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ホーム全日病ニュース(2022年)第1012回/2022年7月1日号外来医療計画の実効性の確保をめぐり議論

外来医療計画の実効性の確保をめぐり議論

外来医療計画の実効性の確保をめぐり議論

【厚労省・第8次医療計画検討会】CTの共同利用の意義薄れたとの意見相次ぐ

 厚生労働省の第8次医療計画検討会(遠藤久夫座長)は6月18日、外来医療計画をめぐり議論を行った。「人材配置」と「医療機器の効率的な活用」がテーマとなった。「人材配置」では、無床診療所が都市部に偏在する状況を踏まえ、外来医師偏在指標を含む対策の実効性をどう確保するかを論点とした。「医療機器の効率的な活用」については、CT・MRIなどの高額医療機器の効果的な共同利用のあり方が論点となったが、特にCTに関して、共同利用の推進の意義が薄れたとの指摘が相次いだ。
 外来医療計画は、5疾病5事業および在宅や地域医療構想とともに、医療計画に含まれる。
 2018年に成立した改正医療法等では、「外来医療機能の偏在・不足等の情報を可視化するため、二次医療圏を基本とする区域ごとに、外来医療関係者による協議の場を設け、夜間救急医療体制の連携構築など地域における外来医療機関間の機能分化・連携の方針とあわせて協議・公表する仕組みの創設」が盛り込まれ、外来医療計画ができた。
 また、2021年に成立した改正医療法等では、「医療機関に対し、医療資源を重点的に活用する外来等について、報告を求める外来機能報告制度の創設等」を行うことになった。
 これらに基づき外来医療計画においては、診療所の医師の多寡を外来偏在指標として可視化することや、紹介受診重点医療機関を位置づけること、「地域の協議の場」で外来機能の明確化・連携に向けて協議を行うことなどの仕組みが設けられることになった。
 同日の検討会では、「人材配置(外来医師偏在指標・地域で不足する外来医療機能)」と「医療機器の効率的な活用(医療機器の配置状況の見える化・共同利用計画の策定)」がテーマとなった。
 「人材配置」については、すでに多くの二次医療圏で外来患者数が減少局面にあるなど、今後の人口や外来患者の動向を踏まえて外来医療計画を定める必要があることや、外来医師偏在指標を含む対策の実効性をどう確保するかが論点となった。
 外来医師偏在指標は、地域ごとの外来医療機能の偏在・不足を客観的に把握するためのものだ。外来医師偏在指標の上位33.3%に該当する二次医療圏を外来医師多数区域と設定。「地域の協議の場」で、少なくとも外来多数区域においては、新規開業希望者に対して、協議の内容を踏まえ、在宅医療、初期救急(夜間・休日の診療)、公衆衛生(学校医、産業医、予防接種等)などの地域に必要とされる医療機能を担うことを求めるとしている。
 あわせて、新規開業希望者は、医療需要の状況など適切な情報に基づかずに開業を判断していることがあるため、外来医師偏在指標や医療機関のマッピングに関する情報など二次医療圏の情報を新規開業希望者に提供することにしている。
 日本医師会副会長の今村聡委員は、「新規開業希望者は、不動産業やコンサルタント会社などからの偏った情報に誘導されて開業してしまう実態がある。いかに正しい情報を提供するかが重要であり、そのためには開業を決断する前の段階で、適切に情報を提供しなければならない」と強調した。
 外来医療計画の目的として、外来医療を担う医師の偏在是正がある。医師不足地域が数多くあるなかで、都市部に無床診療所の開設が偏る傾向があるからだ。人口や外来患者の動向をみると、すでに多くの二次医療圏で外来患者数が減少局面にあり、2020年で214の医療圏で外来患者数がピークを迎えていると見込まれている。一方で、在宅患者数は今後増加し、2040年以降にピークを迎えると予想されている。
 ただし、全日病副会長の織田正道委員をはじめ複数の委員が、その状況は地域により複雑であることに注意を促した。
 織田委員は、訪問診療受診率が85歳以上、緊急搬送件数が90歳以上で急増することなどを踏まえ、高齢の開業医が引退していくなかで、在宅医療を含めた外来医療提供体制を地域で確保することの難しさを指摘。「医師の数合わせだけではなく、医療DXを含めたさまざまな取組みが必要になる」と述べた。
 また、入院と外来を区別しない医師の配置状況の指標である医師偏在指標と外来医師偏在指標の両者をみる重要性も指摘した。例えば、医療資源が限られているので、医療提供体制を効率化するために、紹介受診重点医療機関を位置づける場合でも、病院が地域でどれだけ外来医療を担っているかを見極めるかが大事であると強調した。

かかりつけ医機能の制度整備も議論
 骨太方針2022にも盛り込まれた「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」と外来医療計画の関係についての質問も相次いだ。厚労省は、外来医療計画の法定事項に、「外来医療に係る病院及び診療所の機能の分化及び連携の推進」などがあり、紹介受診重点医療機関の位置づけとかかりつけ医機能を担う医療機関は「車の両輪」の関係にあることから、議論の対象になるとの考えを示した。
 ただし、第8次医療計画の策定に向けては、今年度中に基本方針などの改正案をまとめる必要がある。「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」は、全世代型社会保障構築会議でも議論される見込みであり、政府の改革工程表では2022・2023年度が検討時期となっていることを含め、同検討会での議論は一定範囲に限られるとした。

高額医療機器の共同利用のあり方
 「医療機器の効率的な活用」については、CT・MRIなどの高額医療機器の効果的な共同利用のあり方が論点となった。医療機器の稼働状況の地域差が大きく、台数が多い地域では使用頻度が少ないといった状況があるためだ。効率的な医療提供体制を構築する上で、医療機器の活用状況を都道府県が把握し、取組みを強化することが課題とされた。
 しかし、「新型コロナの経験では、検査が十分にできないなかで、特にCTが多くの医療機関にあることが大変役立った。しかも、CTなどは昔と比べ価格が下がっている」(加納繁照委員・日本医療法人協会会長)など、CT・MRIの共同利用を積極的に促す意義が薄れているとの意見が相次いだ。織田委員も、「CTは今や身近な医療機器だ。被ばくに対する安全性も高まっている」と指摘した。

 

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    会合には、四病協から安藤高朗全日. 病副会長と長瀬輝誼日精協副会長 ... 明文化されずに実行されている県も. 含めてである。 ... 機関は医師不足や地域偏在・診療科偏.

  • [2] 2018.10.1 No.926

    2018/10/01 ... ICU)と南多摩病院・朽木隊(高規格 ... 改正医療法等が成立し、医師偏在対. 策など医療政策において都道府県 ... 器による医療被ばく線量の管理――な.

  • [3] ニュース 1 1 - 全日本病院協会

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