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ホーム全日病ニュース(2024年)第1048回/2024年2月1日号診療側と支払側が2024年度改定の意見提示

診療側と支払側が2024年度改定の意見提示

診療側と支払側が2024年度改定の意見提示

【中医協総会】支払側からは適正化の観点を含めた詳細な見直し案

 中医協(小塩隆士会長)の診療側と支払側は昨年12月27日の総会に、2024年度診療報酬改定に対する意見をそれぞれ提示した。
 診療側は、物価高騰・賃上げに対応できる改定とするとともに、新興感染症にも即座に対応できる平時でも余力のある医療提供体制の構築が必要と強調した。また、医療・介護等の6年に一度の同時改定であることを念頭に置き、必要財源を配分することを求めた。
 一方、支払側は、これまでの中医協における議論を踏まえ各項目について、厚生労働省が示した適正化の論点を含めた詳細な見直し案を出している。
 診療側は、現行の診療報酬を大きく変える見直しには慎重な立場だ。「(適正化の論点を含む)これまで中医協で検討してきた項目は、あくまでも財源を考慮せずに議論されてきたもので、改定率を踏まえたメリハリ付けや、優先順位に基づき実施しないものが出てくるのは当然である」とし、支払側の意見をけん制する形となっている。
 外来に関しては、昨年12月20日の武見敬三厚労大臣と鈴木俊一財務大臣の大臣折衝で決まった改定率において、マイナス0.25%分は「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化」を行うとされたことから、支払側が、適正化の観点で様々な提案を行った。
 具体的には、◇生活習慣病管理料について、療養計画書の記載を簡素化し、その効果を点数に反映させ、月1回の受診を必須とする要件を廃止する。リフィル処方箋や長期処方に対応可能なことも要件に追加する◇特定疾患療養管理料については、高血圧・糖尿病・脂質異常症は対象から除外し、生活習慣病管理料の中で評価する◇外来管理加算は廃止する◇地域包括診療加算は特定疾患療養管理料や生活習慣病管理料と併算定でき、二重評価になっていることの考え方を整理─などがある。
 一方、診療側は、「外来管理加算や特定疾患療養管理料等のかかりつけ医機能の評価に係る点数は、対象疾患への関わりや機能の違いについて、中医協で審議した上で導入されたものであり、質の高い生活習慣病の治療・管理に貢献してきたことを踏まえれば、これまでの経緯・運用を無視するような見直しは行うべきではない」とした。
 また、特定疾患療養管理料については、新しい疾患概念や治療法が増加したことや、超高齢社会による疾病構造の変化に適切に対応するため、「対象疾患の拡大」が必要とした。小児科外来診療料・小児かかりつけ診療料が一部の加算等を除き包括点数となっていることから、医師の技術料を十分評価した点数への引上げも主張した。

入院医療の評価の見直し
 入院医療について、診療側はまず入院基本料の適切な評価を主張した。物価高騰、光熱費等の高騰に対応するとともに、医療機関の設備投資・維持管理費用や医療従事者の人件費を適切に評価することを基本的な考えとした。その上で、評価体系の見直しは現場の不安定性を惹起するため、最小限にとどめるべきとしている。
 入院基本料に大きな影響を与える「重症度、医療・看護必要度」についても、評価項目の大幅な見直しは避けるべきと強調した。
 これに対し支払側は、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の大幅な見直しを求め、詳細に記述した。B項目について、「急性期の機能を適切に反映する観点で、患者の状態を評価する指標として用いないことが妥当」とし、廃止は主張しないまでも、「重症度、医療・看護必要度」の該当患者の基準からは除外すべきとした。
 急性期一般入院基本料の「重症度、医療・看護必要度」の該当患者の「割合」も、シミュレーション結果に基づく「厳格化」が必要とした。また、急性期一般入院料1の平均在院日数は、短縮が進んでいる現場の実態を踏まえ、機能分化を推進する観点から、施設基準を14日にするべきとしている。
 2024年度改定では、高齢者救急への対応が大きなテーマとなっている。
 支払側は、◇救急患者の受入れ◇一定の医療資源投入による急性期からの速やかな離脱◇リハビリテーションと栄養管理の一体的な提供◇退院に向けた適切な意思決定支援◇在宅医療や介護との連携─を包括的に提供できる「新たな病棟類型を創設するべき」と主張した。その際に、看護配置は10対1を想定し、一定の経過措置は認めるとしても、急性期一般入院料2~6は廃止すべきとしている。
 これに関する診療側の言及はない。

