全日病ニュース

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医療法人会計基準策定へ検討作業を開始

医療法人会計基準策定へ検討作業を開始

【四病協】
医業経営・税制員会に会計基準策定小委を付設

 

 四病院団体協議会は医療法人会計基準の策定に向けた検討作業を開始、医業経営・税制員会(委員長・伊藤伸一医法協副会長)に付設された会計基準策定小委員会(委員長・五十嵐邦彦公認会計士)は、4月2日に第1回会合を開いた。
 四病協は2002年6月にまとめた「病院会計準則等の見直しに関して(中間報告)」において、医療法人会計基準を策定する必要性を提起するとともに、その考え方(イメージ案)を提示している。病院会計準則は四病協報告を受けて設置された厚労省検討会の手で見直し案がまとめられ、04年8月に全面改正された。しかし、厚労省による医療法人会計基準の策定は見送られた。
 その後、第5次医療法改正の柱として医療法人制度改革が提起され、医療法人会計に透明性が求められるだけでなく公益性を旨とする社会医療法人が創設される状況を踏まえ、四病協は05年12月に医療法人会計基準の検討開始を決定。医療法人会計基準検討委員会を設置し、06年9月に「医療法人会計基準検討報告書」をまとめた。
 同報告書の主旨は、医療法人の事業収益規模に応じて特例を設けた上で、退職給付会計やリース会計などを盛り込んだ会計基準を策定し、各医療法人の任意で採用してもらうというもの。
 しかし、四病協による医療法人会計基準案に対しては、当時、退職給付会計の導入に難色を示すなど慎重な意見もあったため、公募債の発行が認められる社会医療法人に会計基準を導入するという厚労省方針で当面対応することで関係者の意見が一致、医療法人会計基準案は公表されることなく終わった。
 医療法人制度改革の施行から6年が経過した昨年、医業経営・税制員会は、情報開示にさらされる医療法人について、会計情報の面からも他産業・他法人と比較できる物差しが不可欠との認識から、06年9月の医療法人会計基準案にその後の環境変化に応じた修正を加え、再度、策定を目指すべきであると提起。昨年6月の総合部会は医療法人会計基準策定作業の開始を決めた。
 その後、かつて医療法人会計基準案をまとめた専門家と協議を重ねた結果、今年1月の委員会で会計基準策定小委員会の設置を決め、06年9月の医療法人会計基準案をまとめたのと同じ会計士5人をメンバーに、4月2日に発足したもの。
 当初案以降、医療法人会計基準をめぐる環境変化として、医療法、税法、企業会計基準、中小企業会計、新社会福祉法人会計基準等の改正があるほか、医療法人においても、社会医療法人の増加、持分なし法人の漸増など、新たな事象が出現している。
 小委員会設置に先立ち、かつての医療法人会計基準案に手を加えるための論点として示した、①税制が異なる社会医療法人の取り扱い、②法人類型の区分、③小規模特例と中小企業会計の関係、④持分のない法人における剰余金等「純資産の部」の考え方、⑤第5 次医療法改正の影響で考慮すべき点などの検討課題案に、小委の構成員からは、多岐にわたる議論課題が提起された。
 4月2日の初会合は前出論点などについて自由討議を行なった結果、当初見込んだ技術的な見直しではなく、新たに策定するほどの本格的な議論が必要ということで認識が一致。13年度内のとりまとめを見込んでいたが、時間にしばられることなくじっくり検討を行なうことで合意した。
 四病協における医療法人会計基準の検討に対して、厚労省のとかしき政務官は、3月15日と22日の衆議院厚生労働委員会で、「医療法人会計基準は成案を得られていないが、現在、四病院団体協議会が検討を再開しており、厚生労働省としては、その取り組みを注視している」といった主旨の答弁を行なっている。
 これは、日本維新の会の足立康史衆議院議員が「保険料があり、多額の国費が投資されている医療について、医療法人会計基準すらまだないのは異常である。閣議決定されている医療制度改革大綱にも医療法人の必要な会計の在り方を検討するとしてある」として質したことに、回答したもの。
 会計基準策定小委員会は6月に次回会合をもつが、以降、月1回のペースで開催される。