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70歳未満 所得770万円以上の限度額を引き上げる方向を確認

70歳未満
所得770万円以上の限度額を引き上げる方向を確認

【医療保険部会】
高額療養費の見直しで具体案3案を検討。予算編成にらみ結論を厚労省に委ねる

 10月7日の社会保障審議会医療保険部会は高額療養費の見直しについて、厚労省が示した複数の案にもとづいて議論した結果、70歳未満に関しては所得区分770万円以上の自己負担限度額を引き上げる方向でほぼ一致。年末の予算編成を踏まえ、最終案の絞り込みを厚労省に委ねることでおおむね合意した。

 

 医療保険部会は、9月9日の会合で高額療養費を見直す方向で基本的に合意、財政影響を含む所得区分と自己負担限度額の具体案を踏まえ、さらに検討することを確認していた。この日、事務局(厚労省保険局総務課)は3通りの案を提示した。
 それによると、70歳未満に関しては、(1)所得を9区分に細分化(案1)、(2)6区分に細分化(案2)、(3)5区分に細分化(案3)した上で、3案ともに、「370~570万円」の区分は現行どおり据え置くが、770万円以上の区分は限度額を大きく引き上げ(案3は、そのうちの「370~770万円」の所得区分は限度額を据え置くとしている)、反対に、370万未満は3案とも限度額を大きく引き下げる(低所得者は据え置き)というもの。
 現行方式の所得は3区分しかないが、見直し案は所得区分を細かく分けることによって、案の1と2は、現行の「上位所得者」(770万円以上)だけでなく「一般所得者」に属する570~770万円の世帯も限度額を引き上げるなど、財源中立を貫くために、負担増となる対象を拡げている。
 一方、70~74歳(3割・2割負担)については、案の1と2は、現行の「現役並み所得」(370万円以上)に「570万以上」という区分を新たに設けて限度額を大幅に引き上げ、これに準じる「370~570万円」は現行のまま据え置くとしている。案3は所得区分を含めて現行どおりで臨むという考え方だ。
 70~74歳で1割負担が認められる者と75歳以上の限度額はともに据え置く方針だ。
 財政影響の面から各案をみると、給付費が増える額は、案3が約850億円(2015年度推計)ともっとも大きく、次いで案1が約320億円、もっとも影響が小さいのは案2の約70億円となる。
 すなわち、案3は利用者負担に与える影響をもっとも小さく見積もっており、案2がもっとも財政中立に近く、その分、一定以上所得層の負担を大きく見積もっていることになる。事務局は「できれば案2で進めたい」と部会に要請した。
 とは言え、保険料に与える影響は、もっとも財政中立に忠実な案2の場合でも、協会けんぽが+140億円、健保組合が-190億円、共済組合-60億円、市町村国保+170億円と格差が生じ、所得水準が相対的に低い加入者の多い協会けんぽと国保の負担が断然大きくなると推定されている。
 部会の議論で協会けんぽと国保の委員は猛反発し、「どの案も受け入れがたい」(小林委員=全国健康保険協会理事長)と強く反対した。健保連と連合の委員も、「後期高齢者医療の見直しを先行するべきではないか」「各案における公費負担の根拠がよく分からない。
 3案とも十分とはいえない」など、とりまとめに慎重な見解を表わした。
 鈴木委員(日医常任理事)は案3を支持したが、部会委員の多くは案1もしくは案2が妥当とした。
 細部にわたる点で疑問や保険者の負担等について調整を求める声もあったが、最終的な数字は財源の関係で決めざるを得ないことから、部会として、案1もしくは案2をベースに年末の予算編成を見据えながら最終案を決めるべきとし、事務局に判断を委ねた。
 高額療養費見直しの時期について、事務局は「15年1月からの実施を目指す」としている。