医療の体制整備が必要だ。かかりつけ体制では、診療所の減少も背景にコロナ禍前から「かかりつけ患者」の登録を推進。登録者には◇特定健診などの推奨◇定期的な各種検診の促し◇予防接種などの先⾏案内などを行う。病床は、本当に必要な病床に転換していくことが重要だ。在宅医療の体制整備では、病院と在宅を担う診療所との連携を進めている。また、市と連携し人生会議関連の取組みも行っている。
 今地域は人口減少、特に若年人口の減少に直面している。医師の働き方改革の影響は読めないが、当院も医療DX、タスクシフト・シェアを推進し、医療の質を落とさずに人手を減らして職員が働きやすい環境整備を追求しながらやっていかなくてはいけない。
 在支病になる元の病院の機能は、それぞれ違うと思うが、いろいろな病院の知恵と英知を集める必要がある。ぜひ日本在宅療養支援病院連絡協議会に入っていただきたい。

 

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  • [1] 2020.12.1 No.976

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/201201.pdf

    2020/12/01 ... 主丸中央病院)、横倉義典(ヨ. コクラ病院). 〇2017年石川. 「外国人技能 ... ば医局会議や医療安全対策会議、院内. 感染対策会議といった専門的な会議の.

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