全日病ニュース

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新基金制度「全日病各支部は案を申請、新基金に参加すべきである」

新基金制度
「全日病各支部は案を申請、新基金に参加すべきである」

西澤会長、全支部に積極的な対応を求める。病床機能「協議の場」への参画も

 

 3月29日に開催された全日病の第2回支部長・副支部長会で、西澤会長は「病床機能報告制度と新たな財政支援制度」について報告、報告制度と新たな基金制度に、各支部と会員病院はいかに対応すべきか、私見を交えて解説した(4月1日号既報)。以下に、西澤会長による報告(要旨)を紹介する。

 

西澤寛俊会長「病床機能報告制度と新たな財政支援制度について」第2回支部長・副支部長会(3月29日)における講演の要旨

 現在、国会で医療介護総合確保法案が審議されている。その骨子は、(1)新たな基金の創設、(2)病床機能報告制度の創設と地域医療構想(地域医療ビジョン)の策定、(3)地域包括ケアシステム構築など介護保険の改正、(4)特定行為に係る看護師研修制度および医療事故調査制度他、である。
 まず、病床機能報告制度と地域医療構想であるが、これは、各医療機関が自主的に、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つから病棟の主な機能を選択して報告、その結果を中心に都道府県が地域医療ビジョンを策定するという制度で、2014年度から始まる。
 この地域医療ビジョンには、2025年の、機能ごとの医療需要と病床必要量が示される。この必要量との乖離を調整するために、地域ごとに、医療関係者を中心とする「協議の場」が設けられる。
 この仕組みに関しては、増床・開設や病床機能の転換に際して、それが必要量に照らして過剰な機能であるとき、都道府県知事が止めさせるための措置をとることができる。しかし、現在過剰であるからといって他の機能に転換せよということはない。そのところはしっかりと認識していただきたい。
 病床機能報告制度は、現在、「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」で、各医療機関が報告する際にレセプトを使うことが確認されている。その場合、医療の具体的内容は基本的に病棟単位で報告するわけだが、レセプトに病棟コードを追加する方法が考えられている。
 もっとも、システムの改修は改定時でないと難しいので、最初の2014年度は病棟単位の報告は見送られ、病院単位ということで、7月審査分のみを報告することで合意している。
 報告に際しては、現状の機能だけでなく、各医療機関の判断で「今後の方向」も明らかにすることになる。
 具体的には、法が定める基準日から省令で定める期間が経過した日の病床機能の予測であるが、では、何年先を予測するかという点は決まってない。検討会では、2025年度時点を予測するという案や6年先を予測する案が出ているが、もう少し近い将来がよいという意見もあり、まだ結論が出ていない。この制度で注目すべきは、先ほども触れた「協議の場」の設置である。これは、仮に「今後の方向」から導かれる将来量と必要量との間に乖離がある場合は、関係者が集まって協議するというものだ。
 したがって、この「協議の場」には、ぜひ、病院団体も加わっていかなければならない。
 この協議にもかかわらず、すでに過剰となっている機能に転換する医療機関がある場合は、知事がそれをとめる措置を講じることができる。

 

