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ホーム全日病ニュース(2024年)第1051回/2024年3月15日号医学部臨時定員削減へ2040年までの医師養成数の推計示す

医学部臨時定員削減へ2040年までの医師養成数の推計示す

医学部臨時定員削減へ2040年までの医師養成数の推計示す

【厚労省・医師の偏在対策等検討会】偏在対策は医師多数地域の制限も指摘

 厚生労働省の医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会(遠藤久夫座長)は2月26日、2026年度の医学部臨時定員について議論した。2040年に向けた医師養成数の推計を踏まえ、2026年度の医学部臨時定員を削減すべきとの意見が多くあがったが、全日病副会長の神野正博構成員は慎重な姿勢を示した。全国知事会は臨時定員枠の維持を求めた。医師の偏在対策については、医師多数地域から少数地域に医師の移動が進む強化策や、医師多数地域の開業制限を視野に入れた検討の必要性も指摘された。
 医師の需給推計は2029年で均衡し、その後は人口減少に伴い将来的に医師需要が減少局面に入ると推計されていることから、医学部臨時定員を削減する方向性でこれまで議論が進められてきた。一方で、医師少数県などの医師不足は解消されておらず、神野構成員らは「真に有効性のある医師の偏在対策とセットで行われることが必要」と主張している。そのような中で、本検討会は今年春までに2026年度の医学部臨時定員の方針を決定する必要がある。
 検討にあたり、厚労省は2040年に向けた医師養成数の推計を示した。まず、2024年の医学部定員は9,403人で、約116人に1人が医学部に進学するが、2024年度の募集定員数で固定した場合、2050年には約85人に1人が医学部に進学することとなる。
 一方、「2024年の18歳人口に占める医師養成数の比率」を固定した場合で医師養成数を算出(図表)すると、2030年には9,067人、2035年には8,308人、2040年には7,093人となり、2035年時点で2024年の恒久定員数の8,398人を下回る見通しとなる。
 同様に、2024年の18歳人口に対する恒久定員数の比率をもとに算出すると、医師養成数は2030 年には8,098 人、2035年には7,420人、2040年には6,335人と減少し、その後も人口減少に伴い減少する。つまり、臨時定員をゼロにすると、より早い段階で現在の恒久定員数を下回る見込みとなる。
 さらに、臨時定員増員前の2005年の医師養成数の比率を2024年の18歳人口に当てはめて算出すると6,130人となる。定員数を2005年の水準に戻すことでさらに大幅な減少が見込まれることを示した。
 他方、35歳未満の医療施設従事医師数の推移をみると、地域枠等医師が従事開始した2014年以降に増加。医師少数都道府県は医師多数都道府県と比べて伸び率が高く(2012年を100として、2020年の医師少数都道府県の若手医師数は20.1%増、医師多数都道府県は5.1%増)、若手の医師の地域偏在が縮小してきているとした。
 そのほか、慶應義塾大学教授の印南一路構成員と早稲田大学教授の野口晴子構成員が、医師数と医療費、賃金との相関関係を報告した。それによると、◇医療費増加の最大要因は医師数で、医師数の増加を放置すると、医師1人当たりの収入は減少。人口当たり医師数は増加し総医療費は増加◇医師偏在指標が高い都道府県ほど医師の年間報酬額は有意に低い傾向がある―との分析結果が示された。
 これらを受け、多くの構成員から臨時定員を削減すべきとの意見が出たが、神野構成員は、「医師養成数のあり方と偏在対策は『対』であり、偏在対策の政策が乏しいままでは、臨時定員数を大幅減することは難しい」と強調した。その上で、「例えば東京のような医師多数都道府県から医師少数都道府県への移動を促すといった、病院、診療所の偏在も改善させることを含めて(地域枠以外の方法でも効果のある対策を)検討すべき」との考えを示した。
 印南構成員はこれに賛同し、「若手医師が特に東京で開業するのが、偏在を悪化させる大きな要因の一つと言える。自由開業制が大前提であり、判断は難しいが、医師の立場に立って考えると、医師多数地域の開業制限を考えたほうがよいのではないか」と述べた。
 全国知事会からは、「医師偏在是正策として他の有効な対策がわからない現状では、都道府県間の偏在是正のために引き続き臨時定員枠を活用すべき」と、臨時定員の維持を求める意見が出された。
 一方、日本医師会常任理事の釜萢敏構成員は、「2026年度の臨時定員(の比率)は増やさない方向性で考える必要があり、臨時定員増員前の2005年の水準を基本に定員数を考えるべき」と厳しい水準での検討の必要性を強調した。医師の偏在対策については、「すでに医師になった人が医師の少ない所で働くという選択をしない限り、医師少数地域に医師を増やすのは難しい。国はある程度のインセンティブを与えながら進めるべき。激減緩和は必要だが、定員を減らしていく方向を目指さないと、後々大きな禍根を残すのではないか」と述べた。

 

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