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ホーム全日病ニュース(2024年)第1051回/2024年3月15日号8割近くが電子カルテ・オーダリングシステム導入

8割近くが電子カルテ・オーダリングシステム導入

8割近くが電子カルテ・オーダリングシステム導入

【報告 2023年度 個人情報保護に関するアンケート調査報告】
個人情報漏えい保険加入は初の4割超 個別同意は院外への情報提供で判断分かれる
個人情報保護担当委員会 委員 森山 洋

 当会では2006年より「個人情報保護法認定保護団体」としての活動として、(1)会員病院における個人情報保護の取り組み状況を把握する(2)過去に実施した同アンケートとの比較をし、経年的な取り組み状況の変化について明らかにすることを目的として、全会員施設を対象に個人情報保護管理に関する継続したアンケートを実施し、本紙面にて簡易報告を、そして全体報告については当協会のホームページ上に掲載している。

【調査方法等】

  1. 調査票を病院個人情報管理担当者に①データ送信によるPDFファイル送信②メール利用による②郵送③FAXを併用送付し、自計記入後記名で、郵送、FAX、PDFにて返送された。
  2. 会員病院2,564病院(前年2,537病院(前年比+27))
  3. 回答施設数405病院(前年404(前年比+1))、11年連続提出は14施設(全体比3.5%)であった。
  4. 回答率は15.8%(前年15.9%(前年比▲0.1%))
  5. 経年評価のための連続提出施設は10年連続で15施設(前年は8年連続施設抽出で31施設)
  6. 調査期間は2023年9月22日から10月27日、回収率向上のため2023年12月15日まで延長した。

【回答率について】
 委員会としては回収率アップを鑑みアンケート実施時期を昨年より2か月前倒しし、さらに回答期間を1月以上延長したが、回答率は過去最低であった昨年よりさらに0.1ポイント低い15.8%で、コロナ禍以降下がったままであり、今回も20%超まで回復することはできなかった。
 以下、設問群毎に結果・考察を概要報告する。

表1 回収率等推移(過去11年)

【設問1.回答施設概要】
 回答施設の設立主体、病床数には例年と比し、割合として変化は見られなかった。2021年に地域包括ケア・回復期リハ、2022年に介護医療院を追加した病床構成についても特に大きな変化は見られなかった。

【設問2.個人情報への組織的対応・準備について】
 「2.(1)個人情報管理責任者について」は職種別(上位2職種「①医師」「④事務職」)、役職者別順位(同「②院長」「④事務長」)に変動はない。(2)「監査責任者の設置の有無、設置職種について」は法的には設置義務はなく、望ましいとされているが、最も多いのは「特に定めていない」で、3割強の施設は監査責任者を定めていないままである。「2.(3)規定、誓約書等整備」の設問では、「⑥業者の誓約書」の整備率が初めて50%を割り込み48.9%となった。
 「(4)掲示物について」は複数回答であるが、上位3順位は変わらず「⑧ホームページ」64.9%、「⑤病棟掲示板」58.3%に続き、「入院案内」「出入口掲示板」が50%弱となっている。
 2.(5)①~⑦は2022年からの新設問であり、2021年改正で厳格化された第三者提供に関わる、症例検討、学会発表などへの利用に際した同意取得方法についての設問だったが、施設により特に判断が割れているのは、主に院外での使用となる「③学会発表」「④院外への学術目的での情報提供」(表2、3)であった。要配慮個人情報として慎重を期し、個別の同意を取っている施設が多い印象である。
 2.(6)以降は情報システムに関わる設問である。「2.(6)電子カルテ・オーダリングシステムの導入状況について」では、「①電子カルテ・オーダリング両方」が8割に近い77.8%、一方「②オーダリングのみ」は5.7%、「③どちらも導入していない」施設は16.0%と、共に過去最低値となり、会員施設で電子カルテ導入が進んでいることが確認された。
 2022年診療報酬改定において、400床以上で強化が義務化された病院への情報システムのセキュリティ対策についての設問2.(7)では、現行病床規模別での対応状況を調査できないことから、現在1.(2)での病床区分の区分けが「①500床以上」「②200~499床」となっている点について項目設定を検討する必要がある。
 2.(8)システム内の個人情報持ち出し制限については、「⑤メディア接続部の取り外し」「⑥プログラムによるUSB使用制限等物理的制限」「プログラムによる制限」が、共に強化されてきていることが確認された。

表2 学会・論文での発表

表3 院外への学術目的での情報提供

【設問3および4.研修への取り組みについて】
 3.は院内、4.は外部研修に関わる設問である。
 「3.(1)院内研修実施の有無」では実施率は84.0%(前年82.4%)と過去最高に、「(2)実施時期」は「②入職時」「③単独」「④併催」の順で変化なし、「(3)対象」は「①全職員」で95.0%、「(4)開催数」は「年1回」が62.9%、「年2回」が22.4%であった。「(5)研修で工夫している点」では2020年以降急伸した、「③DVD/ビデオの視聴」が5割を超え(50.6%、2018年25.2%)、外部講師の招致は減少が続いた(20.9%、2018年34.7%)。
 「4.外部の研修活用について」は、コロナ禍影響からの回復傾向が見られ、4.(1)の参加有無を問う設問では2021年の13.1%から昨年は24.0%、今年は微減の23.5%であった(2018年31.6%)。