医師の働き方改革への対応
 2024年度から医師に対する時間外労働規制が施行される。時間外労働に上限が設定されることから、医師によっては時間外労働時間に含まれない宿日直許可を得ることが重要になる。
 支払側は、「宿日直許可を得た医師による特定集中治療室等の運営は、専任の医師による24時間体制を前提として高い特定入院料を設定していることに鑑みれば、望ましい姿ではない」と指摘。一方、「医師の働き方改革を踏まえ、宿日直許可が現実的な対応策になり得るのであれば、通常より低い特定集中治療室管理料の区分を新設することは、検討の余地がある」とした。ただ、新区分の届出では、「特定行為研修を修了した看護師等の配置により医療の質を一定程度担保するべき」としている。
 診療側は、医師の働き方改革に関連する意見として、◇地域医療体制確保加算の要件緩和とさらなる評価◇医師事務作業補助体制加算を全病床種別で算定可能とする。緊急入院患者数や全身麻酔による手術年間件数などの施設基準要件も見直し。外来のみでの診療所での算定も可能とする◇急性期看護補助体制加算を入院全期間にわたって算定可能とする◇病棟薬剤業務実施加算1の病棟単位での届出を可能とする。病棟薬剤業務実施加算2の単独での届出を可能とする─などをあげた。

在宅医療の充実と適正化
 超高齢社会の到来で、在宅医療の需要は増大しているが、供給が追いついていない状況がある。多くの医療機関が在宅医療に参加できる対応が必要とされる一方、在宅医療専門医療機関の在宅医療が、現状の診療報酬と不整合を起こしているとの指摘もある。
 診療側は、在宅医療の充実のため、◇主治医の専門以外の診療科のチーム医療でも在宅療養指導管理料を算定可能とすること◇機能強化型在宅療養支援診療所・病院(連携型)の看取り要件の撤廃もしくは緩和◇在宅療養移行加算の要件緩和及び加算2の場合の連携医療機関に対する評価の設定◇在宅患者訪問診療料(Ⅰ)に小児ターミナルケア加算を新設─などを提案した。
 適正化の観点での見直しに対しては、「入居する場所のみをもって点数設定するのではなく、個々の患者に対する医療の質・手間・技術を正当に評価すべき」として、同一建物居住者に対する訪問診療料、単一建物居住者に対する在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料の点数設定の見直しが必要とした。
 一方、支払側は、「訪問診療を極めて多く実施している医療機関は、ターミナルケア加算や往診等の実績が少なく、効率的に訪問診療を提供している実態を踏まえ、厳格な施設基準を設定し、要件を満たせない場合には在宅療養支援の役割を十分に果たしていないと判断するべき」と強調している。

リハビリテーションの見直し
 介護報酬との同時改定である2024年度改定では、リハビリテーション・栄養・口腔管理の一体的な推進が重要なテーマとなっている。
 診療側は、運動器リハビリテーション料について、現行では年齢にかかわらず同じ点数を設定しているが、成長期である15歳以下のリハビリテーションは年齢別にきめ細かく対応することで、将来の身体障害を減少させることができるとして、小児加算の新設を提案した。また、ロコモ・フレイルに関する指導管理の評価も必要とした。
 支払側は、疾患別リハビリテーションの通則や退院時共同指導料2の要件として、介護との連携に関する規定を設ける◇退院時における栄養状態の確認も入院基本料等の通則に追加する─ことなどを提案した。医療機関における栄養管理体制が、入院基本料等の通則に位置付けられていることから、不十分な病院への厳しい対応も求めている。

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2023.12.15 No.1046

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2023/231215.pdf

    2023/12/15 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は12月. 6日、2024年度診療報酬改定に向けて ... みを紹介。救急、入院のみならず在宅. 療養支援病院として、さらにかかりつ.

  • [2] 2022.6.1 No.1010

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2022/220601.pdf

    2022/06/01 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は5月. 18日、2022年度診療報酬改定の答申書 ... いて、明確な差異がみられた。リハ職. 訪看は、訪問リハと比べて、「サービ.

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