事業希望は4月ヒアリングの前に県に表明してほしい

 次に、新たな財政支援制度であるが、2014年度より各都道府県に新基金を設けるということで904億円が確保された。新基金の対象は、①病床の機能分化・連携、②在宅医療の推進・介護サービスの充実、③医療従事者等の確保・養成にそれぞれ必要な事業である。
 交付対象となる「事業者等」とは、医師会あるいは病院団体そして各医療機関などであり、そこには当然、全日病の各都道府県支部も入っている。そうした「事業者等」から、事業の申請がなされ、それを各都道府県が事業計画にまとめて国から交付を受け、各事業者に交付するという仕組みである。
 基金交付に至るスケジュールをみると、4月中旬に、国による都道府県の第1回ヒアリングが、5~6月に2回目のヒアリングが行なわれ、そこで大枠が決まる。7月には国が協議会を設置して方針等々を決め、都道府県は9月に事業計画を策定、10月に内示、交付決定は11月となる。
 都道府県の事業計画について、厚生労働省は、交付対象となる「事業者等」なかでも関係団体である医師会や病院団体の意見や要望を踏まえて策定するよう指導。各都道府県に対するヒアリングを、この4月から5月にかけて2回行ない、事業計画に向けた検討状況、とくに、関係団体との話し合いの状況をチェックするとしている。
 そこで、各支部には、新基金の事業に積極的に手上げしていただきたいと思っている。そのためには、早期に、都道府県の担当部局と協議する必要がある。
 新たな基金制度については、3月24日付で各支部長宛に、基金を活用した事業への対応を求めた文章をお送りしたが、病院団体の立場から必要と考える事業案を都道府県に伝えなければ、基金は民間病院に回ってこない。したがって、それにしっかり取り組んでいただきたいというのが、各支部長に出した文書の主旨である。
 スケジュールを見ると、6月までに事業案を出せばいいようにみえるが、できれば、国との第1回ヒアリングが実施される4月中旬までに出していただきたい。というのも、都道府県の事業プラン作成が先行して大枠が決まってしまうと、民間病院の入り込む余地がなくなるからだ。新基金の趣旨に「官民に公平に分配すること」とあることを理解していただきたい。
 したがって、各支部は、都道府県担当者や関係団体等と基金の事業に関する意見交換を早期に実施する必要がある。各支部とも積極的に取り組んでいただくよう要請する次第である。
 なぜこれを強調するかというと、我々が手をこまねいていると、地域医療再生基金のように都道府県の判断で使われてしまいかねないからである。

 

地域の提供体制整備に必要な事業は多種多様だ

 では、どういう事業が対象となるか。厚労省は、3月20日に行なわれた都道府県担当者会議で、基金を活用した事業案を例示した。
 それによると、例えば、病床の機能分化・連携として、「急性期から回復期、在宅に至るまで一連のサービスにおいて総合的に確保するため、病床の機能分化、連携を推進するための施設・設備の整備」というのがある。
 ただし、「平成26年度は回復期病床等への転換が現状でも必要なもののみが対象」とされている。これはどういうことか。
 例えば、地域包括ケア病棟に行きたいが建物の改修が必要というときに、その申請が可能ということである。これは「自院にだけ」ということではなく、「同じ必要性のある医療機関に交付する」ということであり、この申請によって、同じような病院すべてに交付されることになる。一つの可能性ではあるが、少なくとも、こういう使い方があるという例である。
 事業例には、「在宅医療の人材育成基盤を整備するための研修」ということで、「在宅医療導入研修の実施」というのもある。これは全日病の支部でもできると思うが、地域の医療機関が合同で実施することも考えられる。こういう事業プランも考えていただきたい。
 あるいは、「地域医療支援センターの運営(無料職業紹介事業、定年退職後の医師の活用事業等を含む)」というのがある。これを、病院団体の支部単独で、あるいは県医師会と共同して提案することも可能ではないか。
 また、「各医療機関の勤務環境改善や再就業促進の取り組みの支援」というのもあるが、具体的には「計画的に勤務環境の改善を行う医療機関に対して医療クラーク・看護補助者の配置などの医療従事者の働き方・休み方の改善に資する取組、専門アドバイザーによる助言指導」等とある。医師事務作業補助者というのは診療報酬では一般病床しか評価されていないが、例えば、基金を使って療養病床や精神科病床でも配置したいと申請することも可能ではないか。
 医療連携体制の支援ということで、入居者が急変したときに、救急車に頼らずに運搬する送迎車等々を共同で配備するという提案も考えられる。こうした色々なアイデアを読み取って、支部あるいは各県の病院団体を通して、場合によっては県医師会と合同で、ぜひ、提案していただければと思っている。
 4月に1回目が実施される国のヒアリングまでに、できるだけ多くの事業案を都道府県に出していただきたい。もちろんその後の、2回目のヒアリングでも可能なので、その後であっても出していただきたいと考えている。