【5.保険加入・苦情・補償/6.相談・問合せ】
 5.(1)個人情報漏えい保険加入状況は、「①加入している」が41.7%(前年37.9%)で、2013年に23.6%であったが、右肩上がりで今回初めて4割を超えた(41.7%)。
 「(2)苦情発生時の相談相手」は「弁護士」が83.7%(前年79.7%)、「病院団体」は3割前後で過去11年変化がない。「(4)金銭補償例の有無」は変化なかったが、「(3)苦情発生の有無」では1件以上の受付発生施設が28施設で6.9%、うち年間5件までの少数苦情発生割合が75.0%(前年72.8%、一昨年65.5%)と微増傾向が続いている。苦情発生した施設のうち、金銭補償を行ったのは1施設のみ(5.(4))で増加傾向はみられない。
 「6.(1)個人情報保護に関する相談・問い合わせの有無」では、苦情以外の①相談有り5.9%と減少傾向が続き、自由記載欄でも特別な傾向は見られなかった。

【7.開示請求に関して】
 「(1)病院で定める正規の手続きを経た診療情報開示の請求」を受けた施設割合は86.4%(前年84.2%、2013年72.4%)と高値で安定、さらに微増傾向が続いている。「(2)の開示請求者」は「⑦弁護士」「①本人」で上位順位変動はなかった。
 「(3)不開示とした事例が1件以上あった」率は10.0%(前年6.4%)、「(4)開示請求件数の傾向」では「①増加した」が25.2%(前年30.9%、過去年最高は2016年の35.9%)、「③変わらない」という施設も50%前後の回答で例年と変化ない。
 「(5)開示方法の周知方法」では「④問い合わせがあった時に口頭説明」45.9%(前年48.7%)、「(6)開示費用」では「①コピー代」(中央値20円/枚)「②X線写真コピー」(中央値1,000円/枚)についても相場に変化はなかった。

【8.マイナンバー制度・個人情報保護法改正について】
 「(1)2021年改正についての認知度」の設問では「①知っている」が80.2%(前年71.3%)と、認知度が8割を超えた。「(4)具体的に実施したもの」では「①外来患者への同意取得」が30.1%(前年24.0%)と増加したことが特に目立った変化であった。
 2022年に新設した設問8.(6)「個人情報の漏洩時に個人情報保護委員会に報告する事態(複数回答)」では、8.(1)の改正の認知度(80.2%)に近い正答率(77.5%、2022年75.5%)となり、一方、誤回答率は昨年(28.0%)同様25.9%あり、約4分の1の施設では改正内容を具体的に把握していない状態が続いている(表4)。

表4 個人情報保護委員会への報告

【9.当協会の個人情報保護法への取り組みについて】
 「(1)認定個人情報保護団体としての研修会開催の認知度について」では「①知っている」が65.7%(前年64.9%、「(2)研修会参加」では「①ベーシックコース」「②アドバンストコース」合わせて59.0%(前年57.9%)、「(3)当協会が認定個人情報保護団体であること」でも、「①知っている」が63.2%(2013年61.8%)と当委員会設置後17年経過しているが、全て6割前後と伸び悩んでいることが悩ましい限りである。
 その後の「(4)活動内容」「(5)相談経験」では「①相談したことがある」が7.4%(昨年7.7%)と例年値で安定している。「(6)当協会ホームページ上の個人情報保護方針や規定集の例示の活用について」まで「①活用している」は例年同様3割程度(31.6%、2022年33.4%)で変化はなかった。
 「(7)当協会の個人情報保護Q&A本(事例集)について」の認知度も調査しているが、改正法の具体的内容を4分の1の施設が認識していない(8 .(6))ことがわかったので、当委員会の委員が2023年2月に出版した『医療・介護における個人情報保護Q&A―改正法の正しい理解と適切な判断のために(第3版、2023)』を参考にしていただき、会員施設には改正法への適切な対応をお願いしたい。

【まとめ】
 法施行後18年を経た個人情報保護法も2015年改正、2017年全面施行、さらにAI、ビッグデータ、国境を超えるデジタル化の波により複雑化する社会の変化に伴い、2020年改正、2021年本施行と、環境変化対応を含めた複数改正もなされ、法としての認知度、組織的管理の厳格化も求められている。要配慮個人情報を扱う医療・介護施設にとってさらに対応の重要性は増している。
 当会認定個人情報保護団体として毎年の①本アンケートの実施②ホームページでの資料提供③メール、電話での相談業務の実施④年複数回の研修会開催⑤今次のQ&A第3版発行など複数の活動を通じて、直接・間接的に会員施設、法人の現場支援となる施策を実施している。しかし、その活動認知度、研修会の参加率の向上など課題の解決に至っていないことをあらためて痛感するアンケート結果となった。
 今後も認定個人情報保護団体、個人情報保護担当委員会として必要な活動の中で、認知度向上を含めて、会員施設での個人情報保護への取り組み支援を行ってまいります。


 

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