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ホーム全日病ニュース第810回/2013年10月15日号高齢者救急の主役は2次救急。...

高齢者救急の主役は2次救急。高齢者の急変時トリアージも

高齢者救急の主役は2次救急。高齢者の急変時トリアージも

2次救急の役割と機能が「中間取りまとめ案」に明示。これに沿った改定要望に取り組む

常任理事 救急・防災委員会委員長 加納繁照 

 

 「救急医療体制等のあり方に関する検討会」は今年2月6日に始まり、私が構成員の1人に選ばれた。今回、画期的なのは、これまで厚生労働省の救急を検討する検討会等にオブザーバーで参加することはあったが、正式なメンバーとして、2次救急の現場の立場で入れて頂いたのは初めてのことだということである。
 これまでの救急に関する検討会等で滔々とされてきた議論の多くは3次救急の入口・出口の問題ばかりであった。その結果、診療報酬も、基本的には3次救急の役割しか評価されてこなかっただけでなく、2次救急病院の現状を理解してもらえる機会も、発言の場もなかったのが実態である。
 わずかながらも変化が出たのは、前々回の診療報酬改定の時で、この時の保険局医療課長、現健康局の佐藤敏信健康局長より「救急医療の今後のあり方に関する検討会」に、一度だけ参考人として呼んでいただいたことがある。
 この頃より要望し始めた、救急搬送患者を応受した時に、救急搬送1件につき2,000点の「救急搬送患者受入加算」を創設するという要望に対しても理解を示して頂けた。
 しかし、この時は入院中心の改定となったため、この加算は日の目を見ず、その代わり、救急医療管理加算が600点から200点アップの800点となった。
 その後、現防衛庁内部部局衛生監の鈴木康裕前医療課長が担当した前回改定で「救急搬送患者受入加算」が新設された。しかし、評価の対象は終日ではなく、夜間休日に限定された「夜間休日救急搬送医学管理料」というもので、点数も、要望の10分の1の200点というものにとどまった。
 点数と条件はともかく、初めての、2次救急医療機関の為だけの診療報酬評価ではあった。近々の2回の診療報酬改定で、放置されてきた2次救急病院に少しは報酬がつく様になってきたが、その一方で、こうした流れに逆行する、憂慮すべき情勢が生じている。
 それは2次救急とは全く関係のない、2次救急の現場を一切理解していないある病院団体の動きによるもので、我々が求めてきた「救急搬送患者受入加算」に“地域連携”という概念を挿入し、「救急搬送患者地域連携受入加算」という項目が新設された。
 佐藤課長時代にいきなり、主に3次救急から慢性期病院への転送患者受入を評価する項目が1,000点で創設され、その後適応が拡大し、今では2,000点と倍額になった。
 同時に在宅患者緊急入院加算という加算も作られた。2次救急が直接、救急搬送患者を受け入れるより、転送される患者さんを受け入れる点数が一桁高いという話であり、これが、その後の、2次救急以外の慢性期病院で急変時の対応が出来るという誤った考えを植え付ける要因となった。
 その結果、現在公然と議論されている亜急性期、回復期等でも2次救急ができるという誤解を生むにいたり、保険者側(1号側)に安価な制度として評価されてしまうようになっている。
 これらを踏まえて、「救急医療体制等のあり方に関する検討会」で議論をしっかり進めた結果、中間取りまとめ案(9月18日)に、次の表現が盛り込まれた(第3-2。傍点は筆者)。
 『(2)二次救急医療機関の充実強化について二次救急医療機関が、医療計画で求められている「地域で発生する救急患者への初期診療を行い、必要に応じて入院治療を行う」といった機能を果たすため、都道府県や二次救急医療機関は、地域の高齢化や疾病構造の変化等を把握し、より適切な体制の構築を行わなければならない。増加する認知症を含めた高齢者の救急搬送については、主に二次救急医療機関が担わざるを得ないことから、二次救急医療機関の対応能力の底上げが必要であると共に、受入れの為の地域でのコンセンサス作りが必要である。特に、重症度が中等症である症例が増加しており、複数の医療機関に受入れを断られる事案も後を絶たないため、二次救急医療機関がその役割を的確に果たすことのできるような支援措置が求められる。』これは、厚労省の救急検討会等の報告書が、2次救急医療機関の機能と役割に言及かつ評価した初めての文章である。
 これから激増する高齢者救急受入の主役は2次救急であり、高齢者の急変時のトリアージは必ずや2次救急が行なわなければならない。
 こうした考えから、四病院団体協議会の「2次救急に関する検討委員会」は、次の改定に向けて、①夜間休日救急搬送医学管理料200点→2,000点と終日への適応拡大、②救急医療管理加算1日につき800点→1,600点、③救急時の認知症患者の受け入れ加算、新規2,000点、という要望を行っている。
 わが国の救急を支えている2次救急医療機関の衰退を食い止め、その底上げを図るためにも、ぜひ、実現させたいと願っている。