全日病ニュース

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療養病床入院料について

療養病床入院料について
~摂食嚥下機能回復体制加算、緩和ケア・障害者施設等入院料等の見直し~

診療報酬改定シリーズ●2022年度改定への対応④
全日本病院協会 医療保険・診療報酬委員会委員  田蒔正治

【初めに】
 療養病床については大きく二つの改定ポイントがあった。一つは療養病棟入院料2の経過措置注11(以下注11)の見直し、二つ目は中心静脈栄養の実施に係る見直しである。これによって摂食嚥下機能の回復に必要な体制として、摂食嚥下機能回復体制加算が新たに設けられた。また、障害者施設等入院基本料が見直され、重度意識障害を有さない脳卒中患者は、療養病棟入院料の評価体系による点数算定に変更された。

【療養病棟入院料の見直し】
 中心静脈栄養の実施に係る見直しとして、摂食・嚥下機能の回復に必要な体制を有していない病棟の場合、中心静脈栄養実施患者は医療区分3から2の算定となった。なお、今年3月31日時点で療養病棟入院料1・2の場合は、必要な体制が確保されているとして今年9月30日まで経過措置あり。また、同時点に同病棟で中心静脈栄養を実施している状態が継続している間は区分3の算定が可能となった。
 そして注11において、「医療区分2・3該当患者割合が5割未満」「看護職員配置20対1を満たさず、25対1以上」の場合、療養病棟入院料2が85%から75%に減算と経過措置が2年間延長された。さらに注11についてFIMの測定に係る見直しが設定された。疾患別リハビリテーション算定患者にFIM測定を月1回以上行っていない場合、出来高で一日につき2単位までという制限が課された。また、医療区分2の疾患別リハビリ算定患者にFIM測定を行っていない場合は、医療区分1の点数算定となった。なお、これらの変更には今年の9月末までの経過措置がある。

【摂食嚥下機能回復体制加算について】
 厚労省より示された資料(右図)では、中心静脈栄養や鼻腔栄養等を実施している患者の経口摂取回復に係る効果的な取組を推進するため、摂食嚥下支援加算の名称を摂食嚥下機能回復体制加算に変更した。点数を3区分にして、新たに算定要件・施設基準を設けた上位基準(加算1・2)と療養病棟の区分(加算3)を追加した。算定要件に全員・月1回以上のFIM及びFOISを測定することが明記された。地方厚生局への年1回の実績報告(平均値から患者ごとの開始時と直近の測定値に変更)も必要。施設基準に加算1・2は摂食嚥下支援チームを設置し、医師または歯科医師、適切な研修を修了した看護師または専従の言語聴覚士、管理栄養士であり、STは専従要件とされた。ST等の人員確保が難しい医療機関が増えそうだ。実績で加算1は鼻腔栄養・胃瘻・中心静脈栄養患者の経口摂取回復率35%以上と高く、加算3は嚥下機能が回復し、中心静脈栄養を終了した患者が1年2人以上となった。

【障害者施設等入院料等の見直しについて】
 障害者病棟に入院する重度の意識障害を有さない脳卒中の患者(重度の意識障害者、筋ジストロフィー患者・難病患者等を除く)について、患者が病棟に入院してから90日までの間に限り、療養病棟入院料の評価体系を踏まえた点数設定に変更された。なお、療養病棟入院基本料の医療区分3(スモン・24時間監視・管理状態・人工呼吸器管理等)に相当する場合、従来からの点数を算出(出来高)する。
 特殊疾患病棟入院料においても同様の取扱いとなった。栄養サポートチーム加算(200点・月1回)が対象病棟として新たに加えられ、新設の看護補助体制充実加算、報告書管理体制加算(7点)も算定可能となった。

【緩和ケア病棟入院料の見直しについて】
 緩和ケア病棟入院料については、評価の見直しが行われ100点減算となった。一方で患者の状態に応じた入院医療の提供をさらに推進するため、疼痛の評価等を実施した場合に、緩和ケア疼痛評価加算100点が新設された。
 算定要件に緩和ケア病棟入院料を算定する病棟に入院している疼痛を有する患者に対して、「がん疼痛薬物療法ガイドライン」「新版がん緩和ケアガイドブック」「適切な緩和ケア提供のための緩和ケアガイドブックの改定に関する研究」等の緩和ケアに関するガイドラインを参考とし、疼痛の評価、その他の療養上必要な指導を行った場合に緩和ケア疼痛評価加算として、一日につき100点が所定点数に加算された。

【まとめ】
 今回は療養病床においては療養病棟入院基本料1・2に関する点数や施設基準の変更はなかったが、注11の見直しとして、25%減算とし、経過措置が2024年3月末までの再延長となった。さらに当該病棟での疾患別リハ算定が多いことから月1回以上のFIMが課された。
 また、医療区分3における中心静脈栄養の実施割合が高く、摂食嚥下機能の回復に向けた摂食嚥下機能回復体制加算が新設され、療養病棟も加算3が追加された。高齢化社会が進む中で、フレイル・サルコペニア対策に栄養・リハビリは欠かせないが、摂食嚥下支援チームの設置(特にST確保)と実績記録(FIM等)・報告がキーワードとなる。今後、中医協等において医療区分の根本的な見直しも議論されるかもしれない。
 また、障害者施設等入院基本料等の見直しがあり、重度意識障害を有さない脳卒中患者を療養病棟入院料の医療区分で評価されたことで、今後、療養病棟入院料への算定見直しが一層進むことも予測される。
 最後に、データ提出加算が障害者施設等入院料・特殊疾患病棟入院料・緩和ケア病棟入院料等で要件化(経過措置あり)されたことも注目が必要だ。

 

全日病ニュース2022年9月1日号 HTML版

 

 

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