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ホーム全日病ニュース第799回/2013年4月15日号特定機能病院、要件厳格化の上で...

特定機能病院、要件厳格化の上で承認更新制の導入へ

特定機能病院、要件厳格化の上で承認更新制の導入へ

【特定機能病院・地域医療支援病院のあり方に関する検討会】
地域医療支援病院には(逆)紹介率基準の強化、救急受入シェアの評価等を提案

 

3月27日に開かれた「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」に、事務局(厚労省医政局総務課)は、両類型の病院に関する実態調査の集計結果概要を報告。併せて、両類型病院の承認要件見直しに向けた論点案を示した。
 特定機能病院の論点としては、
①各都道府県に1ヵ所配置を原則とした上で、県によっては複数配置を認める
②総合的対応能力の視点から内科、外科、精神科等特定の診療科について標榜および一定数の専門医配置を義務づける
③「総合診療部門」など診療科間の調整を状況に応じて行なう部門を設置する
④紹介外来制を原則とした上で紹介率・逆紹介率の基準値を適宜高めていく
⑤更新制を導入、更新時に現地視察などの実態確認を行なうとともに医療計画も踏まえて更新期間を考慮するなどをあげた。
 地域医療支援病院に関する論点には、
①各2次医療圏に1箇所配置を原則とした上で、2次圏によっては複数配置を認める
②紹介率算定式から救急患者の数を外すなど紹介率・逆紹介率両基準の充実を図る
③退院調整部門の設置を義務化とともに地域連携パスの策定・普及を努力義務とする
④開放病床や高額診断機器の利用回数を評価する
⑤地域における救急搬送受入件数の割合を評価する
⑥地域の医療機関や医療従事者に対する研修等の開催回数を評価する
⑦自院の役割や連携状況の情報交換や地域住民への情報発信を努力義務とする
⑧承認後のフォローアップとして都道府県によるヒアリングや現地視察を行なう
⑨地方自治体を含む外部有識者の委員会を定期的に開催し、外部評価を得るよう努める
などを列挙したものの、在宅医療支援の機能については「改めて検討すべき」とした。
 また、論点案の前提として、「紹介機能や重症救急患者の受入機能の強化をより重視すべきではないか。その他の機能については客観的に評価できる指標を設定してはどうか」という問題意識を表明した。
 特定機能病院に関する要件が厳格化される方向性にあることに、都道府県の構成員が要件緩和の必要性を求めたほか、大学病院の構成員からは「特定機能病院がゼロの県も出るのではないか」との懸念が示された。
 高度医療の提供・研究開発・研修という三位一体機能の底上げを目指すべきとする事務局は、ゼロとなる県が出る可能性を否定せず、「その場合は経過措置を設ける」という認識を披露した。
 地域医療支援病院に関する議論で、西澤構成員(全日病会長)は、「地域の医療従事者に対する研修実施評価の精緻化を図ることに賛成だ。ただし、開催回数だけでは意味がなく、その内容と参加医療機関の数などの実体が重要だ」と注文をつけた。
 また、地域医療支援病院と在宅医療との関係については、「在宅医療に関しては在宅療養支援病院・診療所が担い手となる。そのことを含めて、あらためて検討する必要があるだろう」と述べ、別途検討とした事務局の考えを支持した。
 地域の医療従事者に対する研修に関しては、高齢者の救急が増加していることから高齢者施設の従事者も対象に加えるべきとの意見も出た。
 一方、一部の構成員からは、地域医療支援病院というかたちで多面的な機能が担わされ、しかも地域によっては偏在している現状に、「機能の分化・特化をもって対応すべし」との論が示され、「各機能は診療報酬と併せると屋上屋を重ねるかたちで評価されている。地域医療支援病院というのは本当に必要なのか」との極論を唱える向きもあった。
 これに対して事務局は、「各要件はandを前提している。しかし、orで考えるというご意見であれば、今後の議論として整理していくことはできる」と、慎重な言い回しながら“機能分解論”を否定した。
 また、事務局は、承認更新制度を導入する特定機能病院に対して、「地域医療支援病院はそこまで考えていない。したがって、経過措置の必要はない」という認識を示した。
 特定機能病院および地域医療支援病院の要件は、現在、医療法とともに医療法施行令、医療法施行規則、厚生労働省告示、局長通知によって具体的に定められている。
 同日の検討会で、事務局は「要件の見直しは医療法改正を伴わないで考えている」ことを明らかにした。
 その上で、吉岡総務課長は「次回に基準案など要件見直しの具体案を示したい。できるだけ早いとりまとめとしたい」と述べ、検討会に議論の集約を求めた。

 

地域医療支援病院 一律ではない都道府県の整備方針

 事務局は、また、昨年11月から今年1月にかけて実施した特定機能病院と地域医療支援病院に関する実態調査結果の概要を、検討会に報告した。そのうち、地域医療支援病院に関する調査は、地域医療支援病院の整備に関する考え方を都道府県にたずねている。
 それによると、地域医療支援病院を「2次医療圏毎に1ヵ所整備する」方針をもっている都道府県は16に過ぎず、「(そうした指針に)こだわらず整備したい」としているのが28、「整備目標は定めていない」というのが3 であった。
 また、地域医療支援病院の承認については、40の県が「承認要件を満たせば原則承認」とする一方で、他の7県は承認に地域のニーズを反映させるなど、それぞれ独自の考え方をもっている。
 こうした実情を反映し、「地域医療支援病院制度に関する意見・提言」では、「地域医療支援病院の評価に係る客観的かつ具体的な基準を設定してほしい」「救急医療の実施や在宅医療への支援などは具体的な貢献度を評価する指標を設定するべき」「5疾病5事業という疾病分野ごとの連携を進める方針と疾病を問わず連携拠点となる地域医療支援病院制度とは矛盾しないか。両者の関係を整理し示していただきたい」など、よりクリアカットかつ他制度と整合性のとれた機能と要件を求める声が目立